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鎧をまとった頑丈な魚<キホウボウ>の食べ方を探る! 深海200mにすむ未利用魚

サカナト

キホウボウ(提供:椎名まさと)

キホウボウ科はホウボウに近い仲間とされますが、その体には硬いヨロイのような骨板があり、それをはがさないと食べられません。そのことから、底曳網漁業などで獲られた未利用魚の利用が叫ばれるようになった今でも、あまり食用とされていない種です。

そこで筆者は、このキホウボウを美味しく食べるための方法を考えてみました。

【画像】料理した<キホウボウ>

キホウボウ科の魚

キホウボウ科はスズキ目カサゴ亜目に含まれており、ホウボウ科と近い仲間とされますが、体は硬い骨板に覆われています。

また、胸鰭の下方にある遊離軟条は2本であること(ホウボウ科では3本)、頭部腹面にひげをもつこと(ホウボウ科ではひげはない)などの特徴によりホウボウ科の魚と識別できます。

キホウボウ(撮影:椎名まさと)

分布域は広く、世界中の温暖な海域に分布していますが、ほとんどの属はインドー中央太平洋(ハワイを含む)のみに分布し、アメリカ東海岸および大西洋ではキホウボウ属のみが見られます。

ちなみに体には硬い骨板があることから、キホウボウ科の魚は英名で「armored searobins」(装甲ホウボウ)と呼ばれています。

ホウボウと近縁ではない<セミホウボウ科>

なお、標準和名に「ホウボウ」の名前がつく分類群としてもうひとつ、セミホウボウ科というグループがいます。

この仲間はホウボウと近縁ではなく、カサゴ亜目とは異なる分類群(セミホウボウ亜目)に位置づけられます。

セミホウボウ(撮影:椎名まさと)

このセミホウボウが何の仲間かということについては謎が多くあり、従来はキツネアマダイ科(アマダイ科を含む)との関係性が指摘されていました。

現在はキツネアマダイ科の魚とセミホウボウ科の魚とは特に近縁なものではないとされており、Nelson et al.(2016)ではヤガラ科やヨウジウオ科魚類などとともにヨウジウオ目の中に含められるなどしています。

キホウボウの仲間を見分ける

キホウボウ属とヒゲキホウボウ属の魚の差については、キホウボウ属には前鰓蓋骨に顕著な棘がなくヒゲキホウボウ属の魚にはあるのが主な違いです。

主に矢印の箇所が違います(提供:椎名まさと)

日本産のキホウボウ科魚類はキホウボウ属、ヒゲキホウボウ属、イソキホウボウ属、オニキホウボウ属、イトキホウボウ属、コウトウキホウボウ属の合計6属が知られています。

その中でキホウボウを含むキホウボウ属は日本からキホウボウ、ツノブトキホウボウ、ヘリキホウボウ、モヨウキホウボウの4種が知られており、前鰓蓋骨に顕著な棘を持たないことによって、ほかの5属と容易に識別できますが、キホウボウ属内の見分けは難しいこともあります。

見分けるのが難しい<キホウボウ>と<ヘリキホウボウ>

その中でも、特にキホウボウヘリキホウボウは非常によく似ているのですが、さらに厄介なことに、吻突起の形状や体側に並ぶ骨板の数については個体内で変異も多いです。

『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊、2013、東海大学出版会)で図示された同定形質、つまり体側骨板数および吻突起の形状という形質は、いずれも同定に使えないことも判明しています。

現在はキホウボウとヘリキホウボウの識別については、最長髭の分枝数、下顎の総髭数、ヘリキホウボウは吻突起の基部から前鰓蓋骨にかけて骨質突起が張り出すが、キホウボウではその部分は張り出さないなどの特徴によって識別されます。

写真からこの2種を見分けるのはよほどキホウボウの仲間をよく見ていない人でないと難しいでしょう。

キホウボウを入手する

キホウボウは基本的に水深200メートルを超える深海に生息するため、従来はなかなか入手しにくい魚でした。

しかしながら2020年ごろから、静岡県沼津市戸田で獲れる深海魚を販売する「深海魚直送便」や「ヘンテコ深海魚便」という取り組みなどがスタートしたことにより、入手がしやすくなりました。

ヘンテコ深海魚便の中の魚。真ん中にキホウボウ類が多く入っている(撮影:椎名まさと)

これらのサービスは、従来一般になかなか入手することが難しい深海魚を一般向けに販売するという試み。前者は一般的に食用になる深海魚、例えばアオミシマやソコダラ類、ハシキンメ、カサゴ類、エビの類を販売してします。

後者は一般に食用にならない、細かいサイズの深海魚を中心に販売するというもので、キホウボウはどうしても後者の方に入ることになります。ただし、「ヘンテコ深海魚便」は基本的に食用を目的としていないサービスです。

筆者は今回、「ヘンテコ深海魚便」を購入し、その中に入っていたキホウボウを食べてみました。

キホウボウの仲間を食べる

キホウボウは先述したように、体がヨロイのような骨板に覆われているため捌きにくく、肥料にされることはあったものの、これまではあまり食用になることはなかった深海魚です。

しかし、味は意外と美味しいのです。

キホウボウとヒゲキホウボウの塩ゆで(撮影:椎名まさと)

そこで、キホウボウの仲間を食用にできないか、色々な方法で考えてみました。今回はキホウボウを塩ゆでにして食べる方法をご紹介します。

キホウボウの下処理&塩ゆでレシピ

まずひっくり返し、鰓蓋の下方あたりに切れ込みを入れます。

鰓蓋の下方に切れ込みを入れる(撮影:椎名まさと)

続いて、肛門から前方にハサミを入れて、先に切れこみを入れたところまで切れ目を入れます。

肛門から前方にハサミを入れす(撮影:椎名まさと)

腹部に切れ目を入れたら、そこから内臓を出します。

内臓を出す(撮影:椎名まさと)

これで、キホウボウの開きの完成です。そのまま鍋の中に入れます。

キホウボウの開き(撮影:椎名まさと)

茹でる際、鍋に塩を入れます。温度や塩の量は適当に。

塩を入れて茹でる(撮影:椎名まさと)

一度湯を通すと鱗がはがれやすくなり、容易に手でも剥くことができます。

茹でたキホウボウ(撮影:椎名まさと)

その後、身をつまむようにして食べます。これが意外なほど美味しかったです。

手間がかかるのが難点 別の方法にも挑戦

しかし、やはりどうしても食べるのに手間がかかってしまうのが難点といえます。

今後もキホウボウ科の魚を美味しく、かつ手間がかからないように食べる方法を考えてみたいと思います。

(サカナトライター:椎名まさと)

文献

橋本慎太郎・和田英敏・伊東正英・大富 潤・本村浩之. 2022. 薩摩半島西方から得られた鹿児島県における確かなヘリキホウボウの記録. Japan. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 16: 29?32.

Imamura, H. 2000. An alternative hypothesis on the phylogenetic position of
the family Dactylopteridae (Pisces: Teleostei), with a proposed new classification. Ichthyol. res., 47(3):203-222.

中坊徹次編(2013)、日本産魚類検索 全種の同定 第三版、東海大学出版会

Ono, M. and T. Kawai. 2014. Review of armored searobins of the genus
Peristedion(Teleostei: Peristediidae)in Japanese waters. Species Diversity,
19: 117?131

和田英敏・甲斐嘉晃・本村浩之.2020.岩手県沖から得られた北限記録のヘリキホウボウPeristedion riversandersoni,および本種の標徴に関する新知見.タクサ,48: 63?70.

山田梅芳・時村宗春・堀川博史・中坊徹次(2007)、東シナ海・黄海の魚類誌、東海大学出版会

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