「演劇や映画に携わってきた経験を故郷・四日市の文化発展に還元したい」俳優の高川裕也さん語る
様々な舞台や映像作品に出演し、「カンブリア宮殿」や「SASUKE」などテレビ番組のナレ―ションでも知られる三重県四日市市出身の俳優高川裕也さん(62)。石油化学工業都市として発展する過程で、大気汚染や水質汚濁などの公害問題に揺れた1970年代を同市の小中学校、高校で過ごした。「清濁合わせ持つ四日市で過ごした経験が演じる上で根幹になっている」。近年、故郷での活動も増え、育ったまちへの思いが深まっている。
◆清濁合わせ持つ故郷・四日市を礎に
子どものころの思い出の場所は、監督・脚本・主演を務めた映画「GINAGINA ぎなぎな」のキービジュアルにも採用した四日市旧港。「水がヘドロだらけでね、たまに落ちる奴もいて臭かった」と笑う。「汚いのにハゼを釣って食ってる奴もいましたよ」。ところが40歳を過ぎ、子どもに思い出の海を見せようと帰省した際、汚れていた水がすっかり浄化されていて驚いた。四日市では、発展の反面、環境への配慮を欠き発生した公害の解決に向け、環境改善が着実に進められていた。近所の年配の人が「昔(昭和前半)、四日市の海はきれいだった」と言っていたことを思い出し、故郷の本来の姿を実感した。「親世代が汗水垂らして頑張ってきたから今がある。ものづくりする上で良い面も悪い面もある。この感覚は自身の礎(いしずえ)になっている」。
◆2025年、朗読劇など地元での活動に一層の意欲
2月11日に、四日市市海山道町の三浜文化会館で開かれる三浜ステージリーディング「薬指の標本」(小川洋子・作)への出演を控えている。人々が思い出の品を保管してほしいと訪れる「標本室」を舞台にした奇妙な恋愛物語。「女性作家による女性視点の物語をどのように読むか試行錯誤中です。昨年披露した時代劇『柘榴坂の仇討』とはガラリと変わって、静かに展開していく話なので、淡々と読みつつ、音と音の間、前後の音の質などを工夫して仕上げたい」と意気込む。高川さんの実験的な試みをバックアップするのは、同イベントを主催する公益財団法人四日市市文化まちづくり財団。「地元の公益事業だからこそ実現できる演目。新たな挑戦をしつつ、演劇・映画に携わってきた経験を四日市の文化発展にフィードバックできれば」と顔をほころばせた。
午後1時からと同4時からの2回公演。会場は三浜文化会館創作スペースで、入場料は1000円。全席自由。定員は各回50人。チケットは、四日市市文化会館と三浜文化会館窓口で取り扱っているほか、インターネット販売(https://yonbun.com/ticket-purchase)もある。問い合わせは、市文化会館(059・354・4501)へ。詳細はウェブサイト(https://mihama-culture.com/news/1825/)。
◆映画「GINAGINA ぎなぎな」ネットで配信
高川さんの監督作品で四日市市内でもロケが行われた「GINAGINAぎなぎな」が、3月21日からAmazonプライムで配信されることが決まった。今後、他のプラットフォームからの配信も予定しているそうだ。
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