クマは「もっと駆除すれば被害は減る?」「麻酔をかけて山奥に放せないの?」捕獲と保護にまつわるQ&A5選【秋田県に学ぶ③】
もっと駆除すれば被害は減る?
麻酔をかけて山奥に放せないの?
クマにまつわる、よくある疑問一つひとつについて、丁寧に回答しているWEBページがあります。
書いたのは、秋田県の職員です。答えている質問の数は、30個にのぼります。
Q&A全体のポイントについては、すでにこの連載の中でお伝えしましたが、ツキノワグマ・ヒグマの生息する全国各地にとって、一つひとつが参考になる内容です。
「正しく知って、正しい知識に基づいてきちんと対策すれば、無駄な衝突をせず暮らしていけると思う。ひとり一人に、正しい知識を身に着けてほしい」
そんな秋田県の思いに共感し、SitakkeでもQ&Aのいくつかを抜粋してご紹介します。
今回は、捕獲と保護編です。クマについては2つの意見が対立することもありますが、どちらの立場からの疑問に対しても、まずは現状を知って、考えてみましょう。
【Q&A全体についてのインタビュー記事:「最近のクマは、鈴やラジオの音では逃げない?」よくある疑問30個に回答!秋田県から学ぶ、全国に通じる大切なこと】
連載「クマさん、ここまでよ」
この記事の内容
①クマによる人身事故や農作物被害を防ぐため、もっと駆除すべきではないですか
②出てきたクマを捕るのではなく、山に入って積極的にクマを捕獲するべきではないですか
③家の近くにクマが出ます。近くにわなを置いてもらえませんか
④クマを駆除するのではなく、麻酔をかけて山奥に放すか、動物園で飼育してはどうですか
⑤捕獲されたクマを引き取って飼育したいのですが
秋田県のホームページ内「クマについてよくあるご意見・ご質問」から、駆除・保護に関する質問についての解説文を抜粋して5つご紹介します。(画像はHBC「クマここ」より)
①クマによる人身事故や農作物被害を防ぐため、もっと駆除すべきではないですか
捕獲(駆除)も重要な対策のひとつであり、各地域において状況に応じて捕獲が行われています。
ただし、クマの出没はクマの数「だけ」ではコントロールできません。出没要因を除去しない限り、いくら捕獲をしてもクマの出没は続きます。
捕獲「だけ」に頼る対策では、限界があります。出没要因の除去(農地への電気柵の設置、誘引物となる廃棄作物や生ゴミの適正処理など)と捕獲、両輪で対策を進める必要があります。一人ひとりがクマを集落に寄せ付けない、通わせないよう、対策に努めましょう。
②出てきたクマを捕るのではなく、山に入って積極的にクマを捕獲するべきではないですか
クマの出没や農作物被害、人身被害が多く発生するのは6~10月です。この時期の山は草木が生い茂り、見通しが非常に悪いため、捕獲者がクマと鉢合わせをする危険性があります。捕獲従事者の安全管理上問題が大きいため、出没や被害の多い時期に山に入って銃を用いた捕獲をすべきではありません。
一方で、人とクマとの間に適切な距離をとり、棲み分けを実現するため、集落周辺に定着している個体に捕獲圧をかけるなどの対策は必要と考えています。この方法については現在情報収集・検討中です。
③家の近くにクマが出ます。近くにわなを置いてもらえませんか
集落内や市街地にわなを設置するのは難しい場合が多いことをご理解ください。
わなにはハチミツなどクマをおびきよせるための誘引餌を使いますので、かえってクマを集落内に引き寄せてしまう可能性があります。また、親子が出没していて、子グマだけがわなにかかってしまった場合、知らずにわなの近くを通った人が母グマからの攻撃を受ける危険性もあります。
さらに、誰でも簡単に見つけて近付ける場所に設置した場合、興味を持った人が触ってしまうことで、わなの仕掛けが作動しなくなる懸念や、ふいにわなのフタが落ちて人がケガをする懸念があります。
こうしたことを防ぐため、出没しているクマの構成やクマの通り道などを見極めながら、わなを設置すべきかどうか、設置するならどこが良いか、慎重な判断が必要です。
④クマを駆除するのではなく、麻酔をかけて山奥に放すか、動物園で飼育してはどうですか
クマを奥山に放獣しても元の捕獲場所(人の生活圏付近)へ回帰してしまう例が報告されていること、放獣先の地権者や周辺住民の理解を得ることが社会的に困難であること、現在本県の生息状況は安定していると考えられること等に鑑み、秋田県第二種特定鳥獣管理計画(第5次ツキノワグマ)計画期間中は放獣しないこととしています。今後、個体数のモニタリングを行う中で必要に応じ放獣の実施を検討していきます。
また、クマは長寿命の動物です。飼育下では30年ほど生きることが知られています。捕獲されたクマをすべて動物園に収容していると、あっという間に動物園がクマだらけになり、それぞれのクマを最大30年間飼育し続けることは容易ではありません。
秋田県では捕獲(駆除)だけに頼っているわけではなく、クマの個体数をモニタリングしながら、誘引物の除去や電気柵の設置等と併せて対策を行っています。
⑤捕獲されたクマを引き取って飼育したいのですが
動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)において、クマは「特定動物」に指定されています。特定動物を飼育するには、飼育施設ごとに予め都道府県知事の許可を受ける必要があります。
ただし、動物愛護管理法の改正により、愛玩目的で新たに特定動物を飼養することは禁止されています。
なお、クマの捕獲許可について、許可申請を行う段階で捕獲の目的と捕獲後の処置について明記しています。捕獲の目的や捕獲後の処置に飼養と記載していない場合、その許可で捕獲したクマを飼養することはできません。
Q&A全文は、秋田県のホームページ内「クマについてよくあるご意見・ご質問」からご確認いただけます。
秋田県でツキノワグマ対策にあたっている職員へのインタビュー記事も、連載の中で紹介しています。
【①Q&Aのポイントについて:「最近のクマは、鈴やラジオの音では逃げない?」よくある疑問30個に回答!秋田県から学ぶ、全国に通じる大切なこと](https://sitakke.jp/post/13536/)】
【②これからの自治体に求められるクマ対策について:クマ対策の「大きな前進」?法改正が進む今こそ必要な“自治体の体制” 秋田県から学ぶ、全国に通じる大切なこと】
連載「クマさん、ここまでよ」
暮らしを守る知恵のほか、かわいいクマグッズなど番外編も。連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。
取材協力:秋田県自然保護課
編集:Sitakke編集部IKU
2025年3~4月上映の劇場版「クマと民主主義」で監督担当。2018年にHBCに入社し、報道部に配属されてからクマの取材を継続。2021年夏からSitakke編集部。