新春インタビュー 将来見据え 人づくり 初宿市長 2025年を語る
2025年の幕開けにあたり、本紙は初宿和夫八王子市長に新春インタビューを行った。昨年1月に就任し、今年2年目を迎える初宿市長は、市民の安全安心と、市の将来を担う人材の育成に取り組むことを強調。また市が地元企業の成長や企業誘致を促進したことで確保した財源を、市民サービスに還元する循環を生む考えなどを示した。(聞き手/鈴木健太郎)
-初宿市長が就任してまもなく1年が経ちます。この1年を振り返り所感をお願いします。
「振り返る余裕がなかったというのが正直なところです。就任して実感したのは、課題山積ということ。その中でどのようにそれらを解決していくかを模索し続けてきた1年だったように思います」
-公約に掲げた政策の進捗はいかがですか。
「24年8月から市立小・中学校と義務教育学校の給食費無償化が始まりました。最速で取り組むと公言していましたが、2学期からになってしまった。就任してすぐの第1回定例会に付議をして新年度予算に反映したかったが、その時点では事業の見直しができておらず財源が捻出できなかった。市としては精一杯やったと思うが、スピード感という意味では十分ではなかったと反省しています」
-学校関係では学校給食センター全5館が完成し、小・中学校体育館への空調機設置も始まりました。
「はい。学校や街中で子どもたちや保護者と会った時などに、喜んでいただいているということが伝わってきています。
うれしかったのは、税の標語や絵はがきコンクールの作品で子どもたちが学校給食費の無償化について取り上げてくれたこと。皆さんからいただいている税によって公共サービスが成り立っているという社会の仕組みを、子どもたちがちゃんと理解してくれていたことに感動しました」
-市職員のジョブ型雇用や健康経営なども打ち出されました。
「私が市政運営の根底に据えているのは『人』です。後藤新平の格言に『金を残すのは下、仕事を残すのは中、人を残すのは上』という趣旨の言葉があります。行政で言えば、例えば赤字財政体質を黒字化する、基金を残していく、というのは経営として当たり前にやらなければならないことで、評価の対象にならないかもしれない。仕事というのは建物や新しいサービスを作ったということになりますが、これも中ですから5段階の3ぐらいで標準といったところです。人を残すというのは、市職員や市民の中で将来につながるようなサービスができたということ。そのためにまずは市政を担うメンバーの一人である市職員を育て、残していかなければならないと思っています。ですが組織文化を無視した改革では定着しない。やらされ感のある上からの改革(トップダウン)ではなく、ボトムアップにできるような行政改革、日常業務の中で職員が自分たちで改革ができる市役所にしていかなければならない。
そのために今、事業の見直しについても、時間はかかっても1人1人と話をしながら課題の本質を見極めることができるような進め方をしています。トップが誰であれ自ら考え、市民にとって最適なサービスが提供できる職員や組織にしていかなければならないと思い取り組んでいます」
新たな賑わいの創出
-市内で進行中の開発事業等の進捗状況についてお聞かせください。
「26年度の供用開始を目指す八王子駅南口集いの拠点をはじめ、川口土地区画整理事業、いちょうホールの大規模改修などは現在の予定通り進んでいます。資材費や人件費の高騰など施工環境が厳しさを増している中で各事業が順調に進められていることに、事業者や近隣の住民の皆様などに感謝申し上げたい。
また市の事業ではありませんが、今春には道の駅八王子滝山の目の前にイオンモールの第1期分が開業します。道の駅とあいまった形で、滝山地域に新しい賑わいが創出されることを期待しています」
-市長の考える市の課題は。
「経営上の課題としては、既存の行政サービスを継続して提供しつつ、今後新たに必要になるニーズに対応するための財源、特に市税の確保というのが大きな課題の1つだと思ってます。その対策として現在、八王子商工会議所と連携して市内の企業を訪問し、経営課題に対し市がお手伝いできることがないか話し合う機会を設けています。また市外からの企業誘致にも取り組んでおり、市内企業の成長と発展、そして市外からの企業誘致を進めることで生まれる雇用と、雇用により活性化する消費活動によって市税収入を確保し、それを市民サービスに還元できるような循環を生み出していきたい。
2つ目の課題は市内の賑わい。八王子の観光面で言えば今は高尾山を中心としたインバウンド効果がめざましいですが、この集客力・経済効果を市内全域に広げていきたいと考えています。
3つ目はやはり人材の育成です。子どもたちはもちろん、私たち大人、市役所の職員も含めて、将来の八王子を担う人材の育成というのを広い形で進めていき、そうした取り組みを通じて八王子を持続ある形で成長に結び付けていければと思っています。
そして、これらすべての土台にあるのは安全安心です。安全で安心して暮らせる八王子というものを官民ともに市全体で作り上げていかなければと考えています」
-最後に市民へのメッセージをお願いします。
「新しい年が皆様にとって安全で安心して暮らせる1年であることを心から願っております」