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3歳自閉症息子、水族館が怖くて逃走!小1の夏休みをきっかけに楽しめるように!?

LITALICO発達ナビ

3歳自閉症息子、水族館が怖くて逃走!小1の夏休みをきっかけに楽しめるように!?

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

ある時突然、水族館で逃げ出すようになった

特別支援学級の情緒クラスに在籍している長男けんとは、現在小学3年生。ASD(自閉スペクトラム症)と3歳の時に診断を受けました。

けんとが赤ちゃんの頃から、動物園や水族館など、いろいろなところに遊びに行っていました。生き物に興味がある様子ではなかったのですが、いつか興味を持つのではないか……と、期待を込めてのことでした。

しかし3歳の頃に水族館へ行った時、興味を持つどころか水族館を怖がりだし、声をあげながら暗闇の中を光のあるほうへとダッシュしたのです。抱っこして連れ戻してもすり抜け、光のほうへとダッシュ。それ以来、水族館を怖がるようになりました。

大ピンチ!親子遠足の行き先が水族館…

水族館から足が遠のいていたのですが、年少の時にけんとが通っていた発達支援施設の親子遠足の行先が、まさかの水族館!けんとが遠足を楽しむ姿を思い描くことができず、心配で先生に相談しましたが、とりあえず参加することにしました。

遠足前、下見をしにその水族館へ家族で行くことに。すると、けんとは、外の展示エリアにはいられましたが、屋内の暗いエリアは怖がって早歩き。当時、エレベーターにハマっていたこともあり、エレベーターを見つけてはそこから動かなくなってしまいました。

遠足当日……。どうなるのだろうと心配していましたが、下見をしたことや、お友達や先生方と一緒だったこともあるのか、家族で行った時よりは落ち着いて過ごしているように感じました。

暗いエリアは私と早歩き。下見で気に入ったエレベーターや、けんとが大丈夫な場所で友達が来るまで待機。水族館を楽しんではいないようでしたが、遠足は楽しそうに過ごし、何とかみんなとほぼ同じスケジュールで見て回ることができました。

年に1度ペースで行く水族館の過ごし方

次男ゆうきは、動物園や水族館が大好きです。ゆうきに大好きなものを我慢させるのも可哀そうだなと思い、年に1回程度、水族館に行くことにしています。

けんとは水族館に入場したら、親の1人と明るいエントランスや、外の展示エリアなど、けんとが安心して過ごせる場所を探し、そこにいてもらいました。ゆうきともう1人の親が屋内エリアへ行き、1周したら親が交代(弟は2回見る)。

けんとは水族館へはそもそも行かない……ということもできるのですが、いつか兄弟で一緒に回れたらという希望を込めて、水族館の中のけんとのいられる場所で楽しく過ごしてもらい、大丈夫なエリアを広げていきたいと願っていました。

そもそもなぜ、水族館が怖いのか理由が知りたかったのですが、けんとは構音障害がある上に、お話しがほぼできなかったので、親が推測するしかありません。大きな音や初めての音が苦手なので、ショーなどを見る際はイヤーマフを持っていきました。ステージからは遠く、すぐに抜け出せる場所に座り、怖そうだと感じたらすぐに一緒に会場を出ました(小3現在。最近は本人に確認して「ショーは観ない」と言ったら観覧しないようにしています)。

そして毎回、帰り際に家族みんなで一緒に売店へ行き、子どもたちの食べたいもの(アイスやかき氷など)を食べて帰ります。がんばった少しのご褒美として、「楽しかった記憶」を残せるように……と願ってのことです。

イベントで遂に水族館を克服!?

小学1年生の夏、家族旅行で、初めての水族館へ行きました。すると、イベントでスタンプラリーをやっていました。けんとは魚に興味……という訳ではなく、スタンプラリーに興味をもったのでやってみることに。楽しそうに自らすすんで水族館の中をスタンプを探して歩きました。さすがに一番真っ暗な展示エリアには入れませんでしたが、ほぼ制覇!本人も満足そうでした。

そして小学2年生の夏に行った水族館では、ついに!全部のエリアを見てまわれるようになったのです。しかも、魚によっては自分から興味を持って水槽の近くに行き、観察する姿も。帰りはもちろん、楽しみにしているご褒美デザートタイム!食べたがっていたかき氷をうれしそうほおばっていました。

8歳になった今…水族館を楽しめるように

小学3年生の7月。初めての水族館へ行ってきました。結果は……今回も全部のエリアを制覇!しかも、たくさんの水槽を、食い入るように観察し、楽しむ様子が見られました。

けんとは今も言葉で上手く説明できないので、水族館のどんな部分が苦手なのか……細かいところまでは分からないのですが、年齢が上がるにつれ、いろいろな経験を重ね、「水族館は怖い場所ではない」ということを感じ始めたのかもしれません。

水族館を怖がっていた3歳の頃は、普段よりも過敏さが増し、出口が見えない暗闇の施設が怖くなり、パニックを起こしたのかなと、今となっては思ったりします(あくまで予想ですが)。

水族館が大丈夫になった決定的な出来事は、やはりスタンプラリーだったと私は感じています。スタンプラリーを通して、本人が自ら行きたい!と思えたのが、何よりの克服方法だったのだと思います。私にとっても貴重な経験の1つとなりました。

執筆/ゆきみ

(監修:初川先生より)
けんとくんが水族館を楽しめるようになるまでの歴史のシェアをありがとうございます。水族館を好むお子さんが多いですが、けんとくんのペースを大事にされ、そして少しずつ慣れるように、また楽しい思い出となるように「ご褒美」のアイスなどを設定するなどゆきみさんの心遣いがとても素敵だなと感じました。
水族館は改めて考えてみるに薄暗いエリアが多いところではありますね。幼い頃はあまり気づかなかったとしても、自分で動けるようになってからは、あえて薄暗いほうへと進む意味がよく分からない(むしろ怖さが勝る)ということがあったのかなと感じます。魚そのものへの興味、薄暗くても安全だという環境自体への安心感、またスタンプラリーなどコンプリートしたいと思う強いモチベーションなどによって徐々に薄暗さや先の見えない(見通しの立ちにくい)不安感が相対的に小さくなったのだろうと思いました。

ところで、スタンプラリーやクイズラリーというものが子どもに与える魅力ってすさまじいものがあるなと感じます(笑)。難しめの博物館(何から見ていいか分かりにくい、ちゃんと見ようとするならちゃんと解説を読まねばならず興味関心が薄い場合には解説読む前に心が折れそうになる)でも、そうしたラリーがあると子どもは嬉々として取り組むことが多いなと感じます。宝探し感といいますか、過ごし方が分かりやすいのもよいのだろうと想像しています。そんなちょっとした工夫でその環境へのコミット具合が大きく変わるということがとても示唆に富んでいる(日常生活や学業でも応用したくなる)と感じます。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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