【地球温暖化とスポーツ】酷暑対策なくして良いパフォーマンスは難しい!将来冬季五輪もできなくなる?
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「地球温暖化とスポーツ」。先生役は静岡新聞の寺田拓馬運動部長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年8月8日放送)
(寺田)パリ五輪の話題に隠れてしまったかもしれませんが、今夏も国内ではインターハイが盛り上がりました。
(山田)僕、全然チェックしてなかった。
(寺田)高校生の夏もアツかったんです。女子サッカーの藤枝順心がインハイ2連覇。冬の全日本選手権と合わせると4季連続で全国制覇し、またもや全国女王の座に就きました。
(山田)すごいですね。
(寺田)私も県高校総体を取材しました。プロに4選手を送り込みタレント軍団だった昨季と比べ、「今年は少し小粒かな」と思ったんですが、総合力やチームワークに優れ、柔軟な状況判断ができ、伝統の組織力を見せつけました。冬の5季連続Vを見たいですね。男子サッカーの静岡学園も、ベスト8と健闘しました。
根性論では乗り切れない
(寺田)ここからスポーツの視点を変えていきたいと思います。甲子園も始まりましたよね。今年から開催方式が変わったのをご存知ですか?
(山田)2部制になりましたよね。
(寺田)それです。今日、一つ目の視点は暑さ対策です。甲子園は今年から1日3試合の場合、朝夕2部制で1日のうちで一番暑い時間を避け、朝と夕方に試合をやることになりました。
7日の第1日目、第3試合は最初から試合開始が午後6時半予定で、試合終了が午後9時半過ぎでした。
(山田)そんな遅くまで。
(寺田)ナイターなら涼しいですよね。ただ、今年は手始めなんです。野球って普通は9回までですが、日本高野連は7回制を検討するワーキンググループを設置していて、将来的には高校野球は7回制になるかもしれない。
(山田)これ、作戦が変わってきますよね?
(寺田)選手たちの健康が優先っていう考え方なんです。実際に今でも18歳以下の国際大会では7回制が導入されています。
今年の酷暑ってもう、災害ですよね。取材現場でも、インターハイで静岡学園の川口監督が「こんな暑さの中でサッカーをやるのは世界で日本だけだ」と言っていました。
男子サッカーは今年からJヴィレッジを中心に福島県で集中開催されるようになりました。ほかの多くの競技は、今年は九州北部が会場でした。確かに福島だと暑さは静岡ほどではないかなとは感じましたが、真っ昼間はやっぱり暑いんですよ。
川口監督は「暑い中での連戦に勝つため、『根性だ!精神力で走れ!』って言うのはナンセンス。サッカーの勝負にならないし、選手の成長につながらない。疲れてけがもしやすい。大人がしっかり考えて環境を変えようとしないと駄目だ」と話していました。
ごもっともだと思いました。取材に行っていた私はピッチサイドに座って写真を撮ってるだけでしたが、全身から汗が噴き出して頭もクラクラしてましたからね。
(山田)記者さんも、きついんですもんね。
(寺田)運営は難しくなるかもしれませんが、甲子園と同じように朝と夕方に試合をやるってことは、インハイでも可能だと思うんですよね。ちなみに、女子サッカーの会場は、今年から北海道の室蘭になりました。これも現地取材した記者に聞くと、あっちは涼しかったと。涼しかったからこそ、順心のパスサッカーが出せたっていうんですよ。
(山田)いい環境でやれたからなんですね。
(寺田)高校生に汗と涙を押し付けるのは、やっぱり大人のエゴじゃないかと。高校生にも、酷暑の中でもベストパフォーマンスを出せる環境を作ってあげる必要があるんじゃないかと思います。
将来、冬季五輪が開催できなくなる?
(寺田)今日もう一つの視点なんですが、先月、冬季オリンピックの開催地が2030年と2034年の2大会分まとめて決定されたんですね。30年はフランスのアルプス地域で、34年はアメリカのソルトレイクレイクシティーですが、2大会同時に決まったのは今回初めてなんです。
(山田)先に決めちゃったわけですね。
(寺田)これ、なぜか分かります?
(山田)例えば温暖化とかで、雪が降らないと困るから…?
(寺田)その通りです。温暖化の影響で、冬の競技が安全に開催できる都市が減少傾向にあって、限定されちゃってるんですよね。早くから確保しておきたいっていう理由なんですよ。
(山田)やろうと言ってたのに、雪降らないからうちじゃできない、ってなったら困るからですね。
(寺田)そうなんです。冬季五輪は1924年が第1回で、2022年の北京大会まで24回、21都市で開かれています。日本だと1972年に札幌、98年に長野で開かれています。国際研究チームの調査によると、1920年代以降の気候データと将来の気候変動の傾向を基に計算すると、過去の冬季五輪開催都市は、ほとんどすべての開催地が温暖化で再び冬季五輪を開けなくなるらしいです。
(山田)へぇーっ。もうやれなくなっちゃうんですか。
(寺田)今の温度上昇傾向が続けば、今世紀末に環境的に再開催が可能な都市は、世界中で札幌だけになっちゃうっていう話です。
(山田)うわー。長野ではできないんですか。
日本の東北も、パリ五輪の現場も暑い…
(寺田)パリ五輪を取材した同僚に現地の気候を聞いたら、やっぱり暑かったと言うんですよ。
(山田)報道では選手村も暑いって言ってましたよね。
(寺田)パリの一般的なホテルは、エアコンがないようです。おそらく、気候的に今まではそこまで夏も暑くないから必要なかったらしいんですよね。日本でも北海道なんか使わないって言いますよね。それが今は寝苦しくて、十分に睡眠が取れないとか。日本でも気候の変化を感じますね。
温暖化はスポーツにとっても重要課題!
(寺田)地球温暖化って、スポーツにとっても無関係じゃないってことだと思います。
短期的な対策として、あらゆる競技で酷暑を避ける運営方法を工夫する必要があると指摘したいです。サッカーでも途中で給水タイムを入れたりしてるんですが、甲子園の朝夕2部制のような、いろんな工夫を広げていくべきだと思います。
ただ、これだけじゃ駄目で、人類がスポーツを将来的に続けていくためにはもう一つの視点が重要になる。長期的かつ世界的な動きとして、地球温暖化対策に取り組まなきゃいけないと思います。
(山田)正直、学生の頃から地球温暖化って言われて、遠い未来の話だと思っていたんですが。こんなに急激に温暖化するっていう…。
(寺田)しかも実際スポーツの現場にも影響出てきちゃってますよね。本当にこれは喫緊の課題なんだと感じます。SDGs(持続可能な開発目標)を意識した生活をしないと人類は将来的にスポーツを楽しめなくなっちゃうんですよ。冬も雪が降らなくて、ウィンタースポーツができなくなっちゃう。
(山田)スポーツを通して環境問題にもちゃんと目を向けていかなきゃいけない時代だということですね。今日の勉強はこれでおしまい!