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「『観たい』と思えるアニメだと思います」──原作漫画から滲む“暴力”的な面白さは「諦めないという気持ち」から生まれる!? 『ばっどがーる』原作・肉丸先生インタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2025年7月5日より放送中のTVアニメ『ばっどがーる』。“自称・不良少女(ばっどがーる)”の優谷 優と、個性豊かなキャラクターたちのにぎやかな掛け合いが人気を博し、『ばっどがーる』旋風が吹き荒れています。

アニメイトタイムズでは、原作・肉丸先生にインタビューを実施。漫画『ばっどがーる』に組み込まれる無類の“パワーワード”はどのように生まれている? TVアニメ化に対する想いはもちろん、原作漫画の制作秘話までたっぷりと伺いました。

肉丸先生の“暴力”的な魅力が詰まったインタビューのなかで、担当編集が明かした「これはさすがに……」と考え込んだネタとは一体? ぜひ、お楽しみください!

【写真】夏アニメ『ばっどがーる』原作・肉丸インタビュー

制作陣がアニメ化にかける高い熱量

──『ばっどがーる』のアニメ化が決定した際のお話を教えてください。

原作・肉丸先生(以下、肉丸):嬉しかったですね。アニメ化をひとつの目標として『ばっどがーる』を描いていたこともあり、良かった、とホッとした気持ちも強かったです。

アニメ化のお話は提案書の形でいただいたのですが、ほぼ完成した状態でいただくことができました。キングレコードのプロデューサーの諏訪さんが、キャスト以外の細かい制作陣の座組までデータにまとめてプレゼンしてくださったので、お声がけいただく段階でこんなに決められるものなんだ、と驚きもしましたね。

──アニメ制作サイドも、高い熱量を持ってプレゼンに臨まれていたのですね。

肉丸:僕に話が来たときには、「もう内部(キングレコード)で、話を通してきました」という状態だったようです。僕も元々営業職に就いていましたのでプレゼンの経験もあるのですが、協力会社との提携対応なども控えている段階なのに、社内で話が付いていることも中々ないことだろうなと。

──そうして完成したPVやアニメ映像をご覧になったときはいかがでしたか?

肉丸:イチ視聴者として面白そうだなと思いました。クオリティも非常に高く、楽曲とキャラクターの親和性も高い。「観たい」と思えるアニメだと思います。

あとは、絵が可愛いですね。あの絵はキャラクターデザインの森本(由布希)さんの力が大きいなと思います。あとは色の彩度の高さが印象的ですよね。

“きらら作品”は一般的に、少し彩度が低めで明度が高めと言いますか、ふんわりとした印象だと思うのですが、TVアニメ『ばっどがーる』はビビッドな色使いなんですよね。画面から入り込んでくる情報が派手で、そういった面でも観たくなるアニメだなと思いました。PVも繰り返し見ています。

(第一弾PVを見て)この「ツッパリHigh School Rock'n Roll(登校編)」が挿入されるタイミングも良いですよね! 一度落ち着いてから曲が入って、期待感が増す感じがして。

──アフレコの様子もご見学されたのですか?

肉丸:すべての回のアフレコ現場にお邪魔させていただきました。

──すべての回で! その際は、どのようなお話を?

肉丸:一番多かったのは……僕が持って行く手土産の話ですかね。全国各地のお菓子を取り寄せて、毎回違うお土産を持って行ったんです。みなさんで交流する際の話題づくりになればと思ってのことでしたが、「今日のお菓子は……」のようなコミュニケーションも増えていきました。

あとは、「前回の、このシーンのアフレコが良かったです!」という、アフレコに関するお話です。突飛なセリフも多くあったと思いますので、「あのセリフを言わせてしまって申し訳ないです……」みたいな。

──毎回違うお菓子の差し入れがあると、賑やかで華やかな現場になりそうですね。

肉丸:まぁ、僕も食べられるということもあり……(笑)。

それで言うと、一番現場を盛り上げてくださったのは音響監督の高寺(たけし)さんかなと思います。とにかくポジティブに、ハッピーな雰囲気にしてくださって、みんなの中心に立って結んでくださる方でした。高寺さんがいらっしゃったからこそ、明るい現場になったのではないかと思います。

──キャラクターの声を初めて聞いたときのご感想もお聞かせください。

肉丸:オーディションから拝聴させていただいたのですが、結果的に「このキャラクターに合う人はこの人だ」と、ほぼ一発でキャスト陣が決まったんです。ハマり役の方が各キャラクターに付いてくれてありがたいなと思いました。

芳文社担当編集(以下、担当編集):特に花宮(初奈)さんには驚かされ続けていましたよね。スタジオオーディションの際に、作中で亜鳥が着ていた「察しろ」Tシャツとほぼ同じデザインの服を着ていたり……。

肉丸:ほぼ一緒のデザインの服を着られていましたね。「察してください」って書いてあったかな。髪型も亜鳥とほぼ同じで、「亜鳥が来た!」と思いましたね。

声のイメージについても、亜鳥は元々「僕のイメージにない声」を持っている方に演じてほしいと考えていました。僕自身、亜鳥のカリスマ性を伝えることが難しいと思っていましたので、僕の考えている声では限界があったんですよね。そのイメージに、花宮さんがピタリとハマってくれて、花宮さんも全力で返してくれました。

──アフレコ現場における印象深いエピソードを教えてください。

肉丸:涼役の松岡(美里)さんが、本番前にツッコミの練習をしていて、その声が聞こえてきたことが印象的でした。本気で臨んでくださっているなと思いましたね。

ツッコミはタイミングが大事ですし、ニュアンスの付け方も難しいので、すべての回を通して最も多く要望をお伝えさせていただいたのは、松岡さんだったと思います。僕が漫才好きなこともあり、たくさん細かくお願いをしてしまいましたが、真摯に応えてくださいました。

あとアフレコ現場で言うとLynnさんの演技ですね……清はヤバいヤツなので「ご自身の思う一番ヤバい感じでお願いします」とお願いしたのですが、本当にヤバかったです(笑)。

──(笑)。4コマ漫画特有のテンポ感に関しても、納得の出来なのですね。

肉丸:とても納得しています。僕だけのエゴではなく、監督をはじめとした制作陣が考えるバランスも落とし込まれて、良いものが出来たのではないかと思います。

──そんなTVアニメ『ばっどがーる』から、先生が特に気に入っているエピソードをひとつ挙げるとすると、いかがでしょうか。

肉丸:個人的にお気に入りのエピソードは7話です。るー(瑠璃葉るら)の回なのですが、アニメになったことで「こいつ、可愛いな」って思わざるを得なくなったといいますか……とにかく、ぜひ見ていただきたいなと思います。

正直、全キャラクターにお気に入りエピソードがあるのですが、特にピックアップするとしたら7話かな。

「このイラストを描いたことで原稿を落としたらヤバイ」

──そしてキャスト情報解禁のタイミングでは、先生のXアカウントにて、キャストの似顔絵イラストが公開されました。こちらの制作エピソードについて教えてください。

肉丸:「このイラストを描いたことで原稿を落としたらヤバイ」と思っていました。

一同:(笑)。

担当編集:もし落としていたら、きっと許されないことだったと思いますよ(笑)。

肉丸:絶対ダメでしたよね(笑)。あのイラストはお仕事じゃなくてファンアートですから。それを6日連続で投稿しておいて、大事な原稿が完成しなかったら……。表紙を任せていただける号と並行して行った作業だったこともあって、緊張していました。

でも誰かお一人分だけ描いて、他の方のイラストが投稿されない・間が空いてしまうのもおかしな話になってしまう。元々あのイラスト群は、4月6日に行われた「TVアニメ『ばっどがーる』なんかすごいワルイ生配信!」に向けて描こうとしていたものなんです。実は橘(杏咲)さんは日をまたいでしまったんですけどね……。

スケジュール面での緊張に加えて、みなさんのイラストを描くことについても緊張していました。お顔が似ないといけないですし、みなさんのファンの方の期待にも応えなければならない。大丈夫かなと思いながら描いたのですが、良い反応をいただけましたので安心しました。特に前田(佳織里)さんは似ていると声をいただきましたね。

担当編集:みなさん本当に似ていますよね。

肉丸:前田さんのファンの方から「ちょっとおすましな表情をしているときに、あの口元になる」というお褒めの言葉をいただきました。また、個人的に一番似ていると思ったのは花井(美春)さんですね。

毎日投稿する直前に完成させていて、描き溜めもしていなかったので、原稿が滞らなくてよかったなと思います(笑)。再三言いますが、あくまでもファンアートですからね。キャストのみなさんにも「勝手に描かせてもらってすみません」とお伝えしようと思います。あ、でも橘さんはコラムで大事にしていると書いて下さっていたので許して貰えるかな……?

──イラストにも描かれた橘さん、花宮さん、松岡さん、花井さんの4人で構成されるユニット「天狼群」の活動もスタートしています。先生が感じる「天狼群」の魅力についても教えてください。

肉丸:まず、みなさん歌が本当に上手ですよね。それぞれソロで活動できるレベルの方々が集まってくださったので、何のノイズもなく歌声を聴くことができる。キャラクターに感情移入しながら、没入して楽曲を楽しむことができるのが「天狼群」の強みだと思います。

みなさん、様々な場でご活躍されている方々ですから、自分の魅力の出し方をわかっていらっしゃるのではないかと個人的に思います。キャラクターのファンになっていただくことももちろん嬉しいことなのですが、『ばっどがーる』「天狼群」をきっかけに声優さんのファンになっていただきたいなと思っています。

──「天狼群」にチャレンジしてほしいことはありますか?

肉丸:やれることならなんでもチャレンジしてほしいですね! 普段アニメを見ない方々が見ても反応してしまうような魅力があると思いますので、より多くの人の目に触れる機会があればと思います。様々なステージであの4人を見ることができたら嬉しいなと思います。

僕や、その上の世代の方もハマれるような雰囲気もありますから、幅広い層にアプローチするために……例えばフェスなどに出てくれたらいいなと思いますね。「天狼群」からアニメに入ってきてくれたら嬉しいですし、アニメから「天狼群」に入っても良い。どんどん輪が広がるような活動をしてもらえたら嬉しいです。

──改めて、TVアニメ『ばっどがーる』の魅力や見どころを教えてください。

肉丸:いっぱいあるから難しいな……。僕自身『ばっどがーる』を“萌え漫画”ではなく“ギャグ漫画”として描いています。特にコミックス第一巻などは、ほぼギャグしか詰め込んでいない感覚なんです。

しかし今回、その内容をアニメとして再構築していただいたものを見ると、萌え要素も含まれていました。それは絵やキャラクターの可愛さだったり、会話のテンポや間だったり、空気感が乗っかってくれたからだと思っています。

漫画にはない良さ、可愛さが伝わりやすくて、各キャラクターを推しやすい。もちろん、ギャグの側面も見てほしいのですが、それぞれのキャラクターの可愛さや、キャラクター単品として魅力を感じてもらえるのがアニメならではの良さなのではと思っています。

漫画『ばっどがーる』制作秘話と漫画家・肉丸の求心力

──TVアニメ放送に先駆け、「アニメ化記念原画展」も開催されました。肉丸先生も現地参戦されていましたが、いかがでしたか?

肉丸:入口のご挨拶にも書かせていただきましたが、本来は4キャラ(優・亜鳥・涼・るら)でご依頼をいただいていました。基本的にはこの座組だと思っているのですが、その4キャラ以外のファンの方も、もちろんいらっしゃいます。むしろアニメが放送されることで、そのキャラクターたちがもっと人気を集めてほしいという想いもありました。

キャラクターを知ってもらうという、アニメ放送までの準備段階として、開催していただいて良かったなと思います。正直、描き下ろしイラストを作るのはとても大変だったのですが……(笑)。眠い目をこすりながら描いた甲斐がありました。

──SNSでも、たくさんの感想が投稿されていましたね。

肉丸:「#ばっどがーる展」の感想を追っていましたが、「(入場料が)1,000円でいいのか!」「展示が大きすぎて写真の画角に収めきれなかった」のようなプラスの反応をたくさんいただきました。今後もこのような機会があればチャレンジしていきたいですし、読者の方と直接触れ合う機会も積極的に参加したいと改めて思いました。

──会場で展示された原画、イラストの総数は200点を超えていたとのことでした。

肉丸:数もさることながら、コマのチョイスが良かったですよね。原作を読んでいただいた結果、このコマが選ばれたんだろうな、と伝わってきたので、ありがたいなと思いました。

──すべてのコマにパワーが詰まっている『ばっどがーる』ならではの展示でしたね。

肉丸:すべてのコマにネタを入れようというスタンスで描き始めた作品でもあるので、初期の段階だとパワーワードが多いですね(笑)。

──そのようなパワーワードやネタは、どのように着想を得て描いているのですか?

肉丸:2パターンあります。普段から僕は考えるのが好きで、隙があれば面白いことを言いたいと思いながら日常を過ごしていて。基本的には身内と喋る中で出てきたワードを蓄えたり、YouTubeなどから得た面白い要素……事件や生物、キーワードなどを調べるなどして、意外性や専門性があるものをピックアップしています。

もうひとつのパターンは、「みんなが思っている言葉から少しズラす」という意識です。

──言葉を少しズラす?

肉丸:普通の表現に対して、少しだけ言い方を変えるんです。例えば……「湿度が高い」を「濡女子(ぬれおなご)がいる」という言い方をしたり、「冬が来た」を「夏が逃げていった」に変換したり。このような言い方に切り替えることで、『ばっどがーる』ならではの表現が生まれて、それがブランドになるのかなと。

──「まんがタイムきららキャラット」2025年6月号の表紙も、とてつもないインパクトでした。

肉丸:あれ、芳文社さんがよく許してくださいましたよね……(笑)。実は最初に出した案はもっと激しくて、NGだったんですよ。「きららといえば、やっぱり暴力!」っていうキャッチコピーで。

──それは激しいですね……(笑)。

肉丸:担当編集さんと一緒に考えた結果、「暴力?」という疑問形に落ち着きました。滑り込ませることができてよかったです。

──この場には『ばっどがーる』編集担当者様もいらっしゃいますが、初案を見た際のご感想と言うと……?

担当編集:「これはさすがに……」と(笑)。その後、なんとか“暴力”を入れる方法を模索しました。

肉丸:こういうことが結構あるんですよ。思いついたネタを無理やり入れ込むためにはどうしたらよいか、と。諦めないという気持ちから生まれるネタも多くあります。

──特に印象深い、制作中の「諦めなかった」エピソードはありますか?

担当編集:たくさんありすぎて……(笑)。先生、印象的なものはなにかあります?

肉丸:いわゆる世界情勢的にキケンだったものとか……。

担当編集:あぁ、あれは大変でしたね。

肉丸:ガイドラインに沿いながら、どうやって採用に持っていこうか、と話し合いをすることも多いですね。

──表現の際を攻める姿勢が、『ばっどがーる』の面白さにつながっているのですね。

肉丸:僕が書いたネタに対する、ストッパー的な役割を担ってもらっています。なので、打ち合わせで危ないワードが出てくるというより、「これはヤバイんじゃないか」と止めていただく場合が多いかなと思います。

担当編集:先生にはマックスパワーを出していただいて、そこからまろやかにしていく作業が発生しますね。

肉丸:あとは、英語や数式、単語説明の長文に関するフォローをしていただいています。「四ヶ郷頭首工」の説明語句とか……。

担当編集:辞書の文言をそのまま使うわけにはいかないですからね……(笑)。

──信頼関係が伝わってきます。そもそも肉丸先生が漫画家としてお仕事を始められたきっかけは何だったのでしょうか?

肉丸:前職の営業職を辞めてから次の仕事を考え始めて……複数あった選択肢の中のひとつが漫画家でした。営業をしていたときも、寝る間を惜しんで漫画を読むくらいずっと漫画が好きだったのですが、漫画は描いたことがなくて。思い立って、24ページの原稿を描き上げて、出版社に持ち込みをしたことがきっかけです。

その結果、良いご縁があって、連載が決まって。漫画家としてのお仕事を始めることができました。……そのあとが地獄でしたが……。

──地獄?

肉丸:漫画を描く技術がなく、絵の描き方も定まっていない状態で連載が始まったので、右も左もわからないままプロになったという状況でした。なんとか苦しい状態から抜け出すために、とにかく勉強しましたね。絵の描き方の本を4、50冊程度は読んだかなと。その期間を経て、なんとか今に至るという感じです。

──本日お話をお伺いして感じたことですが、先生が持つ求心力や熱量が凄まじいな、と。

肉丸:ありがとうございます(笑)。必死に生きてます。

──そんな肉丸先生が抱く、漫画家としての展望をお聞かせください。

肉丸:基本的な僕の理念として、「自分に関わった方々全員にメリットを」と思っています。「『ばっどがーる』に関わったから、こんなメリットがあった」ということを、わかりやすく感じていただきたいと思っています。そのために、自分の作家としての商品価値をもっともっと高めていく。これが、一番の目標であり展望です。

加えて、抽象的なのですが……誰も成し遂げていないことがしたい、と思っています。様々な準備をしていますので、楽しみにしていただければと思います。

【インタビュー・文:西澤駿太郎 編集:太田友基】

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