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ammo、ロックバンドとしての殻を破ったツアーファイナル、自己最長ワンマンで伝えきった周囲への愛と感謝「ライブハウスもみんなも最後まで愛しきります」

SPICE

ammo 撮影=

ammo『Don’t Cry No Tour クライマックス編』2025.2.21(FRI)大阪・なんばHatch

緊張でほのかに歌声も震える中、それでも安定を捨て去り、最高だけに手を伸ばした初めてのワンマンから約2年半。理想を携え、ライブハウスで戦い続けてきたロックバンドとしての現在地を踏みしめたメジャーデビュー後初のワンマンから約1年。2025年2月21日(金)、ammoはメジャー1stフルアルバム『SONG LIE』を引っ提げたリリースツアー『Don’t Cry No Tour』のクライマックス公演、大阪・なんばHatchのステージに立っていた。

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定刻を少し過ぎた頃、大きなバックドロップが深緑に染まる。静寂の最中、ポツポツと岡本優星(Vo.Gt)がギターを爪弾き始め、歌い出したのは「箱の中から」。降り注ぐ白いライトで伸ばされた3人のシルエットはどこか憂いを帯びながらも、丁寧に編まれるアンサンブルが混じり気のないammoとファンだけのボックスをゆっくりと切り取っていく。そのまま「大阪、Orange Owl Records所属、ammo。憧れのライブハウスで史上最長のワンマンライブをやりにきました」の口上でなんばHatchに名乗りを上げると「CAUTION」へ。冒頭2曲でありありと示されたのは、今日が彼らにとってライブハウスと改めて対峙する日であること。ワンルームから思いを馳せるような「箱の中から」は、眠れない夜にベッドの上であの音楽を流す時さながらのリスナーとバンドの関係を綴った歌として、ズドンと落ちた衝撃を瞬かせる「CAUTION」は<僕はずっとここに居るよ>の歌詞に重ねて「ここにいるぜ」と呟いた通りの存在証明のナンバーとして、客席を満たす。

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続けて「ライブハウスやろうか。いくぜ、いくぜ、いくぜ!」と「ハート・フル」を投入しアクセルを全開にすれば、怪しげに蠢く川原創馬(Ba,Cho)のプレイングがダーティさを演出した「ジュブナイル」や<涙で溶けたルウ うるうるうるうる>とammoの必殺技である押韻や言葉遊びがふんだんに盛り込まれたキュートな響きがシンボリックな「ルウ」、軽快な北出大洋(Dr)の16ビートがフロアを波立たせた「ねー!」などを息つく暇なく落としていく。「この数分は何を見せるのか」が明瞭だからこそ、時にダークに折に可愛らしくコロコロと変わる表情に安心して浸ることができると同時に、その安心感を保証するロングセットならではの豊かな展開や、「スケールアップした」と言うのがドンピシャなふくよかなバンドサウンドから感じられるツアーでの確かな進化に感嘆するばかり。

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すっかり太くなったバンドの背骨を手を変え品を変え見せつけたからこそ、深く刻まれたのが、一気に湿度を増した「意解けない」や「愛魔性の女」を経てプレイされた「寝た振りの君へ」だった。「音楽をやるんだって伝えたあとの、あの子の顔をまだ覚えてる」「2人でこのライブハウスに来たね」と弾き語りを交え、アルバムのページを捲っていく中、「18歳の時に書いた歌」と、そっと置かれた同曲が、手を離した2人の後ろを通り、集まった千人超の手元に送られていく。ここまで1時間、15曲をノンストップでやり切ると、岡本は「まだ俺たち、夢の中にいる。憧れの場所、なんばHatch。始まってもうどれくらい経った? まだ夢中だ」と語り、こうも続けた。「これまでの言葉が嘘になる瞬間、それがライブ。ひっくり返す、つまりはアプセット。俺たちは今日もいつも通り、いつも以上をやるだけ」。馴染みの衣装に刻まれた「I AM APSET」のフレーズを体現するこの語りから「紫春」をドロップしたとなれば、観客も特大の「ワン、ツー」で応じないわけがない。多くのリスナーとammoを結んだ「寝た振りの君へ」から「紫春」を束ねたこのブロックは、あの子に歌うためにギターを握った岡本が番狂わせを起こすステージを重ね、バンドとして歌う意味を見つけた過程とオーバーラップした。「まだ夢中だ」と口にした台詞が指示しているのは、このワンマンライブだけの話ではなく、バンド自体のことでもあるはず。そのことを証明するみたいに<風よ吹け僕を乗せて 覚めない夢の中まで>の一節が、やけに強く響いて聴こえた。

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「なんばHatchまだまだいけるかい。後半戦始めようぜ!」とセンチメンタルな時間に手を振れば、「深爪」から「突風」「包まれる」「卒業」とアッパーチューンの連打で容赦なし。ダメ押しに2度の「包まれる」を追加すると、岡本は「ロックバンドはステージの上だけで格好付いてたら、それで良いって本気で思ってた。馬鹿がよ。俺たちが輝いていられるのは、目の前にいるみんながいるからです。今日が『Don’t Cry No Tour』ツアークライマックス編。これまでのどうしようもなかった俺たちを殺しにきました」と叫び「フロントライン」を投下する。<過去があるから今日の自分が なんて言ったって あれから何も変わっちゃいないし>と幾度も歌い続けてきた3人が今この瞬間、素直に真っ直ぐに生まれ変わろうとしていく。「感謝してます」と照れくささや些細なプライドで言えなかったことをストレートにぶちまけられたキッカケは、彼らがこのツアーで自らのロックバンド像とぶつかったからに違いない。

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そして、「ロックバンドとは何か」をこのタイミングで問うた背景には、バンドとロックを貫いてきたライブハウスシーンを飛び出し、より広いレンジで戦わねばならないメジャーの舞台で何を植えられるのかを考えたことも一因だっただろう。そんな時、いつだって支えてくれたのは各地に足を運んでくれたファンの姿なのだ。ロックはammoだけで完結させるものではないと気づいたゆえの揺るぎない自信は、「今の俺たちから目を逸らすなよ」「みんなとならどこまでもいける気がするぜ」とシャウトした言葉の至る所に表出していた。

まだまだ愛を伝えきれないとばかりに「ライブハウスもロックバンドもみんなも。家族も裏方さんも最後まで愛しきります」と捧げたのは「High Ace!!!」。ハコの歌と衝動のナンバーで幕を上げた一夜が、バンドの第一作である「フロントライン」での羽化を経て、夢をたんまりと積み込んだバンドワゴンの曲へ結ばれていく。裏打ちのリズムを基盤にした「High Ace!!!」と、シンガロングというよりも合唱と形容したくなる硬派さを備えた「埃人間」で新たなammoの音楽的な広がりを確信させると、初期衝動マシマシの「SING ALONE GOOD」から「未開封」「星とオレンジ」「これっきり」とこの場所へ3人を連れてきてくれたキラーチューンを乱れ打ち。

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2度目の「星とオレンジ」や4度目の「包まれる」、「またライブハウスで会おうよ。バイバイ!」と約束を交わした「後日談」で毛ほどの隙も与えずにゴールテープを切る。かと思いきや、「後日談」の最後の一撃と共に「好きになってごめんなさい」が鳴らされた。鮮血の赤で埋め尽くされた会場に漂う熱気を、3人の重厚感溢れる演奏がじんわりと浸透させていく。<俺は夢を夢見てた><俺は恋に恋してた>としたためていた彼らは、自らの手で夢を見つけ、その理想を掴み、周囲へと愛を手渡せるようになったのだ。アンコールでは、数遊びを散りばめながらオーディエンスへの思いを綴る新曲「身体一つ、恐怖断つ。」を披露し、「歌種」を叩きこんでゴールテープを切ったammo。音止めは21時半過ぎ。当初予定していた120分を優に超えるフルボリュームの自己最長ワンマンで、ここまで抱え込んできた感謝を存分に伝えきった。

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アルバムに掲げられた『SONG LIE』―――”そんぐらい”と『Don’t Cry No Tour』―――”どんくらいのツアー”には、自分たちがどこまでいけるのかを問いただすと共に、周囲から「お前らはどんなバンドだ?どんなもんだ?」と視線を向けられること、「そんなもんか」と思われてしまう可能性があることに対して、「これがammoだ」と真っ向から打ち返えそうとする決心が詰まっていただろう。そんな中、音楽的にのみならず、バンドマンとして、人として何倍にも成長した風姿を赤裸々に提示できたことは、ammoのこの先を間違いなく照らすはず。次なる戦いの舞台は、バンド初となる東京でのホールと大阪での野外ワンマン。ライブハウスを飛び出して、どんな事件を巻き起こしてくれるのか。あるいは、どこであれライブハウスに染色しきってしまうのか。いずれにせよ、殻を破ったammoの行進はまだまだ続いていくのだ。

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取材・文=横堀つばさ 撮影=toya

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