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【子どものケガ】ホームケアの新常識 「絆創膏を貼らないほうが早く治る」は間違い! 「令和の正しい処置」を専門家が解説

コクリコ

子どもに多い病気やケガへの対処法の最新知識を伝える連載「令和の子どもホームケア新常識」第1回。「傷は絆創膏を貼らないほうが早く治る」という旧常識について、小児科医・森戸やすみ先生が解説。

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【旧常識】 傷は絆創膏を貼らないほうが早く治る」子どもの体調が悪くなったとき、ケガをしたときなどに、親が家庭で行うホームケア。

現代のホームケアの中には、私たち親世代が子どもだったころの手法から改善されたものが多数あります。子ども時代の記憶を頼りに、古い常識のまま子育てをしていませんか?

本連載【令和の子どもホームケア新常識】では、子どもに多く見られる病気やケガへの現代の正しい最新対処法を、小児科医・森戸やすみ(もりと・やすみ)先生が解説。

●森戸 やすみ(もりと・やすみ)PROFILE
小児科専門医。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。医療と育児をつなぐ著書多数。

第1回は「傷は絆創膏を貼らないほうが早く治る」という旧常識について。ホームケアの常識をアップデートして、いざというときに備えましょう。

「傷は乾かしてかさぶたを作る」が常識だった

子どもは転んだり切ったりと、体のあちこちにしょっちゅう傷ができてしまうもの。今の親世代が子どものころは「傷は絆創膏を貼らないほうが早く治る」と言われていましたが、令和の現在、どのような処置が正しいとされているのでしょうか。小児科医の森戸やすみ先生に聞きました。
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以前は「傷は乾かすもの」という知識が一般的で、乾かしてかさぶたを作ることが傷の治療であるとされていました。

ただ、子育て中のママパパならよくご存知かと思いますが、子どもにとって絆創膏は特別な存在。絆創膏を貼ってあげると、お子さんって喜びますよね。子どもを落ちつかせるために、絆創膏を貼ったこともよくあったでしょう。

でも、ずっと貼ったままにしておくと、傷口や皮膚がふやけたりかぶれたり、場合によっては絆創膏を口に入れてしまったり、トラブルの原因になることも。

そんな面もあって「傷は、絆創膏を貼らないほうが早く治る」とより広まったのだと思います。

今の主流は「傷は湿らせて治す」湿潤療法

救急絆創膏を貼らずに乾かすケアより、傷を湿らせて治す「湿潤(しつじゅん)療法」がより良いと医療関係者の間で言われ始めたのが、1990年代後半のこと。今、傷ケアの常識は、この湿潤療法です。

傷を乾かすのとは真逆の考え方で、被覆材(ひふくざい/ドレッシング材)と呼ばれる医療材料で傷口をおおって密閉し、かさぶたを作らずに治します。

被覆材には、水分を吸収する高分子のハイドロコロイドが含まれています。市販品で有名なのが「バンドエイド® キズパワーパッドTM」。2004年に湿潤療法ができる治癒タイプの絆創膏として発売され、一般にも湿潤療法が広く知られるようになりました。今はいろいろなメーカーから類似の絆創膏がたくさん出ていますね。

湿潤療法は、痛みをやわらげ、早くきれいに傷を治す方法です。傷ができると傷口からジクジクした滲出液(しんしゅつえき)が出てきます。透明からやや黄色っぽい体液で、この滲出液には傷を治そうとする成分が含まれています。

被覆材で傷口をおおうと余分な滲出液を吸収し、さらに空気に触れずにしっかりと密閉できるので、滲出液の自然治癒力が十分に発揮されて傷が早く治るのです。

また、傷の表面が空気に触れていると刺激を受けて痛みますが、傷口をおおう湿潤療法なら痛みがやわらぐのもメリットです。

湿潤療法はすり傷のほか、切り傷ややけどなどにも有効です。ただし、樹木のささくれや植物のとげ、さびた金属が刺さって取りきれずにできた傷など、傷口をおおう湿潤療法が向いていないものも。動物や人に嚙まれてできた傷、出血が止まらない場合など、受診が必要なケースもあります。

現代の正しい傷の処置方法とは

お子さんがケガをした場合、少量の血がにじむ程度の傷であれば、まず水道水で砂やジャリなどの汚れを洗い流します。

消毒は傷口を痛める場合があるためせずに、きれいになったら治癒タイプの絆創膏など被覆材で傷口をおおいます。傷痕が残らないように、なるべく傷口の皮膚同士をくっつくように寄せておおうのがポイントです。

被覆材は基本、治るまで貼ったままで構いませんが、その間は赤みやハレ、痛みなど、感染の徴候がないかを確認します。被覆材が水分を含んでふくれ上がっていたり、汚れが気になったりするようなら貼り替えましょう。

市販の治癒タイプの絆創膏を使用する際は、貼り替えのタイミングなど、パッケージに書かれた使い方を参考にしてください。小さいお子さんは、被覆材を誤飲する恐れがあるので、使用には十分な注意が必要です。

治癒タイプの絆創膏がなかったとき、親御さんが食品用ラップやワセリンで傷口をおおったという話を聞いたことがあります。でもラップは密着しないので医療用テープで止めたとしても、はがれやすいのが難点です。ワセリンは傷口を埋めてしまうため、傷口の皮膚同士がくっつかず、治りが遅くなってしまうことも。

応急処置には救急絆創膏を一時的に使って、傷を治すには、治癒タイプの絆創膏の使用をおすすめします。

病院へ行くべき目安とは?

傷口の周囲が大きくハレている、赤くハレている、尋常じゃない痛がり方をするときは、気づいた時点で早急に受診してほしいと思います。犬や子どもに嚙まれた傷からは、多くの細菌が入ってしまう可能性があります。

また、転んでできたすり傷の場合は、土壌に生息する破傷風菌から破傷風になる危険性があります。日本では、破傷風を予防するための4種混合ワクチン(2024年4月以降は5種混合ワクチン)が定期接種の対象となっていますが、未接種の場合、外来の際に必ず医師に伝えてください。

こうした感染症のリスクがあるときは外科の受診をおすすめします。皮膚科や整形外科でも診療してくれる場合があるでしょう。ケガをした場所によっては、眼科や耳鼻科がいい場合もあります。適切な医療機関がわからないときは医療機関に電話して症状を伝え、受診してもいいか尋ねるか、まずはかかりつけの小児科医に相談するのもよいと思います。

【子どものホームケアの新常識 その1】
傷を治すには、「治癒タイプの絆創膏(被覆材)」を貼ったほうが痛みも少なく、早く治る。応急処置として「救急絆創膏」を一時的に使うのもあり。

取材・文/星野早百合

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