Ken、Sakura、MUCC、AKi、[ kei ]、DEZERTら世代を超えた仲間たちが集結、一夜限りのセッションやサプライズが続出した『SUMMER PARTY ZOO』オフィシャルレポート
8月24日(土)にZeppHanedaで開催された『DEZERT Presents SUMMER PARTY ZOO 2024 ~帰って来たM.A.D~』のオフィシャルレポートが到着した。
2016年・2017年に開催されたKen(L’Arc-en-Ciel)が主宰するライブイベント『PARTY ZOO』と、2016年に開催されたMUCCとAKiのダブルヘッドライナーツアー『M.A.D』が合体し、2024年に復活を遂げた。その名も『DEZERT Presents SUMMER PARTY ZOO 2024 ~帰って来たM.A.D~』。タイトルどおり、主体となるのは両イベントへのリスペクトを表明するDEZERTだ。オーガナイザーを務めるDEZERT・SORA(Dr)は、同じくオーガナイザーとして2022年12月に『V系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP』を成功させた実績を持つ。シーンへの愛と情熱を滾らせる彼の旗振りで、オリジナルイベントへの出演者はもちろん、世代を超えて新たな仲間たちが集結。一夜限りのセッションやサプライズが続く、名場面だらけの真夏の饗宴を繰り広げた。
まず開演前のBGM代わりにオーディエンスを迎えたのが、Ken(Gt)、[ kei ](Gt)、足立房文(Key)による「Ambient before the party」だ。過去の『PARTY ZOO』でも共演し、Kenは[ kei ]が所属していたバンド・BAROQUEのプロデュースを手掛けたこともあるという関係性で、ふたりの相性はばっちり。共にギターで繊細な世界を紡ぎ上げるふたりの音色に、足立がキーボードで深い彩りを加え、幻想的かつスリリングなフリーセッションを展開した。
贅沢な余韻に浸る会場に、オーガナイザー・SORAが、注意事項とともに「出演者のみなさんよりも楽しむ準備できてますか?! どっちが楽しむか、勝負しましょう!」と、さながら選手宣誓のようにアナウンス。ステージ側もフロア側も気合を漲らせ、7年ぶりの宴がついに幕を開けた。
暗転したステージに、トップバッターを務めるMUCCが姿を現す。堂々たる風格を纏って定位置に着くと、「パーティ、はじめようか!」という逹瑯の言葉を合図に「蘭鋳」を投下。真っ赤に染まったステージで轟音を解き放ち、一気に会場に火をつけてみせた。間奏で観客を座らせる演出も「全員死刑!!」の絶叫も容赦なく盛り込み、ひとり残らずMUCCのライブに巻き込んでいく。最新シングル「愛の唄」でシアトリカルな魅力を見せた直後、メロディアスな「ニルヴァーナ」で包み込む柔軟な表現力に酔い痴れた。
ラストナンバー「TONIGHT」で、逹瑯が「ゲスト、AKi!」と呼び込んだ。笑顔でミヤやYUKKEと向き合いながら、音では獰猛なMUCCの重低音にさらなる厚みを加えるAKi。さっそくの共演に、お互いのライブに飛び入りするのが恒例だった「M.A.D」ツアーの空気が甦ってくる。今夜は特別な夜になるという予感を確信に塗り変え、MUCCはステージをあとにした。
ここから、セッションバンドが続くセクションがスタート。1組目は、00年代のヴィジュアル系/ラウドシーンに多大な影響を与えたSlipKnotだ。メンバーのひとり・SORAの出身地を冠して「SlipKnot三郷」と名付けられたバンドに、架神(DEXCORE/Vo)、ミヤ、SAKI(Gt)、Masa(NOCTURNAL BLOODLUST/Ba)、Allen(MUCC Support/Dr)、SORA(Per)、Bikky(CHAQLA./Per)、Sacchan(DEZERT/MacBook Pro) という個性派が集結した。
DJシド・ウィルソンの役割をMacBook Proで務めるSacchanを先頭に登場したメンバーは、本家よろしく全員お揃いのつなぎ姿。楽器が地に着きそうなほど低い位置で構えるミヤとMasa、国内外で活躍するギタリスト・SAKIが頭を振りながら極悪リフを刻むなか、初出演の架神がV系メタルコアの矜恃を掲げて全力で咆哮する姿が頼もしい。いつの間にかバットを持ってオーディエンスを焚きつける煽り要員に変貌したSORAとBikkyが暴れ回り、「People = Shit」でAllenがドラムソロパートをキメるなど、血湧き肉踊るメタル・パーティを満喫した。
続いてSakura(gibkiy gibkiy gibkiy / Rayflower / ZIGZO)が率いる「Sakura Session~君がくれたもの~」が始まると、それまでの灼熱空間が一転。赤いシールドが絡みついた黒いドラムセットに座るSakuraのリズムをきっかけに、aie(deadman/Gt)、ミヤ、YUKKEがセッションのように音を重ね、研ぎ澄まされた緊張感が漂う。そこにボーカルを務めるKenが加わり、始まったのはSONS OF ALL PUSSYSの「I love you I need you I fuck you」だ。2002~2006年にKenとSakuraが組んでいた伝説的バンドの再来に、喜びの歓声が上がる。野性的なグルーヴとKenの歌声が生み出す、オトナの色気満載のロックンロールで魅了した。
さらに、COMPLEX「Can't Stop The Silence」のカバーでは、Kenから「低い声が好きだから」と紹介されたDEZERT・千秋がステージに。Kenを意識してか総柄のセットアップで現れた千秋は、恐縮したそぶりを見せつつも、Kenとハモりながらメロウなバラードを歌いあげた。
Kenが「次の曲は……バンドがバラバラになったとか、友だちに会えなくなったとかいろいろあるけど、“また会おうね”っていう気持ちでやりたいと思います」と語り、ギターを構えて呼び込んだのは、当時A9として『PARTY ZOO 2017』に出演していたShou(Verde/Alice Nine.)。今年ソロプロジェクトを始動し、新たな道を歩み出したShouを迎え、夏の名曲「secret base ~君がくれたもの~」がレゲエ風のアレンジで披露された。SakuraのソウルフルなドラムにKenのエモーショナルなフレーズが絡み合い、Shouがしっとりと歌を乗せる。ミヤ、YUKKE、aieの同世代トリオが織りなすサウンドスケープも美しく、込められたメッセージとともに心の奥深くに染みこんでいった。
セッションパートを締め括るのは、「LUNA SEA Respect Session #2」。武道館での『V系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP』のプログラムにもあったことから「#2」となっているのだろうが、今回のLUNA SEAセッションはひと味違っていた。メンバーは、逹瑯(Vo)、HIROTO(Alice Nine./Gt)、Miyako(DEZERT/Gt)、AKi(Ba) 、Shinya(DIR EN GREY/Dr)。スタイリングや立ち姿にリスペクトを匂わせつつ、「CALL FOR LOVE」から「Déjàvu」に繋いでアルバム『IMAGE』のオープニングを完全再現してみせると、セットリストはどんどんマニアックに。
本家LUNA SEAのライブで一度も披露されたことがない「FAKE」、さらに「Rejuvenescence」は現在開催されている再現ライブシリーズでも演奏されていない曲だ。定番曲のカバーでは物足りないというメンバーの熱意を感じるとともに、ニューウェイヴの影響が色濃い華やかな楽曲群は、多彩な表現力を持つ今回のメンバーによく似合う。艶と深みがある逹瑯の歌声と、動きや音色にまでこだわりを感じるHIROTOとMiyako、パワフルな低音でグルーヴの芯を担うAKi。Shinyaは壮麗なドラムセットでエネルギッシュなプレイを見せ、それぞれの個性を活かしたカバーに仕上げていた。ラストの「LAMENTABLE」まで初期曲で貫いた貴重なセッション。その愛情は、奇しくも同日ライブを行っていたLUNA SEAに届いたはずだ。
宴も後半戦となるなか、まだまだいくぞ!とばかりに勢いを加速させたのはAKi。サポートメンバー・YOUSAY(Gt)と加藤貴之(Gt)とともに、SORAがドラムを務めるスペシャル構成で、パンキッシュな「ODYSSEY」からダンサブルな「Free to Fly」と畳みかけ、会場をヒートアップさせていく。
もちろんスペシャルな要素はこれだけではない。切ないミディアムナンバー「ジウ」ではMUCCからミヤが登場して力強いサウンドで背中を支え、さらに「The Inside War」の間奏でKenが登場してギターソロで華を添えたのだ。この共演は、『PARTY ZOO 2016』でも披露されたもの。若手の頃からAKiを知る先輩ふたりが、シドとして結成20周年を迎えるなど確固たる地位を築いているAKiの“今”を改めてサポートしている光景が熱い。AKiの表情からも、響き合う音からも、絆と歴史がたっぷり伝わってきた。
ここで、影でイベントを支えてきたDEZERTが、満を持してステージに立った。SORAのドラムから、Miyako(Gt)、Sacchan(Ba)が音を重ねていき、高まったところで千秋が姿を現すと音がストップ。静寂のなか、アカペラで「Call of Rescue」を歌い始めた。救いを求める悲痛な歌声に、オーディエンスも息を呑んで聴き入る。痛いほどに血の通った言葉と歌と音。それがDEZERTの鳴らすロックだ。そこから「絶蘭」「大塚ヘッドロック」「君の子宮を触る」と、初期のギラついた反骨心が漲るキラーチューンを連発。一面のヘッドバンギングや、通称“横モッシュ”を巻き起こし、フロアをカオスに叩き込んだ。
オーガナイザー・SORAへの感謝や、音楽への想いを語った千秋が、ラストの曲にゲストとして呼び込んだのはKen。かしこまってKenを迎えつつ、「何回だって綺麗事言ってやるよ! それがロックバンドだろ!」と千秋が叫び「TODAY」へ。ありったけの想いを込めて歌う千秋のメロディと呼吸に合わせ、Kenがどこまでも優しい音色で寄り添っていく。先輩/後輩という関係性を超越し、音楽を愛する者同士として共鳴する5人の姿がそこにあった。深い愛情のなかで「♪初めて僕が踏み出す一歩」と歌い切った千秋は、「その一歩、12月27日、日本武道館で確実に踏み出します!!」と宣言して締め括った。
長いイベントも最後のプログラム「Kenにまつわるエトセトラ」を残すのみ。セッティングに時間がかかるということで、幕間にSORAが司会を務めるリズムゲーム大会が開催された。一瞬も退屈させないという彼のサービス精神のおかげで、会場の熱は一切冷める様子はない。
「Kenにまつわるエトセトラ」は、1曲ずつメンバーが交替して、文字通り“Kenにまつわる”楽曲を披露していくスペシャルセッションだ。まずは、さきほど熱演を終えたばかりのDEZERT・千秋、Miyako、Sacchan、SORAが勢揃いし、昴(Royz/Vo)、小柳(夕闇に誘いし漆黒の天使達)という盟友ボーカルを迎えてのL’Arc-en-Ciel「Pretty girl」。ステージ上を所狭しとトリプルボーカルが行き交い、賑やかなパフォーマンスで盛り上げた。
そして、千秋、Sacchan、SORAはそのままに、ギターがミヤ&aieに替わってのL’Arc-en-Ciel「浸食-lose control-」。ダークで緻密な楽曲を、ミヤとaieが音を重ねて表現していくところが興味深い。変拍子を操るSacchan&SORA、シャウトからメロディまで歌いこなす千秋の歌唱も見事だった。
続いてステージに並んだのは、逹瑯、Ken、YUKKE、SORA、足立房文の5人。逹瑯のソロアルバム『非科学方程式』で、Kenが提供した「the love letter」が初披露と相成った。逹瑯の歌声にKenのフレーズとシンセの音が映える情熱的なラブソング。一緒に歌う逹瑯とKenの表情が、ライブで演奏できる日を待っていたことを物語っていた。
ふたたびL’Arc-en-Cielの楽曲に戻り、Shou、[ kei ]、AKi、Shinyaによる「予感」へ。4人それぞれからL’Arc-en-Cielへの深いリスペクトを感じるのはもちろん、同じ時代に活動しつつもあまり交わることがなかったメンバーが並ぶ貴重なセッションだ。どんな方向性であれ、共通するルーツにL’Arc-en-Cielがあるのが面白い。
最後は、逹瑯、千秋、Shouのトリプルボーカルに、Ken&[ kei ]のツインギター、YUKKE&AKiのツインベース、Shinyaが顔を揃えての「Voice」。Kenが奏でるイントロのフレーズで大歓声が湧き、珠玉のメロディを3人のボーカルが歌い繋いでいく。SORAにMiyako、Sacchanがイベントグッズを持って乱入し、ステージ上は完全にお祭りモード。ピースフルな空気が会場中を満たし、終演を迎えた。
SORAが「猛獣のみなさーん!」と出演者全員をステージに呼び込んでの記念撮影を終え、感謝を述べたあと一本締めで大団円……かと思いきや、いたずらっ子めいた表情のKenが「まだ時間あるの?」と発言。「『Pretty girl』もう1回やればいいんじゃない?」というアイデアから、想定外のアンコールが始まる展開に。改めて全員勢揃いでの「Pretty girl」が、ラストナンバーとして贈られた。「Pretty girl」セッションは若手寄りのメンバーが揃っていたため、演奏して盛り上げる後輩たちを温かく見守る先輩たちという構図が生まれていたのが微笑ましい。発案者のKenも楽しげに各メンバーと絡み、「SUMMER PARTY」というタイトルどおり、すみずみまで笑顔が溢れるエンディングとなった。
コロナ禍で一時的にライブという現場そのものが奪われ、アーティスト同士縦横の繋がりも希薄になりかけた2020年代。イレギュラーの先に新しい世界を掴み取った2024年、『PARTY ZOO』と『M.A.D』が復活したことは、エポックメイキングな出来事になるだろう。「あの頃をもう一度」ではなく、これから先の未来に向けて。この夜がさらに新しい“猛獣たち”を呼び寄せ、いつか再び宴の幕が開く瞬間を心待ちにしている。
文=後藤寛子 撮影=西槇太一、冨田味我