ジュビロ磐田が運命の“ホーム3連戦”へ。J1残留争いの各クラブ最終局面を読む
【サッカージャーナリスト・河治良幸】
J1リーグも最終盤となり、残留争いもチームが絞られてきている。基本的には勝ち点40で15位のアルビレックス新潟、勝ち点39の柏レイソル、勝ち点35の磐田の3チームの争い。勝ち点33で19位の札幌は3連勝で最大勝ち点42に伸ばして、あとは新潟、柏、磐田のうち2つがそれを下回ってくれることを祈るしかない。
18位のジュビロ磐田は4試合を残すため、4連勝で47まで伸ばすことができる。現在44で11位の川崎フロンターレ、12位の湘南ベルマーレ、13位の京都サンガが残留を脅かされるかどうかは磐田のラスト4の結果にかかっている。
川崎、指揮官の花道飾れるか
川崎は後半45分を戦う浦和戦を含む4試合を残しており、しかも得失点差で磐田からプラス23もあることから、かなり残留に近いと言える。ACLエリートの試合を挟みながら、アウエーの試合が3つ続くが、攻撃の中心を担うMF脇坂泰斗が離脱した状況で、怪我から復帰した静岡学園出身のMF大島僚太や藤枝市出身のFW遠野大弥の奮起に期待したい。鬼木達監督が川崎での8年間の指揮にピリオドを打つことが決まっており、なんとか軌道に乗せて花道を飾りたいだろう。
4連勝で一気に勝ち点を伸ばした湘南は次節が19位の北海道コンサドーレ札幌とのホームゲームとなる。もし湘南が勝利すれば残留が確定的となり、逆に現在の勝ち点が33の札幌はほぼ降格が決まる。湘南は札幌戦の後、現在15位の横浜F・マリノスとの“神奈川ダービー”を経て、最終節にヴィッセル神戸とのアウエーが待つので、残留を確実なものとするためには札幌戦で勝ち点3を積み上げたい。
京都は上位陣と連戦
京都は前節、アウエーでサンフレッチェ広島に競り勝ち、湘南と同じく勝ち点を44に乗せた。しかも、台風で延期されたホームの鹿島アントラーズ戦を含む4試合を残しているのはアドバンテージだ。次節は同じ勝ち点44の川崎が相手で、ここで勝利した方が残留に大きく近づく。
ただ、京都の残り3試合は4位の鹿島アントラーズ、3位のFC町田ゼルビア、6位の東京ヴェルディと上位陣が続くので、もし川崎に敗れてラスト3に向かうとなると、プレッシャーがかかってくるかもしれない。
勝ち点43で並ぶ14位の浦和と15位のマリノスはまだ予断を許さない。10月30日に日産スタジアムで直接対決を行ったが、0−0のドローで、勝ち点1を分け合う結果だった。
浦和は次節が2位のサンフレッチェ広島とのホームゲームで、代表ウイークを挟んで、延期分の川崎戦と続く。シーズン中にマチェイ・スコルジャ監督が就任して、チームはなかなか波に乗れなかったが、ここ2試合で勝ち点4を獲得しており、残留まであと一歩というところまで来ている。しかし、ホームの広島戦で勝ち点を取れず、さらに川崎戦で躓くようだと、アウエーのアビスパ福岡戦、そして最終節のアルビレックス新潟戦が難しくなってくる。
磐田の直接的なライバルは新潟と柏
磐田にとって残留争いの直接的なライバルは新潟と柏だろう。勝ち点40で16位の新潟はルヴァン杯のファイナルで名古屋グランパスと壮絶な戦いの末に、PK戦で準優勝に終わった。その戦いぶりは多くのサッカーファンに賞賛されたが、リーグ戦では6試合続けて勝利がなく、その間に5試合で複数失点している。残るは3試合だが、いきなり17位の柏との直接対決があり、この結果が磐田にも大きく影響しそうだ。
新潟は5位のガンバとホームゲームがあり、最後に過去一度も勝てていない“鬼門”埼玉スタジアムでの浦和戦が待つ。柏に勝利して勝ち点を43に伸ばせば残留に大きく前進するが、敗れてしまうと、残り2試合に大きなプレッシャーがかかってくる。
勝ち点39の柏もホーム神戸戦とアウエー札幌戦という、やりにくそうなカードを残すだけとなるので、新潟戦で勝ち点3をもぎ取れるかが命運を左右するかもしれない。井原正巳監督率いる柏は静岡学園OBの日本代表DF関根大輝や清水ユース出身の犬飼智也、立田悠悟を擁し、静岡に浅からぬ縁を持つが、磐田とのサバイバルは避けられない状況だ。
勝ち点3を奪うためのアクション
磐田は前節のアウエー神戸戦に敗れたこともあり、ヤマハの3連戦でしっかりと勝ち点を積み重ねて、最終節の鳥栖戦に前向きな形で臨みたい。横内昭展監督は5−4−1の守備をベースに、攻撃で3−4−2−1になるシステムで終盤戦に挑んでいる。球際の勝負や切り替えで磐田を上回る神戸とは相性が良くなかったが、ガンバ、マリノス、FC東京の3試合は勝負には持っていけるはず。
ホーム3連勝が理想ではあるが、2勝すれば勝ち点41か42に積み上げて、ラストの鳥栖に乗り込むことができる。ただ、最初のガンバから勝ち点が奪えないと、アウエーの鳥栖戦を含む残り3試合に向けて、メンタル的にも追い込まれてしまう。現在は守備から入って相手の隙を狙う戦い方ではあるが、勝ち点3を奪うためのアクションは起こしていく必要がある。
ガンバ戦のポイント
ガンバ戦のキーマンは一巡目の対戦で得点を記録しているジャーメイン良だ。中谷進之介を中心に、統率力の高いガンバの守備を持ち前のスピードで切り裂けるか。
守備面ではキャプテンにしてエースの宇佐美貴史に仕事をさせないことが第一のタスクになる。前回対戦でも脅威だったウェルトンが10月18日の川崎戦で負傷交代しており、前線の迫力は多少弱まっている。その分、二列目の中央に構える山田康太を起点としたコンビネーションが危険で、前節の名古屋戦で2得点したFW坂本一彩はスタメンでも途中からの投入でも要注意だ。
日替わりヒーローが出てくるか
とにかく磐田としては“一戦必勝”で、基本カップ戦のトーナメントのように勝っていくべきだが、状況に応じて冷静な判断も必要になってくる。終盤で同点だった場合に、勝ち点1を確保して残り3試合にかけるか、あくまで3にこだわって攻めにいくか。どう選択するにしても、チームがしっかり1つになることが重要だ。
マリノス戦は8月31日に予定されていた試合が、台風の影響で延期されたカードで、本来ホーム2連戦だった日程が3連戦になった。相手はすでに年間60試合近くをこなしており、コンディションとの戦いに苦しめられている向きはある。ただ、磐田戦は1ヶ月半ぶりに1週間空いての試合となるため、良い状態で来ると想定される。リーグ戦は6試合勝っていないが、難敵であることに変わりはない。
ホーム3連戦の最後となるFC東京は3チームの中では最もつかみどころのない相手だ。前回はアウェーで1−1と引き分けており、内容的にも互角に戦えていた。その意味ではホームの試合で、従来の4バックを選択しても良いかもしれない。ここはロジカルな部分だけでなく、チームの流れや現場の空気感も大事になるので、そこのチョイスは横内監督を信頼するしかない。
このホーム3連戦で期待したいのはポジティブな変化だ。神戸戦は0−2で敗れてしまったが、川﨑一輝がリーグ戦デビューを果たし、ロングスローなどで存在感を出した。また左サイドの主力に定着している高畑奎汰も本人が認めるように、そろそろ結果がほしい。ここまで17得点のジャーメインが牽引者ではあるが、ある意味“日替わりヒーロー”の出現が逆転残留の鍵と言えるかもしれない。