「何だか肩が痛いけれど……。」肩のこり・肩の痛みを放置してしまうと起こること【別冊NHKきょうの健康】
肩のこり、肩の痛みは「そのうち治る」と思っていませんか?
2024年11月に発売となった『別冊NHKきょうの健康 40歳からの肩こり・肩の痛み ほぐして、鍛えて、治療で改善』(監修:今井晋二〔滋賀医科大学教授〕)より、放っておくと怖い「肩のこり・肩の痛み」についての解説をご紹介します。
肩のこり、肩の痛みは「そのうち治る」と思っていませんか?
中高年で、肩こりや肩の痛みを経験したことがないという人はほとんどいないでしょう。例えば、次のようなケースに心当たりはないでしょうか。
●日常的に、肩の張りやこり、痛みに悩んでいる
●ある日突然、肩に強い痛みが起こったことがある
●夜になると肩の痛みが強くなり、眠れない
●肩に違和感や痛みがあったが、最近は腕が上がりにくくなっている
●肩の痛みを放っておいたら、ゴリゴリ音がするようになった
このような肩の不調があっても、歩行への影響はほとんどないことから、仕事や家事、趣味を休んできちんと対策をしようと考える人は多くありません。このため、押したり、もんだり、市販の鎮痛薬を使ったりして一時的な改善を図るだけにとどまることが少なくありません。
しかし、肩の不調には、急いで治療する必要がある重大な病気が隠れている場合があります。また、「肩が多少痛いくらい大丈夫」「そのうち治るだろう」と油断していると、家事や食事、着替えなどの日々の活動に支障が生じ、やがては首や腰の痛みや変形を招くこともあります。生活の質が低下することで、抑うつ状態やフレイル(介護が必要な状態の「一歩手前」)に陥る危険性もあります。
なかなか改善しない肩のこりや痛みはもちろん、激しい肩の痛みや腕が上がらないなどの症状は、肩が発する「危険信号」です。放置せず、今すぐ対策を始め、健康な肩を取り戻しましょう。
「何だか肩が痛いけれど」を放っておくと
40歳を過ぎると、多くの人が経験する肩のこりや痛み。年齢や忙しさを理由に安易に考えたり、我慢したりして、放置していることが多いのではないでしょうか。
「そのうち治るわよね!」
「ゆっくりお風呂に入れば治まるだろう」
「少しもめば大丈夫」
「市販薬で何とかなるだろう」
「仕事は休めないから我慢しよう」
「きっと五十肩。すぐに治るだろう」
「肩の痛みくらい大したことない!」
「歩けないわけでもないし……」
こんな状態を続けていると……
生活の質の低下を招く
肩の痛みや可動域が狭くなって腕の動きに制限が出ると、肩や腕、手を使う作業に支障が生じるようになります。痛みのために不眠になったり、日常生活の動作が難しくなることもあります。
「食事がうまくつくれない、口元に運べない」
「家事や掃除が滞る」
「体や頭を洗うのが難しい」
「日常生活の動作がうまくできない」
「着替えがおっくうになる」
「痛みのために眠れない、途中で目が覚める」
「スポーツ、園芸、日曜大工などを楽しめない」
それでも何もしないでいると……
フレイル
加齢によって体重や歩行速度、筋力などが低下し、心身が衰えた状態。「虚弱」という意味。介護が必要な状態の「一歩手前」ともいわれる。肩の痛みなどによる生活の質の低下から、転倒・骨折や、低栄養が起こったりするとフレイルの危険性が高まる。
首や腰の痛み、変形
生活の質が低下するほどの肩のこりや痛みを放っておくと、筋肉の緊張が強くなり、姿勢が悪くなる。すると、首や腰の筋肉、関節にも大きな負担がかかり、痛みや変形が起こる可能性がある。
抑うつ状態
肩の不調や生活の質の低下のために、気分が落ち込んで何もする気になれない状態が続き、憂うつで悲しい気持ちになったり、身近な人と話すことをおっくうに感じたり、不安や焦りを感じて落ち着かずイライラしたりする。放っておくと抑うつ状態が強くなる可能性もある。
これらの危険を防ぐためにも、我慢と放置は禁物です。『別冊NHKきょうの健康 40歳からの肩こり・肩の痛み ほぐして、鍛えて、治療で改善』では、症状から簡易的に原因を探るチェックと、原因ごとの解説、また肩の健康維持のためのストレッチ&筋トレ、改善したい生活習慣の5つのポイント、病気があると疑われる際の受診・診断・治療のステップなどについて、詳しく解説しています。
監修:今井晋二(いまい・しんじ)
滋賀医科大学教授。1989年滋賀医科大学医学部卒業。滋賀医科大学医学部附属病院整形外科科長。専門は整形外科、特に肩関節外科。日本肩関節学会理事長、日本スポーツ整形外科学会代議員。滋賀医科大学医学部附属病院整形外科(滋賀県大津市瀬田月輪町)
◆『別冊NHKきょうの健康 40歳からの肩こり・肩の痛み ほぐして、鍛えて、治療で改善』より
◆TOP写真:mapo/イメージマート