中島颯太「FANTASTICSで『夢者修行』に回って、プロの世界って厳しいんだと、最初の壁にぶち当たったとき」#18歳のころ
著名人の方々に、自身の18歳のころを振り返っていただく連載企画“18歳のころ”。大人と子供の狭間でもある18歳は、未成年から成年年齢に変わる歳でもあり、多くの人が高校を卒業して新しい道を歩むタイミングでもあります。憧れのあの人の18歳のころを知ることで、これからの人生を送る上でのヒントを見つけられるかもしれません。
今回は『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』に出演したFANTSTICSの中島颯太さんが登場。仕事を始め、思い悩んだ時期だったという18歳の頃を振り返ってくれました。
【写真】中島颯太の撮りおろし中島颯太の18歳のころ
――18歳の頃を振り返って、印象的なことはありますか?
FANTASTICSのボーカルになったのが17歳で、18歳のときに「夢者修行」として全国を回って、自分の中ではすごく難しかった時期でした。実力も経験もない中でボーカルとして先頭に立たないといけなくて、毎日パフォーマーから「もっとこうしよう」「自分たちはプロなんだよ」と言われ続けて。その頃はまだ(八木)勇征くんのネガティブさもあった時期だったけど、僕はそれをプラスな考えに変えられるくらいポジティブだったので、今思うと支えあって頑張っていたなと感じますね。
――大変なときでもポジティブさはキープできていたんですね。
キープできていましたね。なんでなのかはわからないですけど、「見返してやろう」という感覚がすごく強くありました。でもそれ以上に楽しめばいいやんと思えていたのが、今にも繋がっているんだろうなと思います。今はあんまり悩まないですし、ポジティブな自分なんですけど、そのときは相当悩んでいたし、唯一キツかった時期だったんじゃないかなと思いますね。プロの世界って厳しいんだと、最初の壁にぶち当たったときでした。
――その壁はどう乗り越えていったのでしょうか。
もう、乗り越えるしかなかったんです。毎日ステージがあって歌わないといけないし、落ち込んでる場合じゃないなって。乗り越えられたからよかったですけど、このポジティブさがなかったらそのまま潰れていてたかも知れません。同級生は大学に行ってすっごく遊んでいたので、その差もすごかったんですよね。でも将来、絶対に楽しいことがあると思いながらやっていて、その経験があって今を楽しめているのかなと思うと、18歳の自分をハグしてあげたいですね。
人と比べるんじゃなくて自分が好きなものに向かって邁進してほしい
――もし18歳の自分に何かを伝えられるとしたら、声をかけてあげたいことはありますか?
今、自分の好きなものが全部仕事になっていたり、形になってきているので、「そのままでいいからへこたれるな。好きなことをとことんやれ。そのポジティブさは残さず、みんなに感謝をしろ」と言いたいです。
――成人した20歳のときに、大人になったなと感じたことはありますか?
性格や感覚的には変わらなかったんですけど、レモンサワーを飲んだ瞬間にLDHの人になったな!と思いました。あれが一番大きかったですね。LDHに入って、レモンサワーを初めてHIROさんと乾杯させていただいたときに「これだ!」と感じました。
――初めてのお酒もレモンサワーでしたか?
レモンサワーでした。20歳の誕生日がFANTASTICSのツアーか、イベント中だったので、メンバーみんなでカウントダウンして乾杯しようとしていました。でもみんなちょっとルーズで、「早めに出かけたい」と言っていたのに全然出かけてくれなくて。コンビニにいるときに12時を迎えちゃって「もうなりましたよ!」と言ったら、そこでみんなに「おめでとう!」と言われましたね。それもいい思い出です(笑)。
――18歳の読者たちにエールをお願いします!
後輩でも18歳以下の子がいっぱいいるんですけど、本当にしっかりしているし、いろいろな仕事をしている方がいて。みなさんの周りにも夢があって、好きなことをやっている人がたくさんいると思うんですよ。だから、「そこを見て焦らなくていいよ」というのを18歳のみなさんには伝えたくて。誰かと比べて「自分はできてないかも」と思う方もいらっしゃるかもしれないですけど、自分は自分のままでいいし、34歳や50歳から輝く人もいると考えると、これから先はまだまだ長いので、人と比べるんじゃなくて自分が好きなものに向かって邁進してほしいなと思います。
大地くんみたいな人になりたいと思って過ごしています
――7月4日には中島さんが出演した『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』が公開されます。昨年ドラマが放送され、話題を集めましたが、映画化が決まった際はどんな思いがありましたか?
ドラマを撮っているときは映画化が決まっていなかったので、もうびっくりしました。脚本を読むまでどんな感じなんだろうとすごく楽しみにしていたんですけど、ちゃんと『おっパン』で、本当に平和で、かつ新しいキャストのみなさんも全員が魅力的でいい人しかいなくて、こんなに素敵な作品はないなと思いますし、やっぱり「好き」という気持ちっていいなと改めて感じるようなシーンばかりで。トータス松本さん(演じる鎌田陽一)のセリフとかはすごく心に響く方がいるだろうなと思ったので、ぜひ映画館で観てほしいです。
――改めて、中島さんが演じる大地の魅力はどういうところだと思いますか?
(原田泰造さん演じる)沖田誠に対してもそうですし、今回は曽田(陵介)くんが演じるバイト先の店長・佐藤さんとか、いろんな人に対して接するときの態度の差がないですし、自分がしっかりあるからこそ人に対しても余裕があるんです。それに大地くんは好きなものを届けているだけだけど、それでいろんな方が変わっていくので、大地くんがいるかいないかで『おっパン』という作品は全然違うものになるんだろうなと思いますね。僕も大地くんみたいな人になりたいと思って過ごしていますし、人のいいところを見つけたり、いろんな人に対して心から尊敬した上で接しているのは、似ている部分じゃないかなと思います。連続ドラマ単独出演作品で演じたのが大地くんだったので、今後もお芝居を続けていく上で初心に戻れる五十嵐大地という役があるのがすごく誇らしいです。
――映画版ならではの魅力を感じたことはありますか?
ドラマ版はみんなにとって頼りになる太陽的存在の大地くんだったんですけど、映画版は(東啓介さん演じる)パートナーの円先輩と遠距離結婚になって、すごく寂しそうで何にも手をつけられないときもあって、そこはドラマのときとはまた違った表情が出ていると思います。泰造さんも「大地くんかわいい」と言ってくださっていました(笑)、「人間味を知れてよかった」ともおっしゃっていたので注目してほしいですし、その寂しさをどう乗り越えようとするかがストーリーに表れているので、最後まで楽しんで観てほしいなと思います。
役があるからこそ言えるセリフがあるのもすごく楽しい
――1年ぶりに演じたことで、ご自身の変化を感じることはありましたか?
ちょっと緊張しましたね。1年経って爽やかさが残っているかなと思いましたし(笑)、別の撮影で赤髪にした期間もあったので、そこからまた黒に戻して。でも「もうちょっと茶髪のほうが1年後っぽいかも」ということになって、また染め直したりして、そこはこだわって監督やプロデューサー陣とも話しましたね。みなさん、『おっパン』への愛がすごいので。でも考えてみるとこの色でよかったし、髪型も含めて大地くんが戻ってきたなと思いました。
――この作品では大地と原田泰造さん演じる誠の関係性が印象的ですが、原田さんとはどんな関係性なのでしょうか?
ずっと平和、みたいな感じです。今日も取材でお会いできることがすごく楽しみでしたし、年下から言うのはおこがましいかもしれないんですけど、お互いの相性がいいと思っていて、泰造さんもそう言ってくださっていて。泰造さんがボケたことに対して、これは絶対にツッコミしたほうがいいなというときがわかるようになってきたので、その関係性ができているのが嬉しいですね。昔からテレビで観ていた方で学ぶ部分もありますし、お互いにツッコミあったり、笑い合ったりできる関係がありがたいなと思います。
――1年ぶりの撮影でもすぐにそういう関係に戻れたのですか?
すぐでしたね。泰造さんは1年空くと身構えちゃうタイプだったらしいんですけど、僕が積極的に話しかけたのもあって、それが一切なかったとおっしゃっていましたね(笑)。「そうやって来てくれるから嬉しい」と泰造さんに言っていただいたときに、よかったなと思いました。
――俳優のお仕事が続いていますが、演技の面白さはどういうところで感じますか?
自分の人生は1回だけだけど、その中で味わえないであろう人生を役で経験できた上で、こういう『おっパン』みたいなメッセージ性がある作品を届けられるのはこの上ない幸せだと思いますし、役があるからこそ言えるセリフがあるのもすごく楽しいです。
勇征くんとは自分にないところを補い合っている関係
――アーティスト活動に還元できていると感じることはありますか?
すごくあると思いますね。勇征くんもそうなんですけど、ボーカル二人ともがいろんな役を演じてグループに戻ってくることで、歌うときの表情だったり表現の仕方が変わったと思っていて。曲の世界観一つ一つを演じ分けられたり、バラードのあとにアップテンポな曲があっても二人ともパンッと切り替えられるのは、役者業をやっていることが少なからず影響しているんじゃないかなと思いますね。
――ボーカル面でも演技面でも、ともに成長できる素敵な関係なんですね。
勇征くんとはお互いに、自分にないところを補い合っている関係で、今はお互いにお芝居をやっていて、勇征くんも僕の作品を全部観てくれていますし、『おっパン』の映画も絶対に行くと言ってくれていて。そうやってお互いに「ここのシーンよかった」と言える関係って、なかなかないんじゃないかなと思うんです。ボーカリストにはそれぞれの世界観があると思うんですけど、僕たちはお互いのやりたいことや好きなことを知っていて、「よりFANTASTICSらしいものにするにはどっちを優先するか」とか「こうしたほうがいいよね」と話し合えているので、本当になかなかない、運命的な出会いをしたなと思います。
――今作はアップデートがひとつのテーマになっていますが、中島さんが新たにアップデートしたいことは?
楽器をもうひとつくらい挑戦したいなと思っています。ピアノ、ギター、そして役でドラムもやらせていただいて、自分なりにかなりできるようになって。昔からジャズをやっている人の動画を見るのが好きで、ずっとサックスをしたいと思っていたんですけど、まだ踏み出せてないのでしてみたいですね。もしできるようになったらライブの演出でも活かせそうだなと思います。
PROFILE
中島颯太
1999年8月18日生まれ、大阪府出身。ダンス&ボーカルグループFANTASTICSのボーカル。グループとしては初の単独アリーナツアーを昨年7月に完走。俳優としても活動しており、主な出演作にドラマ「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」(東海テレビ)、映画『逃走中 THE MOVIE:TOKYO MISSION』、映画『顔だけじゃ好きになりません』などがある。
『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』7月4日(金)全国公開
ゲイの大学生・五十嵐大地(中島颯太)との偶然の出会いによって、時代遅れの“昭和脳”から令和の価値観にアップデートしつつあった、 “おっさん”・沖田誠(原田泰造)52歳。オタ活のためパートから本社勤務の正社員になった妻・美香(富田靖子)。二次創作のBL同人活動をしている、大学生の娘・萌(大原梓)。そして、メイクや可愛いモノ好きである自分を解放し、不登校から復帰した高校生の息子・翔(城桧吏)。そんなそれぞれの「好き」を謳歌する4人の家族関係は順調に見えていた。
そんなある日、彼ら「沖田家」の面々に新たな“アップデートタスク”が立ちはだかる。
果たして、彼らはそれぞれのタスクを攻略し、更にアップデートさせることはできるのだろうか!?
https://gaga.ne.jp/oppan-movie/
取材・文/東海林その子
撮影/三橋優美子