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高級住宅続々、別荘ニーズ追い風 「秋谷ブランド」に熱視線 2027年にはインターナショナルスクールも

タウンニュース

海岸沿いに戸建て住宅や集合住宅が建ち並ぶ秋谷の立石海岸

相模湾を抱きながら南北に伸びる横須賀市西海岸地区。その一角にある秋谷地区が今、不動産関係者らから富裕層向けの開発エリアとして熱視線を浴びている。別荘地やセカンドハウスニーズを追い風に、海岸沿いに高級住宅街や集合住宅が建ち並び、かつて「南葉山」と称された場所は「秋谷ブランド」として新たな価値を醸成しつつある。開発の最前線を探った。

「秋谷エリアは芸能人や著名人が別荘を構える知る人ぞ知る別荘地。立石海岸や江の島、富士山、そして美しい夕日を望む贅沢なロケーションです」

昨年11月、秋谷に新たに建設された高級賃貸マンションのメディア向け内覧会。案内した不動産会社のスタッフが、物件の魅力を声高に紹介した。

風光明媚な景色を見渡せる眺望や著名建築家が設計した機能性とデザイン性。家賃は19万8千円から、最高層の3LDKは90万円と高額だが、同日時点で27戸のうち、4割の入居が決まっているという。

開発したのは横浜市に本社を構える大藤不動産。登壇した戸熊敦哉社長は「富裕層向けのビジネスが賑わう中、秋谷エリアが新たなブランドとして確立されつつある」と手応えを語る。

秋谷エリアの住宅建設ニーズは高級物件を中心に活況だ。同社によると、戸建て平均販売価格は過去約10年で4634万円から6578万円と、4割近く上昇。土地の価格も高騰し、場所によっては3年前から3倍近く上がっているケースもあるという。戸熊社長は開発地としての先見性をこう語った。

「立地環境のポテンシャルに加え、開発途上。すでに別荘地として確立された葉山や鎌倉よりも開発に乗り出しやすい」

多様な人が居住

横須賀市と葉山町にまたがる湘南国際村では、2027年8月に小中一貫のインターナショナルスクール「秋谷葉山国際学園」(仮称)が開校する見通しだ。全学年で定員440人を想定し、グローバルな視点を育む「国際バカロレア教育」を視野に人材育成に取り組む。

用地利活用の優先交渉権者に選ばれた秋谷国際学園運営会社の梅田優祐社長は秋谷について「自然豊かな土地で漁師やクリエイター、米軍など多様な背景を持った人がいる。子どもたちにとっても『自分らしく生きる』ことに寛容な街」と評価。めぐりの森を活用した自然教育や最先端のテクノロジー教育を組み込むとしており、「土地の特性を最大限生かした学校にしていきたい」と意気込む。

市関係者も期待

深刻な人口減少に歯止めがかからず、対策が喫緊の課題となっている横須賀市。自然減が進む秋谷エリアも昨年の人口は前年比で2・6%減で、市平均の1・1%減を上回った。一方、開発によるブランド化について、市関係者は観光振興や定住の促進にもつながるとして対策の好機と受け止める。

市は2021年4月、秋谷の一部市街化調整区域の開発行為基準を見直し、ホテルや商業施設を建設できるエリアを拡大した。今年度廃止される「秋谷老人福祉センター」の跡地には、1月中にも休憩や宿泊が可能な便益施設などを公募する。

市都市戦略課の吉田裕一課長は「市全体のブランド化を目指しているが、秋谷は特にポテンシャルが高い。交流人口が増加することで将来的な移住定住促進の可能性もあり、秋谷を先例としてブランド化に弾みをつけたい」と波及に期待を寄せた。

昨年11月に開かれた高級賃貸マンションのメディア向け内覧会(上)と2027年8月に開校を予定する「秋谷葉山国際学園(仮称)」

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