マニー・パッキャオが現役復帰へ…危険伴う唐突な世界戦に批判も
7月19日、ウェルター級王者バリオスに挑戦
プロボクシングで史上最多の6階級制覇を果たしたマニー・パッキャオ(46=フィリピン)が現役復帰を決め、大きな話題になっている。
自身の公式Xで、WBCウェルター級王者マリオ・バリオス(30=アメリカ)と7月19日にアメリカ・ラスベガスのMGMグランドで対戦することを明かし、「Let’s make history!(歴史に名を刻もう)」と投稿している。
パッキャオは1998年に奪ったフライ級王座を皮切りに、スーパーバンタム級、スーパーフェザー級、ライト級、ウェルター級、スーパーウェルター級と主要4団体で6階級制覇。マイナー団体等も含めると8階級制覇とも言われるフィリピンのレジェンドだ。
42歳だった2021年8月、ヨルデニス・ウガス(キューバ)に判定負けして引退。その後、フィリピンの大統領選挙に出馬したが落選し、エキシビションのリングなどに上がっていた。
2024年7月には、さいたまスーパーアリーナで開催された超RIZIN.3で、キックボクサーの安保瑠輝也とボクシングルールで3ラウンドのエキシビションマッチで対戦。さすがに往年の突進力やパンチのキレはなく、攻め込まれる場面も少なくなかった。
精彩を欠く内容に、2024年中にも対戦と噂されていたバリオス戦は暗礁に乗り上げたかと思われたが、ついに実現。62勝(39KO)8敗2分けのパッキャオは現在、WBCウェルター級5位にランクされている。
ホプキンスやフォアマンは戦い続けて40代後半で世界王者
ただ、パッキャオの復帰には批判の声も多い。
世界最高峰の実績を持つとはいえ、引退して4年も経つボクサーが突然世界戦のリングに上がる。しかも、再起戦すら行わっていないにもかかわらず不可解な世界ランク入り。ボクシングはこれまでも「興行優先」との批判を浴びてきたが、そもそも衰えたパッキャオにその価値があるとも思えない。
49歳で世界ライトヘビー級王座を獲得したバーナード・ホプキンス(アメリカ)は20代から戦い続けていたし、45歳で世界ヘビー級王座を奪取したジョージ・フォアマン(アメリカ)は38歳で10年ぶりに現役復帰してから地道に試合をこなして強さを取り戻した。
ボクシングは危険なスポーツだ。世界戦が15回戦から12回戦に短縮され、昔に比べるとレフェリーのストップも格段に早くなったが、それでも死亡事故は起こっている。安易な現役復帰で悲劇が繰り返されない保証はなく、脳や体へのダメージ蓄積も懸念される。
バリオスは2019年9月にWBAスーパーライト級王座を奪い、2023年9月にWBCウェルター級暫定王座を獲って2階級制覇(その後、正規王者に昇格)。スピードとパワーを兼ね備えており、29勝(18KO)2敗1分けの戦績を持つ。決して“嚙ませ犬”ではない。
日本ウェルター級のホープ・佐々木尽(八王子中屋)は6月19日に東京・大田区総合体育館でWBO同級王者ブライアン・ノーマン・ジュニア(アメリカ)への挑戦が決まっている。
もし、佐々木とパッキャオがともに勝てば、アジア人同士の世界ウェルター級タイトルマッチが実現する可能性も出てくるが果たしてどうなるか。にわかにウェルター級戦線の注目度が高まってきた。
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記事:SPAIA編集部