若手の成長後押し ラグビーリーグワンライジング釜石SW第1戦/対戦のS東京ベイ 鵜小児童と交流
今年初めて創設されたラグビーの新大会「ジャパンラグビー リーグワン ライジング」に参加する2部の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)は9月27日、釜石鵜住居復興スタジアムで、昨季1部2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイと対戦した。同大会は、若手選手や公式戦出場回数が少ない選手の成長、新たな有望選手の発掘などを目的に開催される。10月4日には昨季2部3位のNECグリーンロケッツ東葛と2戦目を戦った。釜石SWにとっては格上チームとの貴重な対戦機会にもなり、課題を修正しながら今季のチームづくりを進める。
同大会にはリーグワン所属の20チームが参加。3エリアに分け、各チーム2試合を戦う。順位は決めない。登録・出場ともに選手のカテゴリーは問わず、リーグワン公式戦出場回数が15試合以下の選手を原則5人以上登録するのが条件。釜石SWは10チームが参加した東エリアで対戦した。
第1戦のS東京ベイ戦。釜石は加入2~3年目の選手を中心に先発した。前半はS東京ベイが先制。釜石は自陣でのプレーが続くが、要所でいいディフェンスも見せ、相手の前進を食い止めた。20分、フランカー、アンガス・フレッチャーがハイパントのこぼれ球を蹴り出しチャンスを作ると、SO落和史が素早く拾って独走トライ(ゴール失敗)。その後、2本のトライを決められ、5-21と引き離された。34分、今季新加入のSH岡新之助タフォキタウがラックサイドを突いて前に出ると、フォローしていたプロップ松山青につなぎ、釜石2本目のトライ。落のキックは惜しくもゴールポストに当たり、追加点はならず。10-21で折り返した。
後半開始時、5人を入れ替えた釜石。追加点で流れを変えたかったが、ラインアウトのミスや反則の多さで劣勢が続いた。一段とギアを上げたS東京ベイに攻め込まれる場面が続き、後半だけで7トライを奪われた。釜石は無得点に終わり、10-66で敗れた。
釜石SWのトウタイ・ケフヘッドコーチ(HC)は1週間前の静岡ブルーレヴズ戦に続く大量失点に「望んだ結果ではなかった」としつつ、“ライジング”の目的としては「学びの多い試合になったし、そこからたくさんの教訓が得られたと思う」と選手らの奮起に期待。格上チームとの2連戦を終え、大きな課題として「規律」と「スクラム」の改善を挙げた。
大東文化大からアーリーエントリー制度で昨年1月に加入した松山青選手(23)は新大会について、「試合に出ないと分からないことや経験できないことがたくさんあると思うので、どんどんこういう機会を増やしてほしい」と希望。昨季後半から公式戦に出場。今季の活躍に関係者も注目する中、自身が目標として掲げるのはセットプレーの安定。「まだムラがある。安定した球出し、相手ボールをターンオーバーできるようなスクラムを組むことが課題。(リーグ戦開幕を見据え、)がむしゃらに、ひたむきにやるだけ」と強い意志を示した。
10月4日のライジング2戦目、GR東葛戦は12-40(前半7-7)で釜石が敗れた。釜石SWのプレシーズンマッチ次戦は10月25日、釜石鵜住居復興スタジアムで3部の狭山セコムラガッツと対戦する。
釜石高生徒有志「夢団」 SWホーム戦に合わせ、うのスタで今季の語り部活動開始
日本製鉄釜石SWのホーム戦に合わせ、スタジアム内で東日本大震災の教訓を伝える活動を続ける釜石高の生徒らは、リーグワンライジング第1戦の日から今季の“語り部”を開始した。来年3月で発災から15年―。記憶の風化が進む中、生徒らは災害から命を守る行動の大切さを訴え続ける。
語り部活動を行っているのは同校の震災伝承、防災活動グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」のメンバー。1年の米澤心優さんはこの日が語り部デビューとなった。震災当時は1歳2カ月。ほぼ記憶はないが、毎年“3.11”が近づくと両親が話してくれている当時の状況や自身の思いを語った。
ぜんそくの発作があった自分を必死に守ってくれた母、避難所で助けてくれた自衛隊員…。「私が成長できたのは人の助け、思いやりがあったから」。感謝の思いを口にする一方で、親戚10人以上が津波の犠牲になった悲しい現実も…。「皆さんには生きるということを一番に考えてほしい。地震があったらまずは高台へ逃げてください」。
米澤さんは「2歳下の弟も一緒に、家族で震災のこと、これからのことを話し合っている。今ある日常は当たり前ではない。感謝して生き、悔いのない人生を送りたい」と話した。
S東京ベイ 釜石との絆深く 試合前日に鵜住居小でラグビー教室 児童ら大喜び
リーグワンライジング第1戦で釜石市を訪れたクボタスピアーズ船橋・東京ベイは試合前日の26日、スタジアム近くの鵜住居小(高橋美友紀校長、児童129人)でラグビー教室を開いた。選手5人が3、4年(47人)児童とラグビーボールを使った運動で交流。チームが社会貢献活動の一環で同市に申し入れて実現したもので、同校での教室は2018年以来の開催となった。
大熊克哉(29、フッカー)、青木祐樹(33、ロック)、末永健雄(31、フランカー)、古賀駿汰(28、SH)、ハラトア・ヴァイレア(26、CTB)の5選手が来校。パスやラインアウトの実演でラグビーの特徴的プレーを紹介した後、児童が5グループに分かれてボールに親しむメニューを楽しんだ。グループ対抗で、選手と輪になってパス回しの速さを競ったり、ボールを持って走るリレーで盛り上がったり…。合間にはグループで作戦会議もするなどチームワークも体験。最後は選手が並ぶディフェンスを突破するゲームも行い、体育館には児童らの大きな歓声が響いた。
岩﨑花乃さん(4年)は「選手たちは大きくてかっこいい。みんなで仲良く遊べて楽しかった」と笑顔。これまでに学校のタグラグビーチームにも参加していて、「走り方とかも勉強になった。ラグビーの試合も生で見てみたい」と、さらに興味をそそられた様子。
同チームは東日本大震災後の2011年7月、釜石市内で行われた「がんばれ東北!復興祈願ラグビーDay」のチャリティーマッチで釜石SWと対戦。18年には鵜住居小でのタグラグビー教室や地元高校ラグビー部への指導も行った。ラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催の翌20年に行われた「いわて・かまいしラグビーメモリアルイベント」でもSWと対戦するなど、ラグビーを通じた支援で同市と深い絆を結ぶ。
津波被害の痕跡が残る13年、高校生の時に初めて釜石を訪れて以来、今回で4回目の訪問となった大熊選手。鵜小児童との交流に「最初のあいさつから大きい声で、みんな積極的。逆に元気をもらった」と感激。釜石に来るたびに人の温かさを身に染みて感じているといい、「クボタは人と人とのつながりを大事にしているチーム。これからも足を運んで、試合を通して勇気を与えられたら」と話した。