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【発達が気になる子との旅行】わが家は秋がベスト!パニック、迷子にも慌てない、ヒヤリ体験から見つけた3つの工夫

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【発達が気になる子との旅行】わが家は秋がベスト!パニック、迷子にも慌てない、ヒヤリ体験から見つけた3つの工夫

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

工夫1:心穏やかに過ごすための「時期と曜日」の選び方

わが家が家族旅行に出かけるのは、必ず秋、そしてできるだけ平日を選ぶようにしています。一番の理由は、夏休みなどの繁忙期に比べて人が少なく、周囲の視線を気にせずに過ごしやすいからです。

わが家の長男・次男は知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)、三男も発達がゆっくりです。発達がゆっくりな3きょうだいは、事前に声掛けをしたり、写真や絵カードで伝えるようにしていても、実際に体験することが想像していたことと違うと、不安から大きな声を出したり、泣きだしたりすることもあります。そんなとき、周囲に人が少ないというだけで、親である私たちは精神的に少しゆとりができるのです。

工夫2:「パニックはあって当然」と思うだけで、親も楽になる

そして旅行先では「多少のパニックはあっても当たり前」という心づもりでいます。

言葉で自分の気持ちを説明することが難しい子どもたちですが、最近は何が嫌か分かりやすくなってきたため(音が嫌なら耳をふさぐ、怖いと感じている時は目線が下になるなど)、そのサインを見つけたら、苦手な場所には立ち寄らなかったり、足早に通り過ぎたり。とはいえ、私たち親も無理はしません。「できる範囲で、できるだけの工夫をする」というスタンスを大切にしています。

工夫3:旅の合言葉は「行けたらラッキー」

そして、旅行で最も大切にしているのが、「予定を詰め込みすぎない」ことです。
当日の子どもたちの様子を見ながら、「今日はどこに行く?」「何をする?」と夫婦で相談して決めています。不穏な状態が続くときには買い物を早めに切り上げたり、車に戻って休憩したりすることも。「せっかくの旅行だから」と計画をきっちり立ててしまうと、変更になったときにガッカリしてしまうため、特に夫婦で行きたいなと思っているところについては「行けたらラッキー」くらいの気持ちでいるようにしています。

言葉が話せない長男が旅行先で行方不明に!?ヒヤリとした事件からの教訓

このように、私たち夫婦もできる範囲で工夫を重ねてきました。しかし、どんなに準備をしても、予期せぬ出来事は起こるものです。ここでわが家に起きたとある事件!?を紹介します。

滞在していたホテルをチェックアウトするため、家族みんなで部屋を出た時のことでした。長男りーが、一人で先にエレベーターホールへ向かって行ってしまったのです。後ろから呼びかけた私の声も届いていない様子で、あっという間に姿が見えなくなり、あわてて追いかけたのですが……。

エレベーターの前にはりーの姿がありませんでした。
急いでフロントへ向かいましたが、そこにもりーの姿はありません。観光ホテルだったため、入り口などに従業員の方がいましたが、りーの姿は見ていないといいます。りーはあまり話せないので、困っていても誰かに状況を説明して助けを求めることができません。夫がりーの捜索に走る中、私は次男、三男と一緒に待つことしかできませんでした。

幸いりーは、ホテルの中で見つかりました(チェックアウトした客室に一人で戻ってくつろいでいたそうです)が、私たちは誘拐や事故に遭っていたかもしれないと、とても反省しました。

それからというもの、りーにはGPS端末を持たせるようにしました。以前からりーのリュックサックにはヘルプマークをつけるようにしていましたが、一緒にいるときには大丈夫だろうとつけていないこともあったため、りーとの外出時にはヘルプマークの着用を徹底するようにしました。リュックサックは置き忘れたり、感触を嫌がっておろしてしまうこともあるため、気をつけて見るようにしています。

また、長男りーは夫、次男かーと三男おーは私と、それぞれメイン担当を決め、子どもから離れるときには必ずお互いに声をかけ合うことを徹底して行うようにしました(りーはまだパニックになるとその場にしゃがみこんだり、よっぽど嫌だと寝転がったりすることもあるため、抱えることができる夫に担当してもらっています。かーとおーは言い聞かせたり、動き出すと気持ちを切り替えられることも多いため私が担当です)。

今回は、旅行でのヒヤリとした体験と、そこから生まれたわが家の対策についてお話ししました。この経験が、同じように悩むどなたかのヒントになればうれしいです。

執筆/かしりりあ

(監修:初川先生より)
発達ゆっくりな3きょうだいを連れての年に一度の家族旅行の工夫とヒヤリとしたエピソードをありがとうございます。「家族旅行は秋に行く」という工夫からして、なるほどと思いました(夏休みのあの独特な空気感から、家族でどこか思い出づくりに出かけなければと思ってしまう方も多いのではと思いますが、なるほど、むしろ秋を狙って……と新鮮に感じました)。どの工夫、心構えも、こうして改めて読んでみると、本当にそうだなと感じ入る読者の方も多いと思います。遠出場面のみならず、日々の生活の中でも活かしていける視点でもありますね。

さて、お子さんの特性として、ルーティンを好み、旅行はあまり得意ではない子もいると思います。その場合には無理して旅行を検討せずとも十分です。ただ、たまに、年に一度程度、日常の生活圏より少し遠くに行ってみる、日ごろ経験できないことをしてみる。それも可能であればお子さんにとっても、家族としてもとてもよき時間・体験になると思います。うまくいかないことがあっても、のちに「あの時、大変だったよね~」と笑い話として扱える程度の冒険具合で、お子さんとの楽しい遠出・旅行ができるといいですね。今回のように子連れ旅行経験先輩保護者の経験談は参考にすることができるのでありがたいですね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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