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CENT 音楽で繋がる決意を改めて表明したセントチヒロ・チッチのソロプロジェクト、Zepp Divercity公演を振り返る

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CENT

CENT oneman live "CENTIMETRE"
205.5.15(木)Zepp DiverCity(TOKYO)

心の中の弱虫に寄り添い発破をかけてくれる存在として、また幼いファンには憧れの存在として、文字通り老若男女と並走するセントチヒロ・チッチ。彼女のソロプロジェクト・CENTがキャリア最大規模となるZepp DiverCcity(TOKYO)でワンマンライブ『CENTIMETRE(センチメートル)』を開催した。誕生日である5月8日にメジャーデビューを発表後、初のライブである今回は自ずとメジャーデビューの報告と決意を伝える新たなスタートの日になった。

地球と月のオブジェが目に飛び込む背景以外はごくシンプルなステージに、ジョン・レノン&ヨーコ・オノの「平和を我等に(Give Peace A Chance)」が流れると、サポートメンバーの庫太郎(Gt)、qurosawa(Gt)、Tomi(Ba)、岩野亨(Dr)がまず登場。少し遅れてステージに現れたチッチは堰を切ったようなファンの歓声に迎えられる。スポットライトが「CENT、始めます」という第一声を強く印象付け、ソロの初作である「向日葵」でスタート。丸くスイートでしかも潔癖な声がポジティヴなCENTの音楽の軸を感じさせる。真島昌利作でオールディーズ感あふれる「あそぼーよ」、ネオアコテイストの「すてきな予感」と、序盤はCENTのポップネスを存分に表現してくれた。

「チッチー!」、野太い声の中に小さな子どもの声が混じることでピースフルなムードになる中、「みんなとの距離をちょっとずつ近づけていけたら」と、ライブタイトル『CENTIMETRE』の意図を話し、堂々たるステージングを見せるも「全然緊張してるんですけど、今日も最後まで私らしく届けたいと思います」と力強く宣言した。

チッチがアコギを弾く「夕焼けBabyblue」では宵闇の手前の“ブルーアワー”が歌と空間系のギターサウンドでせつなさを運び、「おとぎばなし」では、それこそジョン&ヨーコの愛と平和の精神とラブソングのロマンがギター3本のシューゲイザーサウンドでアップデートされる。間奏のギタリスト2人のユニゾンフレーズもゴリゴリのオルタナテイストで、それがチッチの世界観の骨格を強化している印象だ。打って変わってハンドマイクでR&B調の「百日草」をやさしい声で届け、オーセンティックなミディアムロックバラード「君へ」では言葉が伝わる素直な歌唱に打たれる。自分のままで生きていい、と隣で一緒に歩いてくれる感覚を確かに支えるバンドアンサンブルは、誤解を恐れずに言うとTHE YELLOW MONKEYやエレファントカシマシの堂々たるロックバラードを思い起こさせる強度だった。

「ひとりになったら肩の荷が下りたのかMCが緩くなっちゃって」と、その場で感じたことを話すチッチ。今回のライブでは幅広いファン層がそれぞれ過ごしやすいように、ファミリーチケットや学割も導入。ライブを観たい人が気兼ねなく参加するための具体的なアクションは彼女の音楽と通底している。そして誕生日にメジャーデビューを発表したことを改めて報告。拍手と歓声が起こる中、「素敵な音楽を作っていくんだけど、その上でBiSHはなしにはできないし、セントチヒロ・チッチがあってCENTがあるから。ある時までBiSHの曲をやるのは違うと思ってたけど、一生懸命生きてるメンバーを見てると、私も繋いでいきたいと思った。だからみんなも素直に楽しんでほしい」と語り、BiSHの「スパーク」をこのバンドの音で披露してくれた。低めのメロディに滲むストイックさ、《このまま消えてしまえ 愛のない罪のない言葉たち》《痛みを痛みでこらえたい》――今も有効な強力なアンセムがCENTの背骨をも形成していることを知る演奏だった。

「スパーク」でチッチとファンの信頼関係を結び直した体感のあと、ぶっといグルーヴのインストセッションに突入。音源にはないガレージっぽいギターサウンドも飛び出し、チッチがコロナ禍にDTMで原型を作った「インマイルームフェス」が、バンドサウンドの肉感で放たれる。《おいしいごはんをくださいな こころもからだもけんこうに》という標語めいた歌を繰り返しながら、チッチはあっという間にフロアに降りてファンの間を練り歩く。その間もしっかり歌は続いていて、ただエンディングまでにステージに戻れなかったのは誤算だった様子。「戻れなかったー」とケロッとした調子のチッチがたくましい。

続く新曲は、アニメーションとダンサーが演出に加わり、タオルを使ったパフォーマンスをフロアと楽しむ「Tenugui Galaxy!?」。全編打ち込みのこの曲はバンドメンバーもアクション&ダンスに参加し、ハードに踊った4人はチッチに「大丈夫?」と心配されるほど。そしてメンバー紹介を挟み、スカテイストの軽快なロックンロール「Girlfriend」を経て、ゲストをステージに招き入れる。最初のガールフレンドは「百日草」や「紙ヒコーキと晴れのちコーヒー」「ナポレオーネ通りにて」などを共作した“えみそん”ことおかもとえみ。この日は「ナポレオーネ通りにて」を、二人が意識したというPUFFYを彷彿させる脱力ポップロックで展開。二人目はお互いをフィーチャーしたコラボナンバーをリリースした詩羽(水曜日のカンパネラ)が登場。詩羽のチッチへの好きパワーが素振りからあふれつつ、普段の会話めいたやりとりも微笑ましいテンションのまま、Lo-fiヒップホップテイストの「Linda feat. 詩羽」を極上のバンドサウンドで披露してくれた。女子同士の信頼と無敵感。それぞれ1曲だけではありつつ、強力な必然性を感じる共演だった。

音楽的なバリエーションもコラボも盛り込んだステージはあっという間に終盤に入り、改めてチッチがCENTとして音楽活動を推し進めていく決意が語られる。「小中の頃は友だちがいなくて、大人になってやっと友だちと言える子が増えて」と、自分が何かを発信することで人と出会い繋がってきたことを明らかにし、自分を救ってくれた音楽のことをいいなと思うからこそ、「CENTを紡いでいきたいと思ってるんですけど、どうでしょう?」とフロアに問いかける。もう察しのいいファンは悟った様子で、彼女の表現のルーツであるGOING STEADY/銀杏BOYZの「夜王子と月の姫」のカバーが説得力を持って響き渡る。この人が歌うために存在した曲なのでは?と錯覚するぐらい、時に人は表現に出会う。一言一言、一音一音を大切に紡ぐ演奏はチッチの叩くグロッケンと《もーいいかい まーだだよ》でピークを迎え、エンディングに向かって圧倒的なアンサンブルを展開した。そして本編ラストは最強のポップロック「堂々らぶそんぐ」で締めくくった。

アンコールの声が大きくなる中、CENT 3周年にあたる8月20日にメジャー1stミニアルバム『らぶあるばむ』のリリース、それに伴うツアーが映像で発表された。ざわつくフロアを制することなく、新曲でハイパーポップサウンドの「ポーカーフェイス・カウボーイ」がクールに披露された。その後、バースデイケーキとともにえみそんと詩羽が登場し、思わぬサプライズに少し照れるチッチ。そのことでさらにここからの一歩を強く印象づけたのだが、正真正銘のラストナンバーは峯田和伸がチッチのために書き下ろした「決心」。文字通りのマインドで歌うチッチの姿に大いに感銘し、約2時間のライブが終了。この魂の距離の接近は小さな単位であるセンチメートルこそが相応しい。そう思った。

取材・文=石角友香 撮影=Tetsuya Yamakawa

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