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話を聞いてもらえない、嘘つき呼ばわりされる…発達障害息子の失敗から生まれた「人付き合いのルール」

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話を聞いてもらえない、嘘つき呼ばわりされる…発達障害息子の失敗から生まれた「人付き合いのルール」

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

みんな、僕の話を聞いてくれない……?

発達障害がある息子のリュウ太は、保育園でも小学校でも人付き合いがうまくいかず、人間関係で悩んできました。学童期には、周りと衝突してケンカになってしまうこともしばしば……。

自分の好きな話ではなく、みんなに合わせた話をしたほうがいいの?

リュウ太は、小さい頃から電車や車が好きで、自分の好きな話題ではペラペラおしゃべり上手でした。しかし、自分の好きな話題ばかりしていたら、話が終わっていないのに「その話もういい」と目の前の人が離れていくのです。小学4年生のときに「あれ?みんなオレの話を聞いてくれないな」ということに気がついたそうです。

話題を周りに合わせたのに、失敗?

その気づきから、リュウ太は「みんなに合わせた会話をしたほうがいいのかも?」とチャレンジし始めました。

その頃特撮ヒーローアニメが好きな子たちと仲が良かったので、普段は自分の好きな電車や車の話しかしなかったリュウ太ですが、特撮ヒーローの話をしてみました。すると「見てないくせに噓ついて話を合わせてくるなよ!」と言われてしまいました。
リュウ太は、毎週その特撮ヒーローアニメを見ていたので「見てるよ」と言い返しましたが、相手は納得してくれませんでした。

そのときリュウ太は「せっかく話を合わせたのに……」とイヤな気持ちになったそうですが、しばらく経ってから「何で相手が納得しなかったのか」を考えてみたそうです。そのとき、これまで電車か車の話しかしてこなかった人が突然、特撮ヒーローアニメの話をすると「急にどうした??」と不信がられるのかもしれないと思ったそうです。

小学生時代の教訓を経て、中学生になったリュウ太は……

中学生になるとリュウ太は、小学生のときから仲が良い友逹の影響で深夜に放送しているアニメや海外ゲームを知り、「おもしろいものがあるんだな」とポップカルチャーにはまっていきました。

そのときに「友逹の趣味に合わせて会話をしてみると発見がある!」と気がつき、また無理に相手の話に乗っかるのではなく、友逹が好きな話題に少しずつ合わせているといろいろ教えてもらえることにも気がついていきました。リュウ太は「小学生のとき自分の趣味を周りから『変なの』とか言われてイヤな思いをしたことがあるけど、オレは人の趣味は絶対に悪く言わないようにしている」とも私に教えてくれました。

リュウ太は、友逹と付き合う上で3つのルールをこう決めていたそうです。
「友達の趣味を悪く言わない」「友逹の趣味にのっかって自分も好きになれるものを探す」「友逹の趣味で分からないものは質問してみる」
この3つを気をつけて守っていたら、中学校に入学して数ヶ月でリュウ太には友達が増えていったそうです。学校の帰りに仲良しグループの5人で一緒に下校して、わが家に来てはゲームをして帰っていくようになりました。

この人付き合いの『自分ルール』を息子が私に教えてくれたのは中学2年生の時でした。学童期にいじめられたり、嫌がらせを受けたりしてきたリュウ太でしたが、人嫌いにならずに周りと積極的に関わっていこうという変化が生まれたのだとうれしかったことを覚えています。人付き合いのコツはさまざまあると思いますが、この3つだけなら簡単にできそうだなと思いました。

現在成人したリュウ太は、年齢を越えて多くの人と交流していけるようになりました。そして、「人の趣味を悪く言わない、このことは自分の信念としていて、相手の趣味の話をするというのは相手へのリスペクトの意志表示になるから仲良くなりやすいんだよ」と教えてもらいました。

中学生の時にここまで考えていたとは思いませんが、学童期に散々失敗して導き出したリュウ太なりの答えだったのだなと母は思いました。

執筆/かなしろにゃんこ。

(監修:室伏先生より)
にゃんこさん、リュウ太さんの友達付き合いのコツ、3つのルールについて共有してくださり、ありがとうございました。リュウ太さん、悲しい気持ち、悔しい気持ちになったこともたくさん経験されたことと思いますが、試行錯誤される中でお友達との関わり方を学んでいかれたのですね!今後の人生でもとても大切なルール、教訓は、リュウ太さんの貴重な財産ですね。

どんな人付き合いが向いているかは、人によりまちまちです。同じような特性をお持ちでも、リュウ太さんのように付き合い方のコツをつかんで友達付き合いを深めることを楽しむ方もいれば、最低限のコミュニケーションにとどめてストレスがかからないように上手にコントロールしている方もいます。お子さんの友達付き合いの難しさに直面され、不安なお気持ちを抱えられている親御さんもいらっしゃると思います。お子さんにとって苦く、つらいご経験もあると思います。それらのご経験も、お子さんの成長に繋がることを信じながら、私も一緒にサポートしていけたらと思っています。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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