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これが “めんたいロック” の源流だ!サンハウスの傑作アルバム「有頂天」リリースから50年

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1975年06月25日 サンハウスのファーストアルバム「有頂天」発売日

リリースから50周年を迎えたサンハウスの名盤「有頂天」


日本のロックの大きな分岐点となったサンハウスのファーストアルバム『有頂天』がリリースから50年を迎えた。同アルバムのリリースは1975年6月25日。矢沢永吉率いるキャロルの解散から2ヶ月後。そしてダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」がヒットチャートに浮上した時期とほぼ同じである。

伝説のデルタブルースシンガーでありギタリストの “サン・ハウス” から名前を拝借したこのブルースロックバンドは、1970年に博多で結成。その後 “めんたいロック” と呼ばれるようになるシーンの源流にいたバンドだ。サンハウスは、アメリカで発祥したブルース、そのブルースが海を渡りイギリスの土壌で新たな解釈が加わったブリティッシュビート、そして1970年代半ばの時流だったグラムロックなどを、独自のセンスとメンバーの力量でオリジナルとして昇華。いわばサンハウスは日本における “ロックの翻訳者” だったということだ。

インモラルな趣を感じずにはいられない 「レモンティー」


『有頂天』リリース時のメンバーは、菊(柴山俊之 / ボーカル)、鮎川誠(ギター)、奈良敏博(ベース)、篠山哲雄(ギター)、鬼平(坂田紳一 / ドラムス)の5名。リリースされたアルバムの帯に書かれたキャッチコピーは “禁じられた絶叫‼” だった。

このキャッチコピーは言い得て妙だ。菊のボーカルは、ロックのダイナミズムを端的に表現しながらも、どこか秘め事をあらわにするようなインモラルな趣を感じずにはいられない。本作に収録されている「レモンティー」の「♪しぼって 僕のレモンを」や、「ミルクのみ人形」の「♪俺のミルクのみ人形は 大事な秘密の宝物」といった性的メタファーを潜ませているリリックに、聴き手は深層心理をえぐられたようなゾクゾクした快感に陥るのだ。

それだけではない。「スーツケースブルース」や「風よ吹け」といった曲では、孤独と向き合い、自己の内面と葛藤する姿を浮かび上がらせていたり、「もうがまんできない」や「ロックンロールの真最中」といった曲では、リミッターを振り切るようなロックンロールの性急さが全面に打ち出され、理屈ではない扇動的な魅力に溢れている。このように、『有頂天』はブルースやブリテイッシュビートを基盤としながらも非常に多面的なアルバムになっており、その後の日本語ロックの在り方に大きな影響を及ぼしているのである。

サンハウスを源流とした “めんたいロック”


サンハウスは、同年に日比谷野外音楽堂でデビューライブを行い、全国ツアーを行うなど精力的な活動を展開。しかし1978年3月25日に発売されたライブ盤『ドライヴ・サンハウス』のリリースと同時に解散してしまう。そして1980年代に入るとサンハウスの音楽に影響を受けたザ・ルースターズがデビュー。九州のロックバンドの魅力を伝えるキャッチフレーズとして “めんたいロック” という言葉が使われていく。

今となってはこの言葉に耳慣れない人も多いかと思うが、1980年代初頭の音楽シーンで急先鋒となった博多、北九州のバンドを総称するものとして、当時の音楽雑誌で頻繁に用いられていた。当事者たちにとっては歓迎される言葉ではなかったのかもしれないが、ルーツミュージックへの惜しみない愛情と、日本語をどのように効果的にロックンロールのメロディーに同化させるかという試行錯誤から成立した、この土地のバンドの独自性がこの言葉と共に定着していった。

鮎川誠が東京で再起を賭けたシーナ&ロケッツ、ザ・ルースターズと同じく1980年にデビューした陣内孝則率いるザ・ロッカーズ、そして翌1981年にはザ・モッズ…。サンハウスの撒いた種はそんな後進たちによって育まれ、日本のロックシーンに大きな痕跡を残した。もしサンハウスが存在しなかったら、博多、北九州の音楽シーンは全く違うものになっていただろうし、日本のロックバンドの系譜も全く違うものになっていただろう。特に1980年代後半からのバンドブームにおいては、ザ・ルースターズやザ・モッズの影響を多大に受けたバンドが数多く輩出されたので、こういった流れも存在しなかったかもしれない。

“めんたいロック” の源流であり、“ロックの翻訳者” として日本のロックシーンに大きな影響を与えたサンハウス。彼らのスリリングかつダイナミックな魅力を詰め込んだ傑作アルバム『有頂天』のリリースから半世紀。今改めてこのアルバムの重要性とバンドの功績を再確認しておきたい。

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