タブレット代は誰が払う? 揺れる高校のデジタル化
今では、学校の授業でタブレットを使うのはすっかり当たり前になりました。
これは、国が進めてきた「GIGAスクール構想」で、子供達1人につき1台の端末を整備しようという取り組みの一環ですが、これまで多くの公立高校では、国の交付金を使ってタブレットを「無償で」貸し出してきました。
その交付金が終了するのを受けて、来年度から「保護者が自分で購入する」という形に切り替える県が出ています。
例えば岐阜県では6万円以上の負担になる見込みで、「見直してほしい」という署名も提出されています。
公立高校のタブレット代 どう考えますか?
教育がどんどんデジタル化する中で、学びの道具の費用を誰が負担するのか。街で保護者のみなさんに聞きました。
「ちょっと疑問ですよね。こっちが貸与してほしいって言ったわけじゃなくて、国の方針で始まったんだから、国が最後まで責任を持ってほしい。保護者ばかりが負担増えるのは・・・。」
「払える家と払えない家がある。払えない家だと格差につながるから問題かな。」
「物価が上がってる中で、無償貸与はありがたいですよ。家ではあまり使わない端末だし。これからの子どもたちの教育環境は国が作らないと。」
「習い事だけで月10万円とか。とにかく色々お金がかかるんです。もう国でガツンと負担してほしい。」
タブレットは、2020年度から国の交付金を使って一気に整備が進み、公立高校でも無償で貸し出す自治体が多くありました。
ただ最近はその仕組みを見直すところが増えていて、すでに全国の34の都道府県が保護者負担で整備しています。
なぜ保護者負担に?愛知県の判断
そのひとつが愛知県です。来年度の新入生から、原則、家庭で購入してもらう方向に切り替える予定ですが、
なぜこの見直しが必要だったのか。愛知県教育委員会 ICT教育推進課の稲垣さんに聞きました。
愛知県教育委員会 ICT教育推進課 稲垣さん
コロナで対面授業ができなくなり、新型コロナ地方創生臨時交付金を使って、公費で一気に整備を進めました。ただ、タブレットの更新時期が近づき、これまでと同じように公費で更新すると多額の費用がかかること、また多くの都道府県ではすでに「個人所有」の端末を使っていること、個人所有だと家庭でも自由に使えることで家庭学習の質も上がる。こうした点を考えて家庭での購入に切り替えることに決めたということになります。
貸し出されるタブレットだと、自治体によっては使用ルールがかなり細かく決められていて、授業用としてのみの使用を想定している場合があります。
また、使えるサイトやアプリも制限されていることもあるので、なかなか自由に使えない。
そこで「家庭でも使えるように個人所有のタブレットを使おう」という動きも広がっています。
そして、タブレットは一般的に5年ほど使うと更新時期になり、愛知県では、更新に年間50億円が必要になる見込みで、財政的に大きな負担となります。
「個人使用をどこまで認めるか」、そして「自治体の財政負担」、この2つの理由が、タブレットが保護者負担になる背景です。
国の支援はどこまで?制度の境界線
ただし、自治体ごとの判断に任されているのは「公立高校」だけで、小中学校については、状況が全く違います。
その理由について、再び愛知県教育委員会 稲垣さんのお話です。
愛知県教育委員会 ICT教育推進課 稲垣さん
小中学校は義務教育なので、国が責任を持ってICT環境を整備する必要があります。一方、高校は義務教育ではないので、個人で使用する物品は原則として個人負担になる、という考え方によるものだと思います。ただ愛知県としては、端末の更新費用が自治体の負担にならないように高校も含めた財政支援を国に要請しております。
高校は義務教育ではないため、国の直接的な補助が受けにくいという構造がある、とはいえ、いまやタブレットがないと授業が受けられません。家庭の負担感もそれぞれ違うため、どの子も同じように学べる環境をどう作るかが問われています。
教育のデジタル化が進み続ける中で、その土台をどう作るか。大きな論点となりそうです。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:森本茉菜)