「防災は企業にとってコストではない。命を守る組織づくりを」村尾技建(新潟市中央区)でBCPや防災に関する研修、東日本大震災被災者も講演
研修の第1部では、訓練用の人形を用いて心臓マッサージとAEDの使用方法を学んだ
地震や豪雨など自然災害が相次ぐ中、社員の防災意識や救命知識を高めようと、建設コンサルタントや地質調査を手がける株式会社村尾技建(新潟市中央区)が9月3日、事業継続計画(BCP)に関する研修を開いた。防災週間に合わせた取り組みで、今年で3回目。新潟市消防局による救命講習や、東日本大震災で家族を失った講師の体験談を通じ、参加者は「命を守る組織」について考えた。
この取り組みのきっかけは、2022年8月に村上市などを襲った豪雨災害だった。同社は直接被災はしなかったものの調査などのために現場へ赴き、以降、防災に関する研修やBCPのブラッシュアップなどに毎年取り組んでいる。2024年の能登半島地震では社員の安否確認などの場面でその効果が現れ、研修会当日も同社上越支店では大雨の影響を鑑み午前の業務をテレワークに切り替えた。
研修の様子
研修は2部制で、第1部は新潟市消防局による救命措置の講習を実施。講習用のビデオを視聴後、実際に訓練用の人形を用いて心臓マッサージとAEDの使用方法を確かめた。今回は主に現場へ出る社員を対象とし、14人が参加した。今後も全社員が一度は受講できるよう、継続していく方針だ。
新潟市消防局は2016年に「にいがた救命サポーター制度」を創設し、AEDを設置する事業所に協力を呼びかけている。登録事業所は消防からの要請を受け、近隣で事故などがあった際にAEDを現場へ届ける。村尾技建もこの制度に参加しており、実際に出動したこともあった。
一般社団法人健太いのちの教室代表理事の田村孝行氏
田村氏は組織防災について、企業の風土の重要性を説いた
第2部では、一般社団法人健太いのちの教室代表理事の田村孝行氏が講演。田村氏は東日本大震災により、宮城県女川町の金融機関で働いていた長男を津波で亡くしている。当時、避難場所に指定されている高台ではなく、職場の指示で建物の屋上へ逃げたことで、田村氏の長男を含めた12人が犠牲になった。
田村氏は組織における防災について、同調圧力のない企業風土や、企業が良心を持つことなどが重要だと強調。「顧客や従業員に愛情を持って接することが必要。そうすれば、自然と従業員を守る体制や風土が生まれてくる。防災は企業にとってコストではない。従業員のモチベーションの向上や、企業の利益拡大、社会からの信頼性にも繋がっていく」と訴える。
そして「現在、企業が策定してる防災プランは経済的合理性に重点が置かれてる。しかし、従業員の生命を守る計画を作る必要性がある。従業員がいなければ、事業継続はできない」と力説した。
田村氏が村尾技建で講演するのは3回目。同社と協力して組織防災に関するパンフレットも制作している。田村氏は他企業や自治体での講演の際、同社の取り組みを紹介していると話し、「大企業ではBCPは作っているが、実際には運用できないものも多い。組織防災は誰かに任せるのではなく、会社が社員を守ることや自分たちでやっていくという意識が大切。村尾技建では、BCPのプランを作って終わりではなく、日々ブラッシュアップし、実践もしている」(田村氏)と評価した。
【関連リンク】
村尾技建 webサイト
健太いのちの教室 webサイト
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