【掛川・平松商店】作るのに7日かかる“絶品あられ” 食べる手が止まらない! 職人技の結晶
静岡・掛川市の「平松商店」。職人3人が1週間かけて作り上げるあられは、少量生産ながら根強い人気があります。ここ数年は変わり種あられも登場するようになりました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ店を構えて110年 街道沿いの“あられ専門店”
JR掛川駅から車で西に10分ほど、国道1号線掛川バイパス沢田IC付近を旧東海道が通っています。
街道沿いに、カジュアルな看板やタペストリーをあしらった、昔ながらの趣ある建物が見えてきました。
あられ専門店「平松商店」です。創業は1915年。店を構えて110年の老舗です。
店内の棚は、あられ一色。のりに巻かれたあられ、花の形をしたあられ、パステルカラーのあられ。
あられと一口に言っても、いろいろな種類があるのだなと思いました。
お店の人によると、約20種類のあられを作っているということです。
完成まで1週間 3人の職人が丹精込めて手作り
お店の裏に工場があるということで、特別に製造工程を見せてもらいました。
工場の中は、もち米に火が通った時の、甘く香ばしい、良い匂いが広がっていました。
平松商店のあられは、静岡・御殿場産の餅米を100%使用しています。
ちなみに「あられ」と「せんべい」の違いをご存じでしょうか?
「あられ」は”餅米”、「せんべい」は”うるち米”で作られます。
平松商店は、餅米を使用するあられの専門店です。
この日は乾燥した餅を煎ったり、味付けしたりする作業が行われていました。言わば、あられづくり山場です。
驚いたのが、この工程に至るまでに、既に5日を要しているということ。
精米し水洗いをしたら、餅をつき、冷やして固め、あられの形に切ったらそれを乾燥させ。
煎って味付けをした後も、乾燥や袋詰めの工程がまだ残っています。
完成に至るまでには、7日間も必要になるということです。
では、どうしてそんなにも時間がかかるのか。それは平松商店では多くの作業をわずか3人の職人が手作業で進めているから。
大量生産はできない分、手作りならではの味わい深いあられが出来上がるのです。
この日、のりを巻いていたのは、代表の平松茂幸さん。あられの表面が乾かぬうちに手際よくのりを巻く手さばきは、まさに職人技。
そして煎りや味付けなどを担当していたのは、茂幸さんの甥で後継者でもある5代目の平松朗直さんです。
平松商店 5代目・平松朗直さん:
手作りだからこそ季節や天候に合わせた調整が必要です。冬のこの時期は、夏や梅雨時期に比べて水分が抜けやすいので、乾燥時間を短くしています
茂幸さんの弟で、朗直さんの父・平松力司さんも、永年あられを作ってきました。
平松商店・平松力司 工場長:
この仕事に就いて60年ぐらい経つけれど、昔は乾燥するのに天日干しをしていたから天候次第でいつ乾くかわからず大変でした。今はある程度機械を使うようになったけれど、精米から味付けまで自分たちで作業するということは変わっていません。作るのに1週間かかると言うとみんな驚きますよ
細かい点に気を使いながらの地道な手作業。今も昔も変わらず、丹精込めて丁寧にあられを作っていることが伝わってきました。
根強い人気の定番あられ「品川巻」「花あられ」
平松商店の人気商品を教えてもらいました。
品川巻
まずは、しょうゆ味のあられにのりを巻いた「品川巻(216円~)」です。
平松商店に昔からある商品で、年配の方にも人気があります。
袋を開けると、しょうゆの良いにおいが鼻を抜けていきます。
口に含んでまず最初に感じたのは、しょうゆの味ではなく、もち米の甘さと磯の香りでした。
しょうゆという香りが強い調味料を使っているにも関わらず、真っ先にもち米の存在感が伝わってきたことに驚きました。
そして後から押し寄せてくるのが、しょうゆの甘じょっぱさ。角がなく優しい味わいです。品川巻が昔から愛されている理由がよくわかりました。
品川巻は昔からある定番商品ではありますが、実は作るのが難しいあられです。
厚みがあるため、水分をしっかりと抜く必要がある一方で、抜きすぎると割れてしまう。そのさじ加減が難しい。
また必然的に煎り時間は長くなり、のり巻き作業にも手がかかります。職人の技術が光るあられだと思いました。
花あられ
小粒で花の形がかわいらしい「花あられ(216円~)」も人気です。
地元では「平松商店と言えば花あられ」と言う人も多いと思います。
表面の照りと艶が美しいあられです。
小さくて生地も薄い「花あられ」は、軽い口当たりです。
ほのかな甘味も感じるため、子供も好きな味だと思いました。
しょっぱさと甘さの余韻、もち米の香ばしさ、そして食感の心地よさから「もっと食べたい!」という衝動が収まらず、あっという間に一袋食べきってしまいました。
定番だけじゃない! 変わり種も登場
長い歴史のある平松商店ですが、5年ほど前からは新しいあられの販売を始めました。
いわゆる「変わり種」のあられですが、どれも、最初の一口目で感動を覚えます。しっかりと味付けがされているのに、もち米の軽やかさと風味はきちんと残っているのです。
苺いちえ
「苺いちえ(216円~)」は、フレッシュなイチゴの味がダイレクトに感じられました。
キリッとした甘酸っぱさはイチゴそのもの。あられにも関わらずイチゴの瑞々しさを連想させる新鮮な味わいです。
使っているのは掛川市の「ひらの園」が栽培しているイチゴ。ひらの園では、手間がかかり管理が難しいとされる土耕栽培でイチゴを育て、真っ赤に色づいてから収穫をする“完熟採り”を取り入れています。
「苺いちえ」はひらの園のイチゴの魅力を引き出すあられです。
茶柱
また「茶柱(216円~)」という商品は、お茶の華やかな香りが際立っていました。
後味にはさわやかな渋味も感じられます。こちらも、ひらの園が作った緑茶を使用しています。
「地域や年代問わず多くの人に食べてもらいたい」
定番から変わり種までありますが、どれも共通しているのが「食べる手が止まらない」ということ。食感、風味、余韻など、いつまでも食べていたくなる魅力があるのです。
そんな平松商店のあられの良さを知ってもらうため動き出したのが、5代目の朗直さん。
新商品の開発やマルシェへの出店、パッケージのリニューアルやオンラインストアの開設など、さまざまな取り組みを始めました。
5代目・朗直さん:
地元の年配の方に食べてもらうことが多かったのですが、これからは全国の若い人にも興味を持ってもらえるよう、工夫をしていきたいです。そのためにも伝統の製法をしっかり守り継いでいこうと思います
掛川の土地で大切に守り継がれてきたおいしさが、全国に広がりますように。熟練の職人技が生み出す平松商店のあられの魅力が、地域・世代を問わず多くの人に届くことを祈っています。
■店名 平松商店
■住所 静岡県掛川市細田181-2
■営業時間 8:00~18:30
■定休 日・祝
■問合せ 0537-22-3611
■駐車場 あり