ロッテ藤原恭大がノーステップ打法で覚醒か、データが裏付ける「成長の証」
右膝蓋骨骨折で開幕二軍も遅れ取り戻す大暴れ
ロッテの藤原恭大が絶好調だ。
今季はオープン戦で右膝蓋骨骨折したため開幕に出遅れ、5月29日のイースタン・リーグ楽天戦で実戦復帰。二軍で打率.351と結果を残して6月28日に一軍昇格すると、出場8試合で27打数10安打の打率.370、7打点と大暴れしている。
7月7日の西武戦では三塁打2本で3打点を挙げ、勝利に貢献。藤原の復帰後はチームも7勝2敗とソフトバンク追撃態勢が整ってきた。
大阪桐蔭高からドラフト1位で入団して6年目。ルーキーイヤーに球団の高卒新人では榎本喜八、山崎裕之に次いで54年ぶり3人目となる開幕戦先発出場を果たすなど、早くから大きな期待を背負ってきた。
ただ、高い野球センスを持ちながらケガもあって完全なレギュラー定着には至っていない。昨季は自身最多の103試合に出場したものの打率.238どまり。今季にかける意気込みは相当なものがあったはずだ。
だからこそ開幕前の骨折には自らへの悔しさ、もどかしさもあっただろう。鬱積した思いを爆発させるかのように躍動している。
変化球を見極め、速いストレートに対応
とはいえ、藤原の活躍はもちろんメンタル面だけが理由ではない。まず、誰の目にも明らかなのがフォームの変化だ。
スタンスを広く取って重心を下げ、右足を上げずにそのままスイングするノーステップ打法。2ストライクで追い込まれた際に取り入れ、今のところ、ドはまりしている。それはデータにも如実に表れている。昨季と比較したのが下の表だ。
昨季に比べ、今季はスイング率が低い。ストライクゾーン、ボールゾーンともに下がっているが、球種別に見ると、ストレートはほとんど変わっていないのに対し、変化球は昨季の46.20%から今季は31.10%と15%も差がある。
これは変化球をしっかり見極めているということなのか。そこでデータをさらに深堀りしてみた。
全体的に今季の方が数字は高いが特に目立つのはストレート。昨季の打率.216から今季は打率.400とまるで別人だ。変化球も上がっているとはいえ、上がり幅が違う。
球速で見ても、140キロ以上の打率が.235から.368、150キロ以上が.179から.250に上昇。変化球を見極めながら、速い球に対応できていることが分かる。
そこでストレートと変化球のストライクゾーン、ボールゾーン別のスイング率も調べてみた。
やはり唯一、昨季より高いのがストレートがストライクゾーンに来た時のスイング率。56.59%から66.67%に上昇している。
同じストレートでもボールゾーンは振らず、変化球はストライク、ボールともにスイング率は下がっている。
まだ今季の打席数が少ないため一概には言えないものの、変化球を見極め、速いストレートに対応できていることが現在の成績につながっていると言えそうだ。そして、それを可能にしているのが、無駄な動きの少ないノーステップ打法ということになる。
実際、ノーステップ打法を取り入れる2ストライクの打率を比較すると、昨季の.206に対し、今季は.316と1割以上もアップしているのだ。
藤原の好調には理由があり、決してフロックではなく、勢いだけでもない。開幕から出続けていれば疲れが出る時期だが、今季の藤原にはそれも当てはまらない。ソフトバンク追撃へ、一皮むけたスピードスターが大逆転Vに導くか注目だ。
※成績は7月7日終了時点
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記事:SPAIA編集部