ガチ予測!【中学入試】2025年「国語物語文」はこれが出る!〔中学受験の専門家が解説〕
まもなく中学入試本番。そこで国語物語文の素材に使われる作品の3つの特徴や「入試に出題される2024年の新刊予想」10冊を発表します。解説をされたのは首都圏中学受験塾で教室長を務めるakiraさん。それでは、いざ!
【中学受験】に役立つ「親子で読みたい物語」8選 2020年度最多出題数を誇る王道作品〜最新出題までまもなく中学入試本番。そこで「国語物語文の素材」に使われる作品の3つの特徴や「入試に出題される2024年の新刊予想」10冊を解説・発表します。解説は首都圏中学受験塾で教室長を務めるakiraさん。それでは、いざ!
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首都圏中学受験塾の教室長をしています。akiraと申します。
寒くなってくると今年もまた入試が近づいていると実感します。
私は毎年この時期に入試に出題される本を予想して、「中学受験情報」のクリスマス特別号に載せています。生徒たちにはクリスマスプレゼントだよと言って配付していますが、それが本当かどうかわかるのはもう少し先になります。
入試問題の素材文には特徴がいくつかあります。これから紹介するポイントを押さえて本を探す視点が身につけば、中学受験対策に必ず役に立ちます。
今回は、入試問題の素材文に使われる作品の特徴を3つ紹介し、3つめの「入試に出題される2024年の新刊」をランキング形式で発表します。
毎年クリスマス時期に配布しているオリジナルの「中学受験情報」クリスマス特別号。画像の一部を加工しています。 提供:akira
①名作からの出題
学校の先生もすべて新作から出題するのは大変です。また、生徒の学習状況を確認する上でも、名作からの出題はうってつけです。
重松清さんの『小学五年生』 や瀬尾まいこさんの『あと少し、もう少し』は毎年どこかの中学校で出題されます。
名作への対策は塾で習ったテキストをしっかりやっておけば大丈夫です。塾で先生が解説してくれた文章を家でもう一度読み直すことで頭が整理されるはずです。くり返し読むことも大事です。
②この2~3年に発売された本からの出題
私はよく「二度出るものは三度出る」と言っています。多くの学校の先生がよいと思った文章ですから、問題の作り甲斐があるのでしょう。
ですから4~5年生の方であっても、今年や来年話題になった本に目を通しておくことは非常に有効です。6年生の皆さんにとっては過去問集をやることで対策できます。みくに出版の過去問集、いわゆる銀本は宝の山です。最新年度の過去問がまとめられているので「一日一文」読めば、かなりの文章が読めるはずです。問題を解かなくても毎日活字に触れることが大切です。
2025年度受験用 中学入学試験問題集 国語編 男子・共学校(中学入学試験問題集シリーズ) みくに出版
以下の記事も参考にして本を手にとってみてください。
③ここ1年で出版(または発売)された新作
中学の先生が入試問題を作るのが夏休み。そのため、前年(2023年)の8月から今年(2024年)の7月の1年間で発売されたものからよく出題されます。
新作から出題するのは、読んだことがない本や塾で勉強していない文で、子どもたちの初見の文章への対応を見たい意図もあるのでしょう。しかし、塾側も対策をしており、新作については模試で出題し、文章に触れてもらうようにしています。
今回は新作に限定して予想します。以前は6年生には年末年始は時間がないので模試を読み直す程度でよいと話をしていましたが、昨年は子どもたちが、配布した「中学受験情報」の予想リストから自分の意志で本を買って読んでくれました。そして見事合格を勝ち取りました。私もとてもうれしかったです。
今日紹介する10冊はどれも大好きな作品です。順位をつけるのは大変でしたが、思い切って独断と偏見のランキング方式で発表します。
2024年中学入試 出題予想ランキング
【出題予想ランキング1位】『透明なルール』
『透明なルール』著/佐藤いつ子、KADOKAWA
ひとくちに新作といっても、毎年多くの本が出版されています。入試問題は中学の先生が作っていますので、先生方に手に取ってもらう必要があります。先生方は多くの本からどうやって選んでいるのでしょうか。
まずはお気に入りの作者の本を選ぶケースが多いのではないかと私は考えています。毎年国語の素材文を見ているとよく目にする作者というのはたしかにいます。
私の感覚では今年一番SNS等でも話題になっている大本命は、佐藤いつ子さんの『透明なルール』です。中学受験ではおなじみの作者です。比較的薄い本なので一気に読めます。
“「だからわたしは、どんな意見であっても、みんなで、自由に、言い合いたい」教室が、静まりかえった。”(『透明なルール』より)
透明なルールこと「同調圧力」がテーマの本です。今どきのSNSなども話題に上がってきます。明文化されていないまさに透明なルールについて登場人物たちが悩み、克服していくストーリーです。体育祭のスローガンを決めるロングホームルームの場面が入試問題として切り取りやすいです。ちなみに私は登場人物では不登校中学生の米倉愛推しです。
【出題予想ランキング2位】『真実の口』
『真実の口』著/いとうみく、講談社
数年前『朔と新』(ラ・サール中、淑徳与野中、浦和明の星女子中、栄光学園中で出題)が話題になりました。いとうみくさんは毎年のように出題されますが、今年の新作『真実の口』は難関校での出題が予想されます。
“……そうだった。七海を呼び出したのは、おれのエゴだ。一人で抱え込むのが怖くて悶々と悩むのが苦痛だから、考えもせずに勢いだけで。けど、いざとなったら尻ごみをした。”(『真実の口』より)
親による子への虐待がテーマです。
「BANされる」「既読」「Ado」「児相」など今どきのキーワードも出てきます。一方、「かぶりを振る」「首肯した」「怪訝そうな」「ひとりごちる」など中学の先生が好きそうな表現も多数出てきます。サスペンスタッチで一気に一日で読んでしまいました。
【出題予想ランキング3位】『ぼくの色、見つけた!』
『ぼくの色、見つけた!』作/志津栄子、絵/末山りん、講談社
最近の出題傾向として登場人物が受験生に年が近い、小学生や中学生の文章が選ばれています。そのほうが子どもたちも感情移入しやすいですし、問題の難易度も適切になります。
何より子どもが主人公だと中学受験国語のメインテーマ、克服と成長を扱いやすいです。テストでは成長の前後の心情変化が狙われます。
“ぼくが思っているほど、人は気になんかしないってことがわかった。”(『ぼくの色、見つけた!』より)
色覚障がいが発覚し苦しむ主人公の物語『ぼくの色、見つけた!』です。登場人物たちが自分の弱みに向き合っていくお話です。主人公は、色覚障がいという共感されにくい悩みを、どのように克服していくのか考えながら読んでみてください。今、人には言えない悩みがある人も勇気がもらえます。そして家族の大切さに気づくでしょう。
【出題予想ランキング4位】『彼女たちのバックヤード』
『彼女たちのバックヤード』著/森埜こみち、講談社
かわいいイラストの表紙ですよね。
“「しんどいときってさ、言いたくもないことを言ったり、したくないことをしちゃったりすんの。あたし経験者だから、そこんとこは、よくわかる」”(『彼女たちのバックヤード』より)
3人ともめちゃくちゃ悩んでいます。ちなみに私は詩織推しです。空気読めないキャラが好きです。
章ごとに主人公が変わる短編集というのも入試では狙われやすい要素です。主人公が変わるのでしっかりストーリーを追いながら読まないと混乱するかもしれません。その分難易度が高いとも言えます。
女の子が主人公の本ですが、ぜひ男子にも手に取ってほしいです。自分とは異なる性別の主人公の本を読むと経験が広がります。
【出題予想ランキング5位】『カラフル』
『カラフル』 と聞くと同名のベストセラー小説、森絵都さんの『カラフル』を思い出す方もいるかもしれません。こちらもおすすめですので機会があればぜひ手に取ってみてください。
今回は阿部暁子さんの『カラフル』です。『ぼくの色、見つけた!』同様、ハンディキャップとどのように付き合うか、とても学びのある一冊です。学級委員を決める場面が前半の山場。入試問題として切り取りやすいです。
“「けど、それでも、私はこれを個性とは言わないでほしい」「私はやっぱり、自分の足で歩けるようになれるなら今すぐそうなりたい」”(『カラフル』より)
『カラフル』著/阿部暁子、集英社
【出題予想ランキング6位】『リカバリー・カバヒコ』
『リカバリー・カバヒコ』著/青山美智子、光文社
学校の先生の中でファンが多いと感じるのが青山美智子さんです。
2024年出題だと『月の立つ林で』は洗足学園中、明治大学付属八王子中、江戸川学園取手中で出題されました。主人公は大人で仕事や家族関係に悩みながら成長していく物語なので難易度は高くなります。
青山さんの作品で2025年入試に出題されそうなのが『リカバリー・カバヒコ』です。じつはすでに2024年の芝中の2回目で出題済みです。そのため少しランキングを下げています。短編集というのも出題されやすい要素です。
本屋大賞7位ということで多くの書店でもキャンペーンされていたので先生方の目についた可能性は高いです。
“ちょっと違うかな。人間の体はね、回復したあと、前とまったく同じ状態に戻るというわけじゃないんだ。”(『リカバリー・カバヒコ』より)
【出題予想ランキング7位】『成瀬は信じた道をいく』
『成瀬は信じた道をいく』著/宮島未奈、新潮社
本屋大賞つながりで、今年の1位、宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』の続編『成瀬は信じた道をいく』も必ず目を通しておきたいです。
今年『成瀬は天下を取りにいく』は栄東中と豊島岡女子学園中でも出題されました。私もすっかりファンになってしまい、成瀬のクリアファイルを愛用しています。受験生には元気がもらえる一冊です(成瀬も受験生です)。まだ読んだことがない方は損しています。中学校の先生もファンが必ずいるはずです。紅白歌合戦のけん玉のシーンが見せ場です。私も成瀬の影響でけん玉を練習しています。
“成瀬は大きなことを百個言って一個でも叶えたらいいと主張してきたが、一個だけじゃなくそこそこ叶えている。途中で投げ出してイラっとさせられることも多いけれど、成瀬なりに咲く花と咲かない花を見極めているのかもしれない。紅白歌合戦に出たいと思ってまいた種は、今夜咲こうとしている。”(『成瀬は信じた道をいく』より)
【出題予想ランキング8位】『ブルーラインから、はるか』
『ブルーラインから、はるか』作/林けんじろう、講談社
本屋大賞のノミネートの発表は2025年2月3日です。残念ながらノミネートを見てからの出題予想ができません。
しかし本屋大賞以外にも中学受験で狙われる文学賞があります。毎年鉄板で出題されているのがちゅうでん児童文学賞です。『みつきの雪』、『ベランダに手をふって』、『シャンシャン、夏だより』、『雪の日にライオンを見に行く』と連続で入試問題に採用されています。今年も注目したい作品です。
主人公が男の子なのでぜひ女子に読んでもらいたいです。国語では他者理解がとても大切です。自分と違う性別の子どもが主人公の本を読むことで他者理解が進みます。
“風馬の背中で、おれの心臓の音が跳ねかえる。バクバクがズキズキに変わるくらい、はげしく打つ。たのむよ、なんとかなってくれ。”(『ブルーラインから、はるか』より)
【出題予想ランキング9位】『王様のキャリー』
『王様のキャリー』著/まひる、講談社
もう一つ、受賞作品を紹介します。こちらは講談社児童文学新人賞受賞作です。昨年話題になった『給食アンサンブル』の如月かずささんも選考委員をされています。子どもたちに紹介したところかなり評判がよかったです。
入試問題は夏休みに作られるので、8月20日という刊行日がすこし気がかりではありますが、入試に出る、出ないはおいて読んでおきたい一冊です。挿絵もあって読みやすいです。eスポーツを題材にした今どきの作品です。おすすめは理王の家でカレーライスを食べるシーンです。『王様のキャリー』のタイトルの意味は最後の最後でわかります。
“「勝生くんって、理王の脚のこと、なにか聞いた?」「え。いや、なにもです」「あの……僕、リオのファンだったから。聞きたいこといっぱいあって、部屋でもずっとゲームの話をしてたんです」”(『王様のキャリー』より)
【出題予想ランキング10位】『ルール!』
『ルール!』著/工藤純子、講談社
工藤純子さんの『ルール!』です。こちらは校則がテーマの小説です。発売日が2023年の10月ということで少しランキングを下げています。
“「スマホ、いりませんから」あたしはそれだけ言うと、くるりと背中を向けて職員室を出た。”
(『ルール!』より)
私学ではもともと校則がそれほど多くはないので私の感覚ではこの物語はずいぶん校則が厳しいなと感じました。文芸部や生徒会が協力するシーンは感動的でよかったです。スマホ使用や頭髪の校則など、学生なら一度は不満に思ったことがある、身近な、感情移入しやすいテーマです。
冬休み・ラストスパートで心がけたいこと
冬休みなどに息抜きで3冊程度なら読めそうです。ぜひ皆さんも合格した先輩たちに続きましょう。
そのためには自分の意志で本を選んで行動することが大切です。人に言われたからやるのでは効果は半減します。自分の意志で決めるのです。そうすると不思議と運を引き寄せることができます。
この中から気に入った本をお守りとして受験会場に持っていってください。そして朝、お気に入りの一冊に目を通して活字に触れておきましょう。入試がその日の最初の活字にならないようにするためでもあります。またお気に入りの一冊といっしょであればきっと心強いはずです。
わずかかもしれませんがこの記事で志望校合格を応援できれば幸いです。