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生成AI導入前に知っておきたいコストと期待できる効果とは?

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生成AIイメージ

「生成AIの導入コストはいくらかかるのだろうか」「生成AIを導入すると本当に効果があるのか」と、お悩みの方も多いのではないでしょうか。ChatGPTを始めとした生成AIの進化は目覚ましく、多くの企業で「自社の業務にもAIを取り入れたい」という声が高まっています。

一方で、コストをかけて生成AIを導入しても、現場で使いこなせないのではないか、費用対効果が合わないといった声も少なくありません。この記事では、コストの内訳、得られる効果、さらに押さえておくべきポイントを解説します。

コストや効果が気になっている方は、ぜひ参考にしてみましょう。

1. 生成AIの導入にかかるコストの内訳とは?

生成AIを導入する際には、初期投資のほか継続的な費用も発生します。企業がカスタマイズした仕様の生成AIを導入する場合には、高額な開発費用が発生する可能性もあります。

AIツールや基盤システムを利用するためのツールやソフトウェア費、高性能な計算処理を支えるハードウェア費、AIの学習に不可欠なデータ準備費などです。

これらを事前に把握し、計画を立てることでスムーズな導入と効果的な活用につながります。
 

月額課金型ツール(ChatGPT・Notion AIなど)の利用料

生成AI生成Aの代表的なものとして「ChatGPT」や「Notion AI」のような月額課金型のSaaSツールが挙げられます。

例えば、代表的なChatGPTの費用(2025年5月時点)を見てみましょう。

無料プラン

Plusプラン:月額20ドル

Proプラン:月額200ドル

Teamプラン:1ユーザーあたり月額25、30ドル

Enterpriseプラン:要問い合わせ

使用用途に分けて多くのプランが用意されています。

また、Notion AI(2025年5月時点)の場合は以下の通りです。

フリー:無料

プラス:月額1,650円

ビジネス:月額2,500円

エンタープライズ:要問い合わせ

ただし、他のAIでは、利用量に応じた従量課金が発生するサービスや、特定の機能を利用するために追加費用が必要となる場合もあります。まずは、無料プランやトライアル期間を活用し、確かめてから本格導入を検討してみましょう。
 

社内導入にかかる教育・環境整備コスト(ID管理・ガイドライン作成など)

本格的に社内業務へ生成AIを導入する際、さまざまな費用が発生することを把握しておかなければなりません。例えば、ソフトウェアを購入・インストールせずに月額や年額の料金を払って必要な機能を利用する「SaaS型AI」の場合などです。

SaaS型AIの場合、自社の業務フローに合わせた初期設定や既存システムとの連携が必要になると、さらにコストがかかる可能性もあります。また、準備作業には、専門知識を持つ社内担当者の工数や、外部ベンダーへの委託費用も必要です。

仮に、AIチャットボットを導入すると、初期費用として数万〜数十万円、月額費用として十数万〜数十万円はかかるでしょう。

導入するAIは、種類や規模、カスタマイズの度合いによってコストが変動するため、事前にしっかりと見積もりを取ることが大切です。
 

自社開発・API連携など本格導入時の開発・人件費コスト

既製のSaaS型ツールでは対応できない高度な要求、独自の業務プロセスへの最適化を目指す場合、自社開発やAPI連携による本格的なシステム構築が必要です。

開発プロセスは通常、要件定義、PoC(概念実証)、本開発、テスト、導入、運用・保守といった段階を経て進んでいきます。

例えば、PoCにかかる費用は百万円単位、さらに人件費は月額数十万〜数百万円規模となることも少なくありません。

さらに、AIモデルの精度を維持・向上させるための継続的なデータ学習やチューニング、システムメンテナンスにも運用コストが必要です。

2. 生成AIによって削減できる「見えにくいコスト」

生成AI導入の検討段階では、初期投資やランニングコストが注目されやすく、コストがかかることを気にする企業も多いでしょう。しかし、それ以上に期待できるのが「見えにくいコスト」の削減効果です。

日常業務の中には非効率、かつ時間ロスのある業務も多く、金額としては直接現れにくいが積み重なると負担が大きくなるものも多いはずです。

生成AIは、こうした見えにくいコストを削減し、従業員がより付加価値の高い業務に集中できる環境を創出する可能性を秘めています。
 

企画・資料作成・文案作成の「初動時間」の短縮

企業では、日常的な企画の立案やレポート作成、プレゼンテーション資料の準備、メール文案作成などに時間を割いていることも多いでしょう。しかし、これら日常業務にかかる初動時間は、生成AIによって大幅に短縮することが可能です。

例えば、新しい企画のアイデア出しで行き詰まった際には「関連キーワード」を入力するだけで、生成AIがさまざまな切り口や構成案を提示してくれます。また、会議の議事録作成や長文レポートの要約、定型的なメールの返信文作成なども、生成AIに任せることで瞬時に完了するでしょう。

人間が一から文章を考え、作成し、推敲するまでの時間を考えると、生成AIを使用することで作業効率は格段に向上します。さらに、資料作成では、グラフや図表の自動生成機能を持つAIツールもあるため、視覚的に分かりやすい資料を短時間で作成可能です。
 

カスタマー対応・FAQ生成などの省力化

カスタマーサポートや社内のヘルプデスクにおける問い合わせ対応業務は、企業の中でも負担の大きい業務です。そのため、多くの企業がアウトソーシングによって対応するなどの対策を講じています。

しかし、生成AIを活用したチャットボットを導入することで、大幅な省力化が期待できるでしょう。例えば、生成AIは「学習マニュアル」や「FAQデータ」を基に、顧客や社員からの定型的な質問に対して24時間365日、自動で回答を生成・提供することが可能です。

担当者は単純な問い合わせ対応から解放され、より高度で複雑な問題解決や個別対応が必要なケースに集中できます。従来のチャットボットとは異なり、生成AIは自然な対話能力を持つため、質問の意図を汲み取って柔軟に回答する点も強みです。

問い合わせ履歴を分析し、FAQコンテンツを自動生成したり、既存FAQを改善したりすることも可能なため、FAQメンテナンスの手間も削減されます。
 

業務属人化リスクの解消と教育コストの削減

企業にとって、特定の担当者しか業務内容や手順を把握していない「業務の属人化」は課題の1つでしょう。例えば、担当者の不在時に業務が滞るリスクや、ノウハウが継承されにくいといった問題です。

しかし、熟練担当者が持つ知識をAIに学習させておくと、他の従業員が業務を行う際にAIに質問するだけで情報や手順を確認できるようになります。

また、従来の社員教育では、OJTによる指導やマニュアルの熟読などが一般的でしたが、AIの活用によって教育担当者の負担軽減にもつながるでしょう。

結果的に、組織全体の知識レベルの底上げと、業務継続性におけるリスクの排除、さらには教育にかかる時間やコスト削減が期待できます。

3. コスト以上の効果を出すために必要な3つの条件

生成AIの導入による投資を無駄にせず、コスト以上の効果を引き出すためにはいくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。

よくあるのが「とりあえず導入してみる」という曖昧な進め方をしている企業ですが、それでは期待した成果を得ることは難しいでしょう。

企業が生成AIを導入し、投資以上の効果を出すためには、自社の課題を洗い出した上で戦略的な視点に基づいた計画を立てておくことが不可欠です。

ここでは、具体的に効果を出すための必須条件について解説します。
 

① どの業務に使うかを明確にする(「なんとなく導入」が一番危険)

生成AIの導入で失敗する最も多い原因の1つが「導入目的の曖昧さ」です。生成AIは期待の大きい分野ですが「注目されているから」「競合が導入しているから」といった理由だけでは、期待している効果は得られないでしょう。

まず、自社の「どの業務」で「どのような課題」を解決するためにAIを活用するのか、さらに「何を実現したいのか」を明確にする必要があります。そのため「カスタマーサポートのAI化」「マーケティングコンテンツの作成効率アップ」「社内文書の時間短縮」など、具体的な目標を設定しましょう。

目標を明確にするためにも、現状の業務プロセスを詳細に分析し、ボトルネックとなっている箇所や非効率な部分を特定する必要があります。

ただし、社内で解決すべき問題に対し生成AIが本当に最適な手段なのか、既存のツールや手法では対応できないのか検討することが重要です。
 

② 社内でのルール整備と活用範囲のすり合わせ

生成AIは便利なツールである一方、情報漏洩、著作権侵害といったリスクに注意しなければなりません。中でも、もっともらしい嘘の情報生成「ハルシネーション」は見分けがつきにくく、使用者が必ず確認するなどの必要性が高い点と言えます。

このようなリスクを管理し、従業員が安全かつ効果的にAIを活用できるようにするためには、社内ルールの整備と、活用範囲の明確化が不可欠です。例えば「機密情報や個人情報の入力禁止」「生成された情報のファクトチェックの徹底」などのガイドラインを策定し、全従業員に周知徹底する必要があります。

また、ルールの策定においては、法務部門や情報システム部門など、関連部署との連携も重要です。さらに、部署や役職によって利用ニーズやリスク許容度が異なるため、社内の状況に応じた柔軟な対応も視野に入れておかなければなりません。

明確なルールがない中での利用は、思わぬトラブルやコンプライアンス違反につながる可能性もあるため、安心してAIを活用できる環境を整えておきましょう。
 

③ 人が「判断する役割」として残る体制づくり

生成AIは業務を支援する「ツール」であり、最終的な意思決定や品質を担保する責任は人間が負わなければなりません。AIが生成した文章やコード、デザインなどを鵜呑みにすることなく、必ずチェックと判断する体制を構築することが重要です。

具体的な体制としては、生成AIの利用プロセスの中に、必ず「人間のレビュー」工程を設けることが挙げられます。例えば、AIが作成したレポート案は担当者が内容の正確性を必ず確認する、顧客向けメールの文面は上長が承認するなど、業務内容に応じたチェックが必要です。

また、AIの利用によって業務プロセスの変化を従業員に理解してもらい、AIと人間がどのように役割分担するかを明確にすることも大切です。

AIに任せるべき作業と人間が責任を持って判断すべき領域を切り分け、あくまでも利用するという点を意識しておくことが不可欠と言えるでしょう。

まとめ

生成AIは、導入に際してツールの利用料、開発費など場合によっては多額のコストが発生する場合もあります。しかし、それ以上に資料作成の効率化やカスタマー対応の省力化、属人化によるリスクの改善など「見えにくいコスト」の削減効果に目を向けることが大切です。

そのためには「多くの企業で導入しているから」「安価に導入できるから」などという理由で導入したとしても、活用できなければ意味がありません。

生成AIの導入を成功に導くためには「どのような目的で導入するか」という明確な目標を立てた上で「社内ルールの整備」など運用体制の構築が必要です。

自社の課題と目的を明確にし、リスク管理体制を整えた上で、戦略的に生成AIを「使いこなす」準備を進めることが、コストを上回る成果を引き出すでしょう。

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