Yahoo! JAPAN

【 漫画家塚田ゆうたさん「RIOT」第2巻】 「ZINE」を作る田舎町の高校生3人。「地に足が付いたロマン」に感動

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は12月5日に初版発行(奥付)された漫画家塚田ゆうたさん(静岡県出身)の「RIOT」第2巻(小学館)を題材に。

「月刊!スピリッツ」2024年7月号で始まった連載の第2巻。静岡県松崎町をモデルにしたとおぼしき田舎町で、男子高校生「シャンハイ」「アイジ」が「ZINE(ジン)」を制作する。第2巻では、女子グループからはじき出されたケーコさんが、写真家として加わる。前半はそのケーコさんがグループの4人と関係を修復していく過程が丁寧に描かれる。

自分に引き寄せて考えてみる。若いころ、時に自分が好きなものや自分が得意なものへの思いが、「人間関係の維持」を上回ってしまうことがなかったか。好きなことに耽溺するあまり、周囲が見えなくなったり、後からそれに気づいて後悔したり。いろいろな人を傷つけたり。恐らく、世の中にはこうした経験がある人と、ない人がいる。

経験がない人。それはそれで幸せだ。身近な人とのあつれきに夜も眠れないほど悩んだりしなくていいのは、退屈な日常をやり過ごす上でありがたい。ただ、筆者は「経験がある人」である。ケーコさんと同じだ。

中学生、高校生の頃は、例えばAさんと自分との関係、Bさんと自分との関係、AさんとBさんの関係がそれぞれ、微妙に変化していたように思う。三角形のフォルムが毎日少しずつ違っている。

ここで好きなことに没頭すると、Aさん、Bさんへの気遣いのセンサーが鈍る。三角形の形が変わっていることに気がつかない。恐らく若いからだろう。知らない間に親しかった人との間に溝ができる。

ただ、いっとき溝ができても、ちょっとしたことでそれが埋め立てられるのも中高生のいいところだ。「RIOT」第2巻の最大の見せ場はそこにある。

「ZINE」が人と人をつなぐ。そして関係を修復する。大人になってしまうとそれは奇跡のように思える。だが、好きなことに没頭した経験がある人はこの奇跡が起こりうると知っている。もちろん作者もそれを知っている。だから、地に足が付いたロマンとも言うべき場面を描けるのだ。

(は)

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 【詐欺師のレシピ】第5回:まさかの具材が激ウマ! 韓国の国際ロマンス詐欺師J.pY式「レタスもやしチャーハン」

    ロケットニュース24
  2. 【約4000円お得!?】デニーズで販売中の「HAPPY BAG 2025」は絶対得する優良福袋! 母の日のプレゼントにもピッタリ!

    ロケットニュース24
  3. 【松山市・鯛めし すばる】三津浜天然鯛のうま味炸裂の鯛めし お城下で殿様気分を味わうゼイタク膳

    愛媛こまち
  4. 【松山市・ブルドッグ 歩行町店】老舗カレー店で味わう ルーとカツのハーモニー

    愛媛こまち
  5. 【着せ恋2期】スピラ・スピカ『アオとキラメキ』がアニメ『その着せ替え人形は恋をする』Season 2のOP主題歌に決定! 楽曲一部使用のスペシャルなPVも解禁

    PASH! PLUS
  6. スピラ・スピカの新曲「アオとキラメキ」がTVアニメ『その着せ替え人形は恋をする』Season 2のオープニングテーマに決定

    SPICE
  7. 「秦氏を学ぶ会」主催の講演会 18日に市立図書館

    赤穂民報
  8. 『あんぱん』未亡人・登美子(演・松嶋菜々子)の再婚の選択は正しかったのか?

    草の実堂
  9. 【新商品】はなまるうどん期間限定「鬼おろしぶっかけ」が思ったより鬼だった件 / 一緒にうどんぼーるも食べてみた

    ロケットニュース24
  10. 今年もぴあアリーナMMにアーティストが集結!「PIA MUSIC COMPLEX 2025」10月開催決定

    WWSチャンネル