“完璧なゆで卵”の前では卵好きの近藤夏子、ひよっこでした!
日々の天気や街のトレンド、おいしいゴハンに大人の悩み、社会の仕組み・・・1日イチ「へぇ~」なトピックスを。
新進気鋭のコラムニスト、ジェーン・スーが、生活情報や人生の知恵をナイスなミュージックと共に綴る番組。
今月、「卵好き界隈」に一本の衝撃的な研究結果が発表されました。それがイタリアのナポリ大学の研究者らが科学雑誌に発表した「Periodic cooking of eggs」(直訳:卵の周期的調理)。これは流体力学のシミュレーションを使った「完璧なゆで卵」を作る方法を学術的に探ったものです。
論文の中でこう書かれています。
「卵の料理人は黄身と白身の二相構造により、2つの調理温度を必要とするという“難題”を抱えている。黄身と白身を分離させるか、食品の安全性や味の嗜好性を損なう妥協的な温度で調理するか、それが選択肢である…」。
そこでこの研究チームは卵を分離させることなく、2つの温度で「卵白」と「卵黄」を調理することが可能であることを見出したんです。キミだけじゃなくシロミも大好き!研究チーム、グラッチエ!ありがとうございます!
そして卵のことをこう褒めてもいます。
「その豊富な機能性により、消費者の食卓やシェフの厨房で最も重宝される食品であり、最も楽しく、最も用途の広い食材である。実際ヒトの栄養摂取の基本である必須栄養素がほとんど含まれているだけでなく、優れた起泡性と乳化能力、加熱時に凝固してゲルを形成する能力も際立っている」
「卵は物価の優等生」と長く言われてきましたが、卵のポテンシャルはまだまだ引き出せていなかった!私たちの知っているゆで卵は、ヒヨッコだったんです!では研究チームが発表した「究極のゆで卵」の作り方とはどんなものだったのか。
論文では、まず黄身の適切な調理温度が「65度」であるのに対し、白身は「85度」と異なることを明らかにしております。つまり同じ調理法だと、黄身と白身の固さが同じになることは難しいと。そこで研究チームは「流体力学のシミュレーション」を使って、それぞれ適切な温度を加えることを提案しています。
では一体どうしたらいいのか!安心してください。どのご家庭でも試すことができます。
用意するのは100度の湯と30度の湯です。100度で2分ゆで、30度で2分ゆで、100度で2分ゆで、30度で2分ゆで……これを計8回32分間繰り返します!
正直30度のお湯の温度を保つのがかなり手間でしたが、低温調理器を持っている方なら楽にできます。果たして理想的な食感と味となった究極の“ゆで卵”はどんな仕上がりなのか。沸騰したお湯で9分茹でた「ゆで卵」と比較してみましょう。
上が9分、下が究極のゆで卵
9分のものと比べると、究極のゆで卵は黄身がぼそぼそしていなく、ほどよいねっとり感があって、これまで食べたことがない食感です。正直、めちゃめちゃおいしいです。
この“究極のゆで卵”を実際にやるかどうかは、あなた次第…ということではありますが、研究チームは、こう結論づけています。
「周期的調理という、新しい調理法の設計は成功したようだ。すべての卵製品の色、質感、粘稠度の分析は、新しい、凝ったレシピにインスピレーションを与える可能性のある調理実験の成功の最終的な証明にすぎない。このような単純な問題の背後にある科学の知識が、卵を食べるという単純な行為のように、私たちの日常生活のほんのわずかな部分さえも改善できることを証明しているのだ」
きょうも卵に感謝!
(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』より抜粋)