非認知能力とは?種類や鍛え方、注目されている背景などを解説
人間の内面や行動に関わるさまざまな要素のうち数字で測れないものを「非認知能力」といいます。非認知能力は社会で活躍していくために欠かせないスキルとして、多くのビジネスパーソンに注目されています。
そこでこの記事では、非認知能力の意味や種類、注目されている背景や鍛え方などについて分かりやすく解説します。
非認知能力とは?
非認知能力は、人間の内面に関わるさまざまな要素を包括する概念です。社会で成功するために必要な能力ということから「世渡り力」ともいわれています。 数字で判断しづらい能力であるものの、日常生活や職場での人間関係、そして個人の成長に大きな影響を与えます。
非認知能力が注目されるようになったきっかけ
ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のジェームズ・ヘックマン氏は、幼児教育が子どもたちに及ぼす影響を長期にわたり調査し、その結果、IQではない力、すなわち非認知能力が高いグループは、そうでないグループと比較して犯罪率が低く、社会に適応し安定した生活を送れていることを明らかとさせました。この研究を機に、非認知能力は社会で活躍していくために必要な要素として世界中で注目されはじめます。
近年は日本でも、学校等への育成支援ツールの試験導入を促すための補助金制度が採択されるなど、非認知能力に関連する学習環境が整備されつつあります。
EQとの関係性
「心の知能指数」「感情知能」と言われるEQ(Emotional Quotient)は、非認知能力に含まれる能力のひとつ。自身や周囲の感情を適切に察知・管理し、他者との関係を円滑にする能力です。EQは感情に焦点を当てているのに対し、非認知能力は忍耐力や創造力など幅広い能力にフォーカスしています。ビジネスシーンではもちろんのこと、近年では子育てや教育の分野でもEQの重要さが注目されています。
「認知能力」との違い
非認知能力を理解するためには、認知能力との違いを知ることが重要です。
「認知能力」の特徴としては以下が挙げられます。
五感を介して得た情報により理解や判断をする、学力や知能に関連する能力 数学的思考や言語能力、記憶力などが含まれる 学校の成績やIQテストで測定可能
一方「非認知能力」の特徴は以下のとおりです。
個人の内面や行動傾向、社会性に関連する数値化できない能力 向上心や対人スキル、ストレス耐性などが含まれる 日常生活での行動観察を通じて評価
また、両者は育成方法にも違いがあり、認知能力は主に学習を通じて向上しますが、非認知能力はさまざまな経験や人間関係を通じて培われることが多いとされています。
なぜ非認知能力が重要視されているのか
前述のとおり、非認知能力は世界的で注目され、日本でも近年、教育やビジネスをはじめさまざまな分野で重要視されるようになりました。その理由は主に以下の2つです。
人工知能との差別化を図るために必要な力
AI技術の急速な発展は、非認知能力の重要性を高めている要因のひとつです。計算や記憶などIQで測定可能な分野はAIの得意領域であるため、 AIとの差別化を図るためには、人間ならではの社会性や創造性、独自性などの認知能力以外の要素が重要 になります。非認知能力を高めることは、AI時代を生き抜く武器となり得るのです。
長い人生を豊かに生きるためにも役立つ
医療技術の進歩や栄養状態の改善により、現代の人々の寿命は伸びています。長寿社会において 多様化する社会と関わりを持ち続け、生きがいを感じながら生きるためには、コミュニケーション能力や思考力、適応力などの非認知能力が欠かせません。
モノよりも心の豊かさを求められる現代において重要視されている、肉体的・精神的・社会的に満たされている状態を指す「ウェルビーイング」を継続的に高めるためにも非認知能力は大切だといわれています。
大人でも非認知能力を鍛えることはできる?
非認知能力は幼少期の経験に深く根ざした要素が多いといわれています。しかし、大人になってからも、継続的な訓練等を行えば非認知能力を向上させることは可能です。むしろ成人期に入ってからのほうが、忍耐力や協調性など、社会的なスキルは伸ばしやすいといった見方もあります。前章で述べたように、非認知能力はAI時代や長寿社会で活躍していくために必要不可欠です。大人こそ非認知能力を鍛え、ビジネスに役立てていくべきでしょう。
非認知能力の種類
非認知能力は人間の内面に関わる多様な要素を示す概念で、その種類は多岐にわたります。ここでは、一例として8つの非認知能力を紹介します。
忍耐力
困難に直面しても諦めずに取り組み続ける能力は、課題解決や自己成長の基盤となります。この力は、自身の限界に挑戦する場面で特に重要です。
対人関係能力
他者と円滑に関係を築き、それを維持していく能力は、社会生活を送るうえで欠かせません。この力に長けている人は、相手の立場を理解し、好意的なコミュニケーションを図れます。
セルフコントロール
自己抑制と理性的判断を含む感情管理能力は、冷静な意思決定を可能にします。この力を持つ人は、感情に左右されず、状況を客観的に分析し、適切な行動を選択できます。
創造力
新たなアイデアを生み出す創造力は、革新的なサービスや製品の開発につながります。既存の概念を組み合わせたり、全く新しい視点を導入したりする能力が含まれます。
状況適応力
状況に柔軟に対応し適切な判断と行動がとれる適応力は、予期せぬ事態に直面した際に重要となります。この力は、ストレスを管理したり、心に負ったダメージを回復したりする際にも有用です。
意欲や向上心
学習や業務に対する強い意欲や向上心は、困難な課題にも粘り強く取り組む原動力となり、集中力の維持と目標達成に大きく貢献します。
メタ認知能力
自己の状況を広い視野で捉える能力は、偏りのない客観的な判断を可能にします。この力は、複雑な問題の全体像を把握し、適切な解決策を見出すのに役立ちます。
自己肯定感
自己に対する肯定的な見方は、心理的な安定をもたらし、その結果、他者への思いやりや共感の心を育む基盤となります。この内なる安定感は、対人関係の質を向上させる重要な要素となります。
非認知能力を鍛える方法3選
前章のような非認知能力は社会で活躍していくために欠かせないスキルですが、誰しもはじめから高い非認知能力を兼ね備えているわけではありません。非認知能力は大人になってからでも鍛えられるので、下記で紹介する方法をぜひ試してみてください。
多様な経験を積む
ビジネスにおいては複数の部署や業界、海外赴任、日常生活においてはさまざま趣味に取り組むなど多様な経験を積むことで、自分の得意・不得意を自覚できます。これにより 非認知能力のなかで足りない要素はなにか把握できるので、それを伸ばすための取り組みが可能 です。また、自分はどのようなスキルを身に付けたいかを自問し、そのためにはどのような経験を積めばよいのか考えてみるのも効果的でしょう。
目標設定と自己省察
明確な目標を設定し、定期的に自己評価することで、状況を広い視野で捉えられる「メタ認知能力」や困難に諦めずに立ち向かう「忍耐力」が強化されます。ビジネスシーンでも日常生活でも達成したい目標を決める際は、 達成度を客観的に振り返られるように具体的な数値を設定したり、できるだけ細かい行動計画を立てたりすることがポイント です。
積極的に他者と関わる
多様な人々と交流する機会を持つことで、社会生活を送るのに欠かせない「対人関係能力」や新たなアイデアを生み出せる「創造力」が育成されます。ビジネスであれば上司や同僚、日常生活であれば家族や友人など身近な存在だけでなく、 普段あまり関わることのない人々と接することで、新しい交流関係が生まれ、視野も広がります。 また、自分の非認知能力のレベルを判断するのは難しいと感じるときは、他者からフィードバックをもらうのもよいでしょう。
まとめ
今回は、人間の内面に関わる数字で測れない能力「非認知能力」について、その種類や鍛え方などについて解説しました。非認知能力は社会で活躍していくために重要な要素であり、ビジネスパーソンとしては欠かせないスキルです。この記事を参考に、ぜひ非認知能力への理解を深め、スキル向上に努めてみてください。
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