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釜石市と東京大タッグ!海と希望の学園祭 「船出」テーマに未来考え、楽しみ学ぶ

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす


 「海と希望の学園 in Kamaishi」は9、10の両日、釜石市大町の市民ホールTETTOと釜石PITを会場に開かれた。同市と東京大学の連携事業として継続する交流イベントで、今年のテーマは「船出」。船や海にまつわる展示や工作などがあり、子どもたちが楽しんだ。先を見据えた各種研究のかじ取りを担う教授陣によるパネル討論は大人たちの学びの機会に。一緒に「地域の未来」を考えて新たな思考を得たり刺激にした。

 2006年の同大社会科学研究所(社研)による「希望学」釜石調査を機につながり、東日本大震災後は「危機対応学」で研究連携を継続。そうした背景を基に22年に社研、同大大気海洋研究所(海洋研)、同大先端科学技術研究センター(先端研)と覚書や協定を結び、地域社会の発展、人材育成、学術振興に向けて相互交流を続ける。

 展示では同大生産技術研究所(生産研)、先端研などが研究内容を紹介した。社研は遂行中の「測る」をテーマにした研究プロジェクトを会場内で実践。来場者に「測ってみたい」「測ってはいけない」と思うものを書き込んでもらった。その理由や意味、影響などについて聞き取り、意見を交わす場面も。他の人の考えに触れ、関心や探究心をくすぐり合った。

「測る」を切り口にした東京大社会科学研究所の展示ブース


先端科学技術研究センターは災害時避難の補助装置などを紹介


大気海洋研究所の巨大バルーンオブジェは写真スポットに


 海に関する展示はさまざまあり、釜石海上保安部は海洋調査業務の紹介や海上保安官の制服試着体験などを用意。岩手大釜石キャンパスの学生らは三陸に生息する海の生き物に触れられるタッチプールを設け、子どもたちの心をつかんだ。ウニの殻を使ったランプづくり(釜石商工高ブース)、ウニを模した樹脂製のフィギュアを使ったインテリア小物づくり(SASAMOブース)は大人も楽しんだ。

海にまつわる活動やものづくりを楽しむ来場者


海の生き物に触れるタッチプールは子どもに人気


 船や魚にちなんだアート作品づくりを提供したのは、文京学院大の学生9人。ペットボトルのキャップやラベルを使い、環境やリサイクルについて考えてもらう内容にした。浜田幸奈さん(経営学部3年)は「本来廃棄されるもので楽しんでもらえてうれしい」と素直な感想。自身にとっても学びの機会で、来場者との触れ合いを通して「社会とつながってできることをやる」という姿勢、スキルを磨いた。

文京学院大のブースは工作を楽しむ人でにぎわった


ものづくり体験を提供したりチャリティーグッズも販売


 体験活動を楽しんだ大槌町の小國翔太郎さん(8)の夢は“生き物博士”。今一番のお気に入りは町の天然記念物に指定されているトゲウオ科の希少魚「(淡水型)イトヨ!」と胸を張った。そばで笑うのは父親の晃也さん(46)。子どもの興味を引き出す取り組みだと歓迎し、「海がそばにあるのに触れ合う機会は少なかったりする。自然を体感し、たくさん学んでほしい」と見守った。

 「希望の船出」をテーマにしたパネル討論は東京大の玄田有史副学長が進行。大海研の兵藤晋所長、社研の宇野重規所長、生産研の年吉洋所長、先端研の杉山正和所長というパネリストに小野共市長が加わり、長としての組織運営の苦労など、ざっくばらんに話した。

東京大の副学長や4研究所長、釜石市長がトークを展開


 船出には「新しいことに挑戦するというイメージもある」と玄田副学長。「未知の領域に挑む時、ゼロから始める時に気を付けていることは?」と聞くと、4月に就任したばかりの年吉所長は「とにかく始めちゃえばいい」とスパッと言い切った。兵藤所長は「船があるからではなく、行きたいから船を出す。自分から動き出すことだ」と強調。杉山所長は「思いを共有すれば実現する」とし、同じ船に乗る仲間集め、チームづくりを大切にしていると伝えた。

 「不安、悲観主義を持ちつつも歩いて、船を進めたら、何かの出会いで今がある」と語ったのは宇野所長。実は、希望学調査で釜石と関わりがあり、「思想や歴史、哲学といった昔のことが専門なのに…地域に放り込まれ、何をやっていいか分からなかった。これこそ、ドキドキの船出」と振り返った。20年も続く活動や関係性に見いだすことは多かったようで、「(挑戦には)新しい可能性がある」と確信を込めた。

教授らのざっくばらんな語り口を楽しむ聴講者


 市政運営のかじ取り役を担い、船出して間もなく1年となる小野市長。財政再建や持続可能なまちづくりなど挑まなければならない課題は多いとの認識を示した。前向きな教授陣の考えに触れ、「希望学によって住んでいても気づかないことに気づかされ、希望が地域に伝ぱした。小さなネタでも地域にある限り、まちは生き続けられると感じた。失敗が多いほど希望も…」とヒントを得た様子。自身と同じように聴講した市民らが「未来を考えるきっかけになれば」と期待した。

 希望学のプロジェクトリーダーだった玄田副学長。釜石との縁は05年からと長い。「真剣な遊びとしてやろうと始めたのが希望学だったな」と思い返し、ニヤリ。この先も、「いろんな楽しいことに挑戦していきたい」とトークを締めくくった。

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