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子どもも双極性障害になる?ADHDとの関連や違い、チェックポイントなど【医師QA】

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子どもも双極性障害になる?ADHDとの関連や違い、チェックポイントなど【医師QA】

監修:藤井明子

小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医/どんぐり発達クリニック院長

双極性障害(双極症)とは?原因や症状、ADHD(注意欠如多動症)との関連は?

双極性障害(双極症)は、気分が極端に昂揚する躁状態と極端に落ち込む抑うつ状態を繰り返す精神疾患です。

躁状態では、以下のような症状が見られます。

・気分が高揚し、いつもより活発になる
・睡眠時間が短くても平気
・いつも以上に自信満々で、後先のことを考えずに行動してしまう
・集中力が途切れやすく、一つのことを長く続けるのが難しい
・衝動的な買い物やギャンブルをすることがある など

一方、抑うつ状態では、以下のような症状が見られます。

・気分が落ち込み、何もやる気が起きない
・眠れない、または逆にいつも眠たい
・食欲がない、または逆にいつもお腹が空いている
・疲れやすく、身体が重い
・何もかも嫌になり、自己否定的な考えが頭をよぎる など

これらの症状は、人によって現れ方や程度が異なりますが、躁状態とうつ状態が交互に繰り返されることが特徴です。

双極性障害(双極症)は、状態によって1型と2型に分けられます。

「双極1型障害」と診断されるのは、非常に高いエネルギーレベル、睡眠の必要性の低下、自己への過大評価、衝動的な行動など、日常生活に著しい支障をきたすほどの激しい「躁状態」がおこる場合です。双極1型障害では「うつ状態」(強い悲しみ、無気力、食欲不振など)も起きる場合がほとんどですが、躁状態があれば、うつ状態がなくても双極1型障害と診断されます。

双極1型障害ほどの激しい躁状態ではなく、やや高揚した気分、多弁、活動量の増加などが見られる「軽躁状態」と、1型と同様の「うつ状態」の両方がおこる双極性障害(双極症)は「双極2型障害」と診断されます。

双極性障害(双極症)の原因はまだ明らかになっていませんが、体内でつくられるノルアドレナリンやセロトニンなどの神経伝達物質の調節がうまくいかないことが原因の一つではないかと考えられています。

双極性障害(双極症)は、ストレスを感じるような出来事のあとに発症する場合がありますが、因果関係は証明されていません。また、双極性障害(双極症)の発症には遺伝が関与していると考えられています。そのほか、甲状腺ホルモンの量が過剰になる甲状腺機能亢進症などの病気によって、双極性障害(双極症)の躁症状が見られることもあります。

このコラムでは、
・双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)との関連
・双極性障害(双極症)の注意すべき症状や関わり方のポイント

など、医師のアドバイスを交えてご紹介します。

【医師に聞く】双極性障害(双極症)は子どもでもなるの?ADHD(注意欠如多動症)の症状と似ている?気になるギモンを医師が分かりやすく解説!

ここからは小児科医の藤井明子先生に、双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)の関連についての質問にお答えいただきます。

Q:ADHD(注意欠如多動症)と診断された子どもがいます。双極性障害(双極症)を併発することがあると聞きましたが、子どもでも併発することがあるのでしょうか。

A:ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの発達障害と双極性障害(双極症)が併発することもあります。ADHD(注意欠如多動症)と双極性障害(双極症)のどちらがメインなのかを診断するのは難しく、症状や経過を丁寧にみる必要があります。ADHD(注意欠如多動症)の診断には、幼少期、幼稚園の年長くらいまでの間に、何か兆候がなかったかを重点的に確認します。大人になってから急に発達障害があらわれることはありません。一方、双極性障害(双極症)の初発年齢は10代後半から20代前半が多いと言われています。小児期(10歳以下)での発症は稀ですが、報告例があります。幼い子どもにおいては、症状が非典型的であることが多く、診断が難しい場合もあります。

Q:ADHD(注意欠如多動症)と双極性障害(双極症)は重複する症状があり、診断が難しい場合があると聞きました。治療法には違いがあるのでしょうか?

A:子どもの双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)では、似ている症状が見られることがあります。

また、双極性障害(双極症)と診断される特徴的な症状としては、以下のようなことが挙げられます。

ADHDに対する治療薬(メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシンなど)は多くの場合有効ですが、双極性障害(双極症)を伴う場合、躁症状の悪化を招く可能性があります。双極性障害(双極症)の治療薬(気分安定薬、抗精神病薬)を併用することで、症状のバランスをとる必要があります。

Q:高校生の子どもが双極性障害(双極症)と診断されました。どんな点に気をつけてサポートすればよいでしょうか。

A:双極性障害(双極症)は躁状態と抑うつ状態を繰り返す病気であり、これが日常生活や人間関係に影響を及ぼします。家族が、病気の特徴を理解し、適切に対処することが大切です。双極性障害(双極症)は生活リズムが崩れることで症状が悪化しやすいといわれています。規則正しい生活を維持できるようにしましょう。また、症状を悪化を引き起こす環境がないか、学校との連携も大切になります。双極性障害(双極症)は、治療を継続することが安定した生活を送るために不可欠になっていきます。薬物療法を継続してできるように、サポートしていきましょう。

双極性障害(双極症)、ADHD(注意欠如多動症)にまつわるコラム

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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