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「きょうだい」同時の寝かしつけ コツは時間差対応と究極の“塩対応”だった! 東大医学部卒医師ママが伝授

コクリコ

東大医学部卒のママ医師であり、小児スリープコンサルタントの“もりたま先生”こと、森田麻里子先生に聞く、子どもの睡眠トラブル。連載4回目は、「朝なかなか起きられない」子どもへの対策についてお聞きしました。

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医師で小児スリープコンサルタントの森田麻里子先生(以下、もりたま先生)の元に寄せられる、睡眠に関するお悩み。「寝かしつけ」と「夜泣き」の次に多いのが、「寝起き」についてです。子どもの睡眠トラブル最終回は、子どもたちの寝起きに関するお悩みに答えていただきました。

森田麻里子(もりた・まりこ)
医師・小児スリープコンサルタント。1987年、東京都生まれ。東京大学医学部医学科卒業。長男の夜泣きに悩んだことから、睡眠についての医学研究を徹底的に調査、赤ちゃんの睡眠と健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立

睡眠サイクルが落ち着くのは3歳前後

これまで、「赤ちゃんの寝かしつけ」や「幼児の寝かしつけ」、「夜泣き対応」についてもりたま先生に解説していただきました。子どもの睡眠に関するトラブルや悩みは3歳ごろまで続くもの。年齢に応じた子どもの睡眠サイクルは、どのように発達してゆくのでしょうか?

「細切れで寝たり起きたりを繰り返していた新生児期を過ぎ、睡眠サイクルが変化する3~4ヵ月が、最初の寝かしつけ難関期。それを過ぎると生後半年ごろには、夜泣きを始めるようになります。10ヵ月~1歳になると、精神的な発達も顕著になり分離不安が起こって、泣いて起きてしまうパターンも。そこから2歳児になると、次は『寝てくれない』や『早く起きてしまう』などのお悩みが聞かれます」(もりたま先生)

2歳以降~ お昼寝時間の調整を

2歳以降のお悩みには、お昼寝の兼ね合いが原因として挙げられます。

「今までは昼の12時になったら自然と眠くなって寝てくれていたのが、なかなか昼寝をしなくなってきたりするのが2歳前後です。体力がつくのと、もっと遊びたい、寝ているよりも起きていたいという意思がかなり強くなってきます。イヤイヤ期にも入るので、スムーズなお昼寝ができなくなってくるんですね」(もりたま先生)

しかし、寝ないなら寝ないで、夕方には疲れて機嫌が悪くなり、気がついたら夕飯の準備をしている間にいつの間にか寝てしまっている……などが起こりがち。そうなるともちろん夜は寝られず、睡眠時間の調整が難しくなってきます。

「保育園児だとお昼寝タイムが必ずあります。特に3歳過ぎからは、昼にたっぷり寝てしまうことで、夜なかなか寝付けないという問題が出始めてきます。ただ、2018年に保育指針が変わって、“午睡はその子の必要性に合わせる”ということになっているので、保育園に預けている親御さんは、昼寝時間の調節を園に相談してみてください」(もりたま先生)

園には就寝時間が遅くなっていることを伝え、お昼寝時間の固定や短縮をお願いしてみましょう。

なぜこんな暗いうちから目が覚めているの!? 早起きした子を放置して、親は寝ていてもいいの? など、「子どもの早朝起き」に悩まされるママパパも多くいます。

「前日にすごく早い時間に寝てしまった、などの理由がなければ、早起きに関しては、寝室環境がひとつの原因として考えられます。注意したいのは“光”ですね。特に夏場であれば、日の出が早くなって部屋が明るくなることで起きてしまうことがあります」(もりたま先生)

写真:yamasan/イメージマート

まずしっかり部屋を遮光することで、明るくなって目覚めてしまう、というケースは改善されます。

「一方で、『うちの寝室には窓がないんです』なんていうご家庭でも、どうしても早起きをしてしまう子がいる。これには夜泣きと同じく、あまり介入しないのがひとつのポイントです」(もりたま先生)

起きてしまった子には最低限の対応のみで「起きていてもいいよ、でもまだ寝る時間でみんな寝ているから静かにしていてね」で終わり。

「ママは一緒に遊べないんだよっていうのを伝えて。一緒に遊んでもらえると思うとどこまでも起床時間が早くなります」(もりたま先生)

あとは、「お腹が減った」という理由で起きる子も。

「起床してすぐ朝ごはんにしている子もいると思うのですが、早起きして朝ごはんを出す、という生活になってしまうと親御さんも辛いですよね。だから、どんなに早起きしても、朝ごはんの時間は動かさないほうがいいんです。早朝起きに悩んでいた2歳児で、4時とか5時に起きて朝ごはんを食べていたというご家庭でも、朝ごはんを6時まで待ってもらったら早起きが改善された、というケースがあります。

あと夜ごはんですが、しっかり食べておいたほうがよいでしょう。特に赤ちゃんを卒業したての1歳代のお子さんでは、1回の食事量も少なく、夜中にお腹が空いて起きてしまう子もいます。

その場合は、寝る前に補食(ふかしいも、おにぎり、バナナ、チーズ等)をおすすめすることもあります。寝る直前に食べないほうがいい、というのは主に学童期以降かなと考えています」(もりたま先生)

日中の光をたくさん浴びるのがカギ

子どもは成長するにつれて徐々に日中眠らなくても一日活動できるようになり、そうなると睡眠時間やサイクルも安定します。

就学前は特に、起床の時間を整えたい時期。「朝が弱くて就学したら心配」「ようやく起きたと思ったらソファでうとうと。もしかして睡眠時間が足りていないのかも?」なんて不安はつきません。

「それぞれの体質もありますが、朝起きる時間になっても身体が起ききらないというのには、3つの原因が考えられます。1つ目は、そもそも睡眠時間が足りていないというケース。就寝時間が遅いため、朝も眠い、というパターンです。単純に早寝を心がけ、睡眠時間のボリュームを増やすことで解消されます。

2つ目は、体内時計が夜型になっている場合。朝型か夜型かは、個人差もありますが、日中に浴びている光の量が関係してきます。特に午前中、日中にしっかり日の光を浴びて活動すると、きちんと夜は眠くなります。

夜早めにすっと眠れると、朝になれば元気に起きるというリズムが整うので、朝型人間に戻してあげるためには、昼間に陽の光を浴びることが大事なんです」(もりたま先生)

夜強い光を見せない

「3つ目は、夜の活動に関連してきます。小さなお子さんで、夜に光が強いところに行くということはあまりないとは思いますが、例えば塾の帰りの小学生が夜のコンビニに寄ったりする習慣がついている場合、影響がある可能性が考えられます。夜に強い光を浴びると、体内時計は夜型に動いてしまうので、朝起きられない原因になりやすいんです」(もりたま先生)

先生の元へ相談しにきた親子で、「保育園後、スーパーに寄って買い物をする習慣を改善してもらったら子どもの睡眠の質が良くなった」というエピソードがあるといいます。商業施設などの強い光を、夜に浴びる習慣は無くしたほうが良いでしょう。

「ただ、忘れてはいけないのは、昼と夜の光のバランスが大事ということ。つまり、昼間にきちんと光を浴びていたら、夜に多少光を浴びたぐらいは大丈夫。逆に、夜に光を浴びがちな子どもは、日中にしっかり光を浴びることが大事ということです。

光を浴びるというのは身体で受け止めるわけではなく、目から入る光のことをいいます。日光は桁違いに明るい光なので、子どもが日中外で過ごす時間というのがすごく大事なのです」(もりたま先生)

寝起きを良くする2つのテクニック

もうひとつ。子どもの寝起きをよくするために前日の夕食も重要ともりたま先生。

「寝る直前の食事が睡眠を浅くするということは、大人だとはっきりエビデンスが出ています。学童期で塾に遅くまで通っている子の場合だと、帰宅後に夕食を取ると、どうしても遅い時間になってしまいますよね。そんな場合におすすめしたいのが、“夕食の分割”です。

重めのおかずやごはんものは塾前に食べてもらい、帰宅後は野菜やスープを食べるなど、ごはんを分けるというもの。基本的に夜遅い時間に重いものを食べるのは、睡眠のためには避けるようにしましょう」(もりたま先生)

もうひとつ覚えておきたいのが、起床時目が覚めやすい心理的なテクニック!

「寝る前に、『起きたら◯◯しようね』と、あらかじめ楽しみなことを伝えておくのも効果的です。幼児なら、『起きたらアンパンマンを観ようね』と約束してから寝ると、起こすときに『アンパンマンが観られるよ』と言うだけで、頑張って起きてくれることもあります」(もりたま先生)

学童期になるとモノで釣るのはなかなか難しそうですが、1日の活動に楽しいことが見つけられると布団から気持ちよく出られるようになるかもしれませんね。

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全4回にわたってお届けした、小児スリープコンサルタントもりたま先生による、子どもの睡眠のお悩み回答。

先輩ママたちに「大きくなったら落ち着くよ」「大変なのは今だけ、時間が解決してくれる!」なんて言われても、渦中にいる親にとっては重い問題。睡眠不足による体調や精神的な不調は、別の大きな問題へも繫がってきます。

少しでも親子で質の良い睡眠を取って、毎日を元気に過ごせると良いですね。

取材・文/遠藤るりこ
撮影/神谷美寛

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