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「再会を必ず」——14年ぶりに新シリーズがスタートした『NO.6』の魅力|アニメをきっかけに魅了された、大人になっても色褪せない思い出

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

『バッテリー』などの作品で人気の小説家・あさのあつこさんが手掛ける近未来SF小説『NO.6(ナンバーシックス)』。

2011年7月にアニメ化され、2024年11月にはミュージカル化も果たした本作が、5月28日(水)発売の『NO.6再会』第1巻を皮切りに、14年ぶりに新シリーズとしてスタートします!

「NO.6」という聖都市で出会い、さまざまな経験と困難を共にした紫苑とネズミ。「再会を必ず」——“未来”のために別れを選択した青年2人は再会できるのか、14年間想いを馳せてきた方は多いのではないでしょうか。

今まさに記事を書いている筆者も、ずっと、ずっと、紫苑とネズミの再会を待ち望んできた中の1人です。ここでは『NO.6』を愛する一ファンとして、本作の魅力をお届けできればと思います。

※新シリーズに関するネタバレはありません。

【写真】14年ぶりに新シリーズがスタートした『NO.6』の魅力|大人になっても色褪せない思い出

アニメから『NO.6』の世界へ

『NO.6』との出会いは、2011年7月〜9月に放送されたTVアニメ(全11話)でした。聖都市「NO.6」のエリートとして育てられた少年・紫苑と、スラム地区の西ブロックに住むミステリアスな少年・ネズミの出会いに心が躍り、第1話から引き込まれたのを覚えています。

エリートとは思えないほどお人好しでふわふわしている紫苑。皮肉屋で「NO.6」に対して深い憎悪を抱いているネズミ。正反対な2人がすぐに打ち解けて親しくなる姿がとても愛おしく、この2人の出会いは本当に“運命”で“奇跡”だったのだと感じずにはいられません。

また、紫苑演じる梶裕貴さん、ネズミ演じる細谷佳正さんのお芝居も、『NO.6』という作品の魅力にどっぷりとハマった理由だと思っています。お二人が演じる紫苑とネズミの絶妙な距離感が胸をくすぐる感じ……定期的に見直したくなるほど不思議と癖になるんです。

そして、アニメをきっかけに原作小説を読み始め、アニメではわからなかった細かい心理描写や背景にも触れ、さらに『NO.6』の世界に夢中になりました。

私自身、当時、図書館で借りようと思った矢先で初めて知ったのですが、実は『NO.6』は児童書。(『怪盗クイーン』シリーズで有名な、はやみねかおる先生の『都会のトム&ソーヤ』と同じ書籍レーベル)

まさか児童書として出版されていたとは思えないほどディストピア感満載の作品ですが、あさのあつこさんのストレートでわかりやすい文章を読んでいると納得させられる節もありました。

『NO.6』の内容的に「原作は難しいかも……」と躊躇している方がいらっしゃるかもしれませんが、難しい言葉はほとんど使われていませんし、使っていてもしっかりと説明してくれるので安心です。

 
また、“聖都市「NO.6」の裏にある真実と向き合い、「管理社会」と戦う”という大きな軸がブレずに一貫性が保たれているからこそ、物語が進んでも途中で混乱することはありません。

何より、情景がすぐに浮かび上がってくる、あさのあつこさんの文章がとても魅力的なので、アニメから入った方はぜひ小説にも触れてみてください。

 

ネズミと紫苑

『NO.6』の魅力を教えて!と言われたら、私は1番に「ネズミと紫苑」と言います。それだけ、2人の関係は語り尽くせないほどの魅力で溢れているからです。

ここで、初めて『NO.6』に触れる方のために、あらすじを一部紹介します。

エリートとして生まれ、“聖都市”の異名を持つ「NO.6」で何不自由なく育てられた紫苑。
12歳の誕生日、彼は偶然、矯正施設から逃げ出してきた一人の少年を助ける。
翌日、ネズミと名乗るそのミステリアスな少年は、幻のように姿を消していた。
「NO.6」の外に広がるスラム地区「西ブロック」に住むネズミとのこの出会いが、
その後の紫苑の人生を大きく狂わせていく・・・

聖都市「NO.6」の外に広がっているスラム地区、そしてネズミが逃げ出してきたという矯正施設……紫苑はネズミとの出会いをきっかけに、「NO.6」の隠された秘密に触れていきます。

当時は、「NO.6」の秘密に迫るたびにドキドキしては、性格がまったく異なるネズミと紫苑が少しずつお互いを理解し、支え合う様から目が離せませんでした。育ってきた環境、価値観、考え方、愛し方も違う2人なのに、お互いを求め合う姿が『NO.6』を愛する理由に詰まっていると思います。

 

友情というにはあまりに激しく、
宿命というにはあまりに切ないふたりの物語

こちらもあらすじの一部を抜粋させていただきましたが、本当にその通り……! 

あくまで個人的な意見ですが、ネズミと紫苑の関係性は、性別や枠組みを超えた唯一無二の愛を感じずにはいられません。この2人の関係をどのように捉えるのか、読者それぞれの解釈が楽しめる魅力もあります。

また、聖都市「NO.6」の秘密に迫る際、誰よりも優しかった紫苑が豹変し、その姿を見たネズミの反応にもご注目ください。それまで積み重ねてきた2人の関係性が色濃く表れると同時に、私たちの感情もぐちゃぐちゃになる非常に印象深いシーンです。

そんなネズミと紫苑の関係性は、『NO.6』を語るには欠かせない、関係性オタクを唸らせる魅力と言えるでしょう。

 

五感に訴えかける描写力

個人的に、『NO.6』は心理描写と情景描写に厚みのある作品だと思います。

紫苑の友人・沙布、「犬貸し屋」などを生業としながら西ブロックで暮らしているイヌカシ、元新聞記者の力河、紫苑の母親・火藍といったキャラクターたちの感情がダイレクトに伝わってくる会話劇も魅力ポイントの1つです。

情熱的かつドラマチックなネズミと紫苑の会話劇だけでなく、イヌカシと力河の漫才のような会話劇、紫苑に心を寄せる沙布の想い——。リアルな心理描写と情景描写からイメージがより鮮明になり、強い共感と感情移入を引き起こし、まるで彼らと一緒にいるような没入感を覚えます。

だからこそ、キャラクターの一人ひとりに愛着が湧き、大人になってからも『NO.6』に魅了され続けているのだと。情景やキャラクターの感情をそのまま体感できる、五感に訴えかける描写力は『NO.6』ならではです。

 

現実問題と重なる『NO.6』の世界

著者のあさのあつこさんは、9.11(アメリカ同時多発テロ事件)から着想を得て『NO.6』を書き始めたそうです。

そのためか、戦争、紛争、人種差別、核兵器、地球環境への汚染と破壊など、現実世界で私たちが直面している問題がこの作品でも描かれています。

リアルとはまったく違う世界だけれど通ずるものがあり、関係ない出来事とは思えないストーリーに考えさせられるのも、私が『NO.6』に魅了され続ける理由の1つです。

何も知らないことが、知ろうとしないことが、傲慢というのなら、
その傲慢さの上に今までの幸福な生活があったというのなら、
いいさ、捨ててしまっても。転がり落ちて本望だ。(『NO.6』第1巻より)

これは、「NO.6」から追われる形でスラム地区にやって来た紫苑のモノローグです。

当たり前に過ごしていた日々が、実は誰かの犠牲の上に成り立っているものかもしれない……それを知ったとき、皆さんならどうしますか?

紫苑は、「何がほんとうなのか、ぼくの生きている世界がどうなっているのか、ほんとうの姿を知りたい」とネズミに訴えました。

遠く離れている私たちにとっては身近に感じられないことでも、まずは”知ること”が大事だと、“無知は怖い”ということを、私は今でも『NO.6』から学んでいます。

紫苑たちを通して、“あなただったらどうする?”という問いかけにしっかり向き合っていかなければならないと、そこに気づかせてくれるのは『NO.6』の大きな魅力です。

再会を必ず——

自身の経験を交えて『NO.6』の魅力をお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか。初めて知ったという方には、少しでも興味を持っていただけたのなら幸いです。

そして、5月28日(水)には、ついに待望の新シリーズ第1巻『NO.6再会#1』が発売となります。筆者は一足先に全編公開された雑誌「小説現代」で本編を読ませていただきましたが、懐かしさと嬉しさが入り混じった感情が一気に溢れ出てきました。

読み進めるたびにドキドキワクワクする感覚は変わらず、紫苑とネズミが再会できるかと思うと終始胸の高鳴りが止まらず、時々休憩を挟んでやっと読み終えた後には、静かに天井を見上げるほどの感無量。彼らの物語を再び目にできる幸せは格別です。

なお、単行本では、アニメのキャラクター原案・コンセプトデザインを手掛けたtoi8先生がイラストを描き下ろしているので、こちらもお見逃しなく!

初めて触れる方は、ぜひこの機会に『NO.6』の世界へ足を踏み入れてみてください。きっと、いや必ず、あなたの人生が豊かになるはずです。

では最後に、続編を待ち望んできたファンはもちろん、『NO.6』に関わったすべての人の合言葉にもなっている、この言葉で締めたいと思います。

「再会を必ず」

 
[文/福室美綺]

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