現地在住者に訊く世界のリアル…ドイツ・ベルリン篇 #1 飴鞭パない超名門Berghainのスゴさ&人生変わる奥深きテクノ体験
世界のことを知るならやっぱり現地で暮らしている人に聞くのが一番! ということで聞いてみました世界のリアル! 今回は万劫末代まで語られる永遠のテクノの聖地、世界中のテクノラヴァーが集うドイツ・ベルリンをフィーチャー!!!!
ADE(Amsterdam Dance Event)のついでに寄ったが最後、深淵なるテクノの世界、深い深い沼にどっぷり浸かって聖地ベルリンに移住したTokyo CozyのSoichiroさんにインタビュー。ドイツのクラブシーンは? 人気DJは? やっぱ男気ゲルマンテクノ? さらには物価に政局、若者の流行まで根掘り葉掘り聞いてみました! ナウなベルリン最新事情、行きたい人は必読。行けない人も意外なドイツのことわかります。
#1はベルリンのクラブ事情について……日本では考えられない飴と鞭、名門の名門たる理由とは? やっぱりあのクラブはスゴかった!!!!!
【Soichiroプロフィール】
ベルリンと東京を拠点に活動するカルチャー・コーディネーター。Tokyo Cozy所属。東京ではテクノパーティ「TOHO – 東方良音 -」を主宰。JakoJakoやBLANKAなど、ヨーロッパの注目アーティストを招聘し、国内の次世代テクノシーンとヨーロッパの先鋭的な才能をつなぐプラットフォームを構築している。ベルリンでは、DJのツアーコーディネートを軸に、ヨーロッパとアジアをつなぐエージェントとして活動。過去にはULTRA JAPANやRED BULL AIR RACEのマーケティングに携わり、カルチャーとビジネスの両面から音楽シーンに携わっている。
@so_tokyocozy / @toho_tokyo
――ドイツのクラブシーンはどうですか? やっぱりBerghainが一番人気?
Soichiro:そうですね。それはみんな認めているところだと思います。もちろん好きじゃない人もいますけど。
――Berghainで人気のDJは?
Soichiro:たくさんいますけど、それこそオリジネーターのBen KlockやMarcel Dettmannはまだまだ健在ですね。DVS1やOscar Muleroもそうですがレジェンドは本当にDJヤバいです。今の世界的なテクノのトレンドど真ん中というわけではなくてもスゴいものはスゴいみたいな。Ben Klockを日曜のピークタイムに見た時はやばかったですね。次のDJがRØDHÅDだったのですが、自分のプレータイムが終わった後も、もうちょっとやるわ!という感じでB2Bを始めました。まさに神々の遊びでしたね。
――Berghainは日曜日が人気? ピークタイムは何時?
Soichiro:日曜日の20〜24時がメインタイムですね。土曜日の0時からずっと開いていて、DJのスロットは大体4時間ずつで、一番盛り上がるのがその時間です。あとはその後、深夜を超えて(翌朝7時頃の)クロージングまで続きますね。
BerghainのDOOR
――音的には硬質な“ザ・テクノ”って感じですか?
Soichiro:ミニマルなスタイルのイメージが強い大御所のDJたちも、やっぱり時代にアジャストしてる感はあって、様々なスタイルの新譜も積極的に使っている感じがしますね。基本的には頑なにキックで押していくストレートでピュアなテクノですが、ミニマルという印象は受けません。例えばBerghainの大御所レジデントであるBorisが一曲目をSkrillexで入るなんて時もありました(笑)。めちゃくちゃかっこよかったですけど。
BerghainはBen KlockやMarcel Dettmannが作った雛形(スタイル)が根底にありつつ、5年ぐらい周期でトレンドが変わるみたいですね。Ben Klock、Marcel Dettmannの後にRØDHÅDら次の世代が出てきて宗教的、ゴスなテイストが流行ったり、今はそれこそDAX J、JakoJako、Marlon、Fadi Mohem、Yanamaste、などなど若い世代の人気アーティストもたくさん出ていますね。
――Berghainにはどんなお客さんが来ているんですか?
Soichiro:テクノ好きはもちろん、(Berghain特有の)“体験”を求めている人が多いですかね。あとはもはや観光地なので、毎週末世界中から多くの人が遊びに来ていて完全に坩堝です。Berghainに行きたいがためにベルリンに住んでいる人も多いです。ただ、Berghainはエントランスでお客さんを選別していて入れないこともあって、それがイヤな人は行かないですね。3時間並んで入れてもらえない、みたいなこともザラにありますから。
――それはどういう基準で入れないんですか?
Soichiro:それが謎なんですよ。僕も何度か弾かれたことがあるんですけど、基準がマジ謎です。(見た目が)イケてるから入れるわけでもなく、クラブの中には至って普通の人もたくさんいます。特にピークタイムは入れる確率が50%ぐらいで、肌感的にはいかにも観光客みたいな人や音楽に向き合う感じの服装じゃない人は(入るのが)難しい気がします。普段BerghainでプレーしてるDJですら、普通に並んで入ろうとしたら弾かれたって言う話も結構聞きます(笑)。
Berghain
――クラブ内はどんな感じですか?
Soichiro:超ピースです。稀に事件もありますけど、僕はBerghainほどピースな環境はないと思いますね。東京のクラブにはない感じ。「自分が自分のままいていいんだ!」、「俺が俺のままでいられる場所はここ以外ない!」って感じで、とにかくフロアにいるみんなが自己の解放に向かっている感じがします。
――それは例えばクラブ内が暗いからとかではなく?
Soichiro:クラブ内は暗いと思われがちですけど、そんなに暗くはないです。ドイツのクラブ=武骨で暗い、コンクリートジャングルみたいな印象がありますけど、それはある意味そうだけど正解ではなく、LEDはないけどライティングで一気に明るくなったり、視認性も全然あります。ストイックすぎる感じはないですね。
あと、日本のクラブと違うのは店内撮影禁止。Berghainは「クラブ内で起きたことはクラブ内だけにとどめておけよ」って感じなんですよ。そもそもゲイクラブが発祥なのでそういう文化が残っているということもあるかもしれません。ヨーロッパの価値観も元来“パブリック”と“プライベート”の境界が明確で、ヌーディストビーチがその最たるものですけど、クラブもそのマインドセットがあって“店の中は解放の場”、“一歩外に出たら店内のことは話さない”みたいな感じ。それだけにみんな自由なんですよ。しかもVIPもないですし、一流のDJもフロアで踊っていて使うトイレも同じ。お客さんと一緒に並んでますし、平等というかフラットな空気ですね。
そして、お客さんを楽しませようという空気もスゴい。ハッピーにさせてくれるし、ホスピタリティーのレベルがめっちゃ高いです。エントランスで弾かれることもありますけど、入ったら本当に最高で飴と鞭がちゃんと設計されている。弾かれることがあるからこそ入れた時の喜びが倍増するんですよね。
――ベルリンのクラブの醍醐味、魅力は?
Soichiro:テクノって全然無機質じゃないし、むしろ有機質だなと思いましたね。ある意味冷たいものと思ってましたけどあったかいみたいな。僕はベルリンに来て約2年になりますけど、毎週毎週アップデートがあって、今ようやく入口まで辿り着けた感じ。めちゃくちゃ奥が深いです。
あとはベルリンのクラブで初めて感じたのは“解放”というか“存在の揺らぎ”。日本でも音楽を聴いて泣くことはありましたけど、それはあくまで涙腺を刺激するような“感動の泣き”で、そうじゃなくて存在することで泣ける。その“存在の揺らぎ”は今まで感じたことなかったし、それはシンプルに凄いわって思いましたね。完全に人生が変わるような体験で、僕は本当に変わっちゃいました(笑)。
日本でもそういうことができないかなと思ってパーティ(TOHO – 東方良音 -@WOMB)を始めたんですけど、それはベルリンで感じたこと……1,000人が感動するより10人の価値観がアップデートされるパーティを目指してます。テクノはものの見方を変えることができる、東京でも同じような空間が作れたらって思ってます。
渋谷WOMBで開催されているパーティ「TOHO – 東方良音 -」
#2ではベルリンの音楽現状……テクノの街と言われる所以に迫ります!