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東京都も国もおばさんたちをガン無視か?『更年期割引』、お願いいたします【日日更年期好日】

コクハク

“選挙ファースト”になっていませんか(C)日刊ゲンダイ

 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第21話は「更年期割引、お願いいたします」。

【日日更年期好日】

卵子凍結補助とはなんぞや

(写真:iStock)

 今回は中年の主張であり、愚痴である。この手の話が苦手…という方はスルーしてください。

 女性の更年期障害の発症時期は、大まかに50歳前後と言われている(日本産科婦人科学会公式HPより)。病気であるとは認めてもらえない、ほぼ病人みたいな更年期症状を抱えて、それでもふつうの生活を要求されるという惨状ぶり。それなのに最近の行政は件の更年期世代=おばさんたちに対して、あまりにも冷たくないだろうか? というのがひとつ目の違和感。

 ただそれに対するかのように、現代の20~30代には行政の対応は手厚い。先日、30代男性の友人が、2人目の育児休暇を取っているとLINEで知らせてきた。

「東京都、対応の手厚さがハンパないです。保育料なし! ほとんど出費していないです(笑)。(小池)百合子様様です(爆笑)!!」

 何がおかしいのかと思いながら、当たり障りのない返信をする。

「お子さんの誕生、おめでとうございます。百合子が都知事のうちに制度を使いまくるしかないよー」

【こちらもどうぞ】まさか痴漢に遭うとは…更年期真っ最中のおばさんの身に降りかかった「性的な危険」

2016年に注目された「保育園落ちた日本死ね」

「保育園落ちた日本死ね」の受賞者として山尾志桜里衆院議員(当時)が登壇したのは記憶に新しい(『現代用語の基礎知識』選 2016ユーキャン新語・流行語大賞」トップ10発表・授賞式)/(C)日刊ゲンダイ

 保育料無償化などと聞くと、私の友人たちが保育園探しに奔走していたことは何だったのだろうと疑問が浮かぶ。新語・流行語大賞にトップ10入りした「保育園落ちた日本死ね」は、そんなに昔のことではない。東京都の卵子凍結の補助金も始まっているが、そんな選択肢は私たちが20~30代だった頃には与えられることはなかった。卵子凍結にかかる金額は採卵に約15~50万円、卵子凍結に卵子1個あたり1年間で約1~5万円の保存料がかかる。一般庶民には現実的な金額ではない。女性は元気な精子を持つ男性を探すよりほかは、子どもを産む術はなかったのだ。そんな状況を危惧したのか、今では東京都が卵子と精子が受精するための『TOKYOふたりSTORY』という、婚活プロジェクトまで運営している。ただこちらも参加資格はほぼ30代まで。おばさん、退散。

 しかし、この制度、該当女性は積極的に使ったほうがいい。若いスタッフに身体のことを相談されると、必ず「後悔しないように、選択肢は増やしたほうがいい」と勧めている。後悔した先輩からのアドバイスだ。

高校の授業料を払うと言った覚えはない

“選挙ファースト”になっていませんか(C)日刊ゲンダイ

 東京都だけではなく、国もおばさんたちを冷たくあしらう。最近、巷を騒がせているのが、高校授業料無償化である(3月3日時点)。例えば貧困など家庭の事情によって、国が補助金を出すというのなら、まだ頷く。でもせめて我が子の高校、大学くらいは両親が支払うべきではないか。そうでなければ、私たちの親世代も含めた一般家庭がこれまで支払ってきた授業料は一体なんだったのかと、失望をするしかない。

 そして母国への失望のとどめは、高額医療費制度の負担上限額の引き上げ案だろう。必要な患者さんたちに高額費用を理由に治療をあきらめろというのも、50歳前後でまさにこれから高額医療費のお世話になっていく世代が、今後利用できなくなるのは明らかにおかしい。結局、今回は案が承認されなかったけれど、またいつ再案となるかヒヤヒヤする。

 行政のおばさんたちガン無視問題、こうして改めて並べてみるとストレスの原因にしか読めなくなってきた。

更年期世代に愛の手を

(写真:iStock)

 すべては少子化が原因だというけれど、こうなることは分かっていたのだから、それ以前に日本ができる施策もあった。フランスは将来を見据えた、少子化対策を打ち、合計特殊出生率を回復させたと聞く。当時はまったく見向きもせず、緊急事態になってから、突然国民にゴマをするかのような施策をホイホイ並べても、国民への公平性は薄すぎる。全部が平等に動くとは思わないけれど、せめて平等にしようとする意思だけでも示してほしい。

 そこで私からの提案なのだが『更年期割引』という施策を考えてほしい。信じられないほど汗が出る、頭痛、腰痛、耳鳴り、自律神経の乱れにめまい、月経など、日々不調のまま私たちは労働を強いられている。ただ“病気”とは認めてもらえず、補助金もないので働くしかないし、自宅に帰ればふんぞり返って座っている家族のために、家事をする。独身女性だって単身生活というだけで税金が多く支払うシステムが組まれているのだから、頑張っている。

『更年期割引』は公共機関、映画、買い物、テーマパークなどに適用されるちょっとしたご褒美みたいなもの。こういった対応があれば「ああ、行政もちょっとは自分たちを視野に入れてくれるのか」と、先述のよく分からない施策の数々にも同意するかもしれない…と加えておく。

国は若い子に夢中

 更年期世代のおばさんたちはずっと苦労を強いられてきた。受験はすべて競争で、高校生の頃は女子大生ブーム、自分たちが女子大生になったら渋谷女子高生ブーム。バブルなんてまったく知らず、就職氷河期を迎えて、やっと働き出したら「経費節約」を掲げられる。給料も上がらず、そのうえ「結婚をしろ、子どもを産め」と、周囲から良妻賢母像を洗脳させられてきた。やっと更年期まで生きてきたと思えば、国は若い子に夢中である。なんだか凋落の一途を辿ってきたような人生じゃないか。

 そんな私たちにぜひ『更年期割引』の愛の手をお願いしたい。

(小林久乃/コラムニスト・編集者)

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