猫がお互いに『お尻の匂いをかぐ』3つの理由 どんなメッセージを交換している?
1.猫流のあいさつ
私たち人間にとってあいさつは、円滑な人間関係を築くために欠かせない日常習慣です。
同じように、猫の世界にもあいさつがあって、何かですれ違ったときなどに、「やあ、元気かい?」という感じで気軽に交わされます。
猫のあいさつで一般的なのは、お互いに鼻を突き合わせる行動です。鼻先や口のまわりの匂いをかぐと、どんな素性の猫であるか、すぐに判断できます。人間世界で言えば、名刺交換のようなものかもしれません。
同様に、お尻の匂いをかぎ合う行為もあいさつの一種です。顔まわりに比べると、お尻の方が断然、匂いが際立っています。
猫にとっては、より深い情報が得られるのでしょう。お尻のかぎ合いは、鼻先の交わし合いよりも、さらに踏み込んだあいさつと言えます。
ちなみに、愛猫が飼い主さんにあえてお尻を向けるのは、親密さの証です。ときに、合わせ技のごとくしっぽを顔に巻きつけてくることもあります。
2.個人情報のやりとり
前述したフランクなあいさつのほかにも、より込み入った個人情報のやりとり、という側面があります。
猫のお尻まわりにはフェロモンを分泌する臭腺があって、健康状態をはじめ、食生活、発情の有無などの情報がたくさん詰まっています。
猫は相手のお尻の匂いをかぐだけで、認証パスワードなしで個人データにアクセスできるわけです。
このケースでのやりとりには、はじめに紹介したあいさつと違って、より親密なコミュニケーションの意味合いがあります。
警戒する相手に大切なお尻をわざわざ見せることはありません。お尻をかぎ合う仲は、それなりに気心の知れた間柄です。
同時に、猫は、お尻の匂いをかぎ合うことで、お互いの力関係を見極めている、とも言われています。相手の匂いをかごうとして、お尻を奪い合うかのようにその場をぐるぐる回るのは、そのためです。
3.匂いをかぐ時間が長い場合、相手猫が病気かも
単独で狩りをするため、猫には優れた感覚能力が備わっています。たとえば、聴覚はざっと言って人間の4倍です。匂いをかぎ分ける嗅覚もまた、野生時代からのサバイバルの結果、鋭く研ぎ澄まされています。特に、食べ物の腐敗臭には敏感です。
実は、お尻の匂いによって、相手の体調不良などの健康トラブルを察知できる、と考えられています。その際にヒントになるのが、お尻をかぐ時間です。ふだんのあいさつよりもはるかに長いと、病気などの可能性を感じ取っています。
もし多頭飼いのおうちで、愛猫がお尻の匂いを熱心すぎるほどかいでいた場合、相手猫が健康上の問題を抱えているせいかもしれません。病気の早期発見のため、気づいた時点で、動物病院に連れていってみてください。
まとめ
簡単にまとめると、猫のお尻のかぎ合いは、人間で言うところのあいさつの一環であり、健康面などのプライベート情報を開示する行為です。
鋭い嗅覚によって、猫はお尻まわりに含まれたさまざまな情報を読み取り、日常のコミュニケーションに活かしています。今回の記事がみなさんの愛猫暮らしの手助けになれば幸いです。
(獣医師監修:葛野宗)