【北海道の郷土料理】祖母の味を復活!15年の歳月をかけて完成した、留萌の絶品ニシン漬け
HBCテレビ「今日ドキッ!」より、選りすぐりの情報をお届けします。
北海道で50年以上続くお店にスポットをあて、愛されている理由を探るコーナー「ザ・ロングセラー愛されるにはワケがある」。
今回は、”名人”とも言われていた祖母が造った、絶品のにしん漬けを復活させようと挑む、田中さん夫妻に注目します。 何度もあきらめかけますが、見事にその味を復活させました。
祖母の漬けた「絶品にしん漬け」の復活に挑戦!
江戸時代後期から明治時代にかけて、北海道の日本海側ではにしん漁が盛んになり、浜は活気で溢れました。
留萌もにしんで一時代を築いたマチ。
現在も、かずのこの生産量は日本一を誇ります。
その留萌に、冬の北海道、伝統の保存食「にしん漬け」の老舗がありました。
常連客:「昔ながらのおいしい味。好きなの私。にしん漬けって大好き」
常連客:「ここのにしん漬け食べたら、食べられないよ。よそのにしん漬けは。これは本当に自慢できる」
お客さん:「自分のおばあちゃんも にしん漬け 好きで、それで買ってたりしてたんで」
北海道の郷土料理である「にしん漬け」 。寒い冬を越すための保存食として生まれました。
野菜をたっぷりと使った栄養食です。
伝統の製法を守りながらも改良をかさね、絶品のにしん漬けを作る老舗があります。
昭和6年創業(1931年)の田中青果。
2代目を守るのは、留萌生まれ留萌育ちの田中欽也さん、美智子さん夫婦です。
美智子さん:「ここの地に育った留萌っ子として思うのは、どこのお母さん方もみんなにしん漬けを漬けていたということですね。そういう方が『にしん漬名人』と言われてたのかなと思うんですけど、やっぱり浜の人間が作るにしん漬けは、美味しいと思います」
人気のヒミツは…昔ながらのこだわり製法
田中青果のにしん漬けは、札幌のデパートなどでも販売されている逸品。
人気の秘密は、昔ながらのこだわりの製法にありました。
美智子さん:「ちょっと大きめに切っていくというのが、北海道の伝統の漬物ならではの切り方です。寒い北海道の漬物ゆえ、長く漬けるっていうのがこの漬物の特徴なんですね」
美智子さん:「長く漬けていると、だんだん小さくなってくるので、大きく切って長く漬けるっていうのが、昔ながらのなりわいになっています」
大根に塩とザラメを混ぜたものをまぶし、下漬けをしながら野菜から水分を抜いてきます。
にしん漬けといえば、大根とキャベツ。
和寒産の寒玉キャベツも大きくダイナミックに切って、塩漬けをしていきます。
美智子さん:「漬物ってすべてそうなんですけど、水を出してあげないと傷む。水を出してあげて保存性を高めるというところでは、重石をかけて水を抜くというのは、一番大切な工程のひとつです」
身欠きにしんにもこだわりが
そして、にしん漬けに欠かせないのが、身欠きにしん。
身欠きにしん にもこだわりがありました。
美智子さん:「本乾の身欠きにしんを使います。保存性の問題なんですね。本乾ニシンを使うっていうとこが絶対的なポイントとなってきます」
田中青果の造るにしん漬けは、保存料などは使わない「乳酸発酵」という、昔ながらの製法を守っています。
漬物本来の持つ乳酸菌の力を最大限生かす造りです。
美智子さん:「野菜を下漬けして出てくる水に、良い乳酸菌が生まれてくるんですね。温度管理をするから『本物の乳酸発酵』っていう工程で(乳酸菌が)生まれてくるんですよ」
美智子さん:「保存料で保存を高めるのではなく、自然の力で。手間ひまをかけるってことですね」
地域で愛される「田中青果」のにしん漬けのルーツ
田中青果のにしん漬けのルーツは、二代目社長の祖母にあたる、本間ハマさんが造るにしん漬けにありました。
主に野菜や果物を扱ってきた田中青果でしたが、大手スーパー進出の影響で売り上げは激減。
青果店としての営業が難しくなってきたとき、祖母が造ったあのにしん漬けを造ったらどうかと提案したのは先代社長の常男さんでした。
欽也社長:「うちの親父いわく、うちのお袋のお母さん(祖母)の漬けたにしん漬けが何より美味しい。だからそれを作って売ってこいと言ったのが始まりです」
しかし、生きた乳酸菌を相手に、安定してにしん漬けを販売し続けることはとても難しいことでした。
欽也社長:「挫折ばっかりでね、なんならもう毎度やめようやめようって。明日辞めようと思ったことは何万回もありました」
欽也社長:「作っては食べて作って食べて、ものすごく時間かかって苦労しました」
まだ若かった田中さん夫妻でしたが、祖母の造ったにしん漬けの再現を決してあきらめませんでした。
何度もデータを取り直し、15年もの長い年月の研究を重ね、ついにその乳酸発酵の温度管理に成功します。
欽也社長:「大体15年ぐらいたった頃にね、これが大体思ってたものができたなっていう感触がありまして」
美智子さん:「今でも覚えてるんですけど、うちの主人が私に、『うちはこれで大丈夫だ』って言ったんですよ。『漬物屋としてやっていける』って言ったのが、今でも忘れられなくって…」
欽也社長:「当時、ばあちゃんが作ってたものと同じで味が出ててね。おばあちゃんの味と一緒だとかって言ってくださる方がいらっしゃって、うれしいしいと思ってます」
常連客:「にしん漬け買いました。おいしいですよ。昔の漬物の味を損なわないで今に保ってるっていう感じで。」
常連客:「にしん漬け。時間たってくと、ちょっと酸っぱくなってったりして、そういう楽しみがある。大人になると懐かしいっていうか、その酸っぱさがいい」
常連客:「懐かしさを感じるような、素朴…飽きのこない。実家の母親が漬物好きなので、おいしいから寄らせてもらってます。」
愛されるワケは…
美智子さん:「食べる人たちを絶やさない。『これがふるさとの味だ』っていうことを紡いでいく。『北海道のソウルフードここにあり にしん漬け』ということを、私はずっと語り継いでいきたいと思っております」
【田中青果】
住所:北海道留萌市栄町2
電話番号:0164-42-0858
営業時間:午前9時~午後6時
田中青果のにしん漬けは手軽に作る事が出来る「にしん漬けキット」や札幌のお店でも販売中
にしん漬けをを広めるために、「にしん漬けキット」という商品を販売。
樽に大根からキャベツ、身欠きにしん、そして調味料に至るまですべて入っていて、それを寒いところにおいて、温度管理をしながら自分で育てるというキットで、とても人気です。
にしん漬けキット 13,500円【問い合わせ 田中青果 電話:0164-42-0858 不定休】
また、田中青果さんのにしん漬けを食べてみたいという方は、札幌三越店の地下1階や新札幌のサンピアザ店などでもお買い求めいただけます。
※掲載の内容は番組放送時(2024年12月12日)の情報に基づきます。