元カレに気持ちを伝えたかっただけなのに…ある女性に訪れた『最悪の結末』
好きな人がいること自体が幸せとはいえますが、思いが強すぎると自分の存在をねじ込ませたくなり、極端な行動に走るのはよくあること。
相手が元恋人の場合は、楽しかった記憶が未練を加速させ、好きだと思うと同時に「忘れられる自分」への恐怖が募ります。
ですが、その自分が相手にどう受け取られるかは、こちらでは決められないのが現実。
元彼への未練と執着から極端な行動に走ってしまったある女性は、どんな結末を迎えたのでしょうか。
自分に素直になれないまま別れてしまったことが…
29歳のAさんは、一ヶ月前に別れた元彼への未練が断ち切れずに苦しい思いをしていたといいます。
「私が依存してばかりというか、LINEの返事とか電話とか、返してくれないと不安でこっちから何度もかけたり、週末のデートも私の都合に合わせてもらうのが当たり前で、『もう付き合えない』とある日突然言われました」
それまで、彼氏からは「もう少し俺の気持ちも考えてほしい」と冷静に話し合うときがあり、「そのときはごめんなさいと謝るのだけど」、結局は離れているときの不安にAさん自身が振り回されている状態でした。
問題は、予想していなかった突然の別れ話にAさんはすっかり動揺してしまい、
「気が付けば、『ひどい』ってまた彼を責めていました。
私の気持ちはどうでもいいのって、彼の不満が私を否定しているように感じて、苦しくて。
本当は、好きだから変わりたいと言いたかったと、後になって後悔しました」
デートの帰り際に「別れたい」と言い出した彼氏は、まともに話し合いができないAさんを見て諦めたのか、「とにかくもう終わりだから」と、その場を去っていったといいます。
素直になれなかったことを悔やむ気持ちは未練となり、何とか復縁できないかとLINEでメッセージを送りますが、ブロックされているのかいつまでも既読がつきません。
勇気を出して電話をかけようとしたら「お繋ぎできません」というアナウンスが流れ、元彼から拒否されていることをはっきりと知ります。
「忘れられる」恐怖
Aさんの元彼は普通の会社員であり、住んでいるアパートや勤め先をAさんは知っていました。
「思い切って部屋まで訪ねていったのですが、何度チャイムを押しても応答がなくて。
居留守を使われているのか本当にいないのかわからなくて、次の週も行ってみたのですが、やっぱり彼とは会えませんでした」
そのときは、「会ってきちんと謝罪したい。変わるからやり直してと言いたい」と、焦る気持ちが強かったといいます。
突然の別れ話から二週間が経っており、彼とは音信不通、LINEも電話も拒否が解除される気配はなく、
「このままでは忘れられてしまう」
と、最後に見た元彼の疲れた顔ばかり浮かんだそうです。
「さすがに、会社に電話するとか訪ねていくことはできませんでした。
それをすると絶対に嫌われると思ったし、付き合っているときから元彼が仕事熱心なことはわかっていたので」
いま思えば、我慢することができて本当によかったですと、Aさんはため息をつきます。
ですが、いっさいの連絡手段を封じられ、会いに行っても埒が明かない状態で、時間ばかりが過ぎていくことが、Aさんのなかで忘れられる自分への恐怖を育てます。
考えた「手段」とは
「友達のひとりが、携帯ショップで働いているのを思い出しました」
「何とかして元彼と話したい」という切羽詰まった気持ちは、ある閃きを生みます。
それは、もう一台新規でスマートフォンを手に入れ、それを使って元彼に連絡するというものでした。
「携帯ショップで働く友達に、『会社との連絡用にもう一台スマートフォンがほしい』と相談したら、格安SIMでの契約を勧められました。
いろいろと制限はあるけれど月の使用料などが安いし、機能もそこまで劣らないから、と言われましたね」
そもそも元彼と連絡がつく手段として新しい端末を考えたAさんにとっては、「格安SIMでも何でもよかった」のが実際の気持ちです。
それからは自分で情報を調べ、使いやすそうなものを決めます。
「正直に言えば、お金をかけてまで何をやっているのだろうって、落ち込む瞬間もありました。
それでも、これしか方法はないと自分に言い聞かせていて、あの頃は本当に思い詰めていたのだなと思います」
元彼に対して諦める決断がどうしてもできなかったAさんは、「とにかく話すことさえできれば何とかなると、元彼の気持ちなんてまったく考えていなかった」と振り返ります。
元彼が取った対応
元彼に連絡する専用の端末を手に入れたAさんの選択は、どんな結末を迎えたのでしょうか。
「ある日曜日の午後に初めて彼の番号にかけたのですが、出てもらえませんでした。
でもそれは『知らない番号から着信があったら、すぐに出ないで調べる』と話していたのを思い出して、仕方ないと思いました」
留守番電話に切り替わったけれど「私と知られたらまた拒否されるかもしれない」と思い、メッセージは残さずに切ったそうです。
その後は、「次の週の水曜日にもう一度かけたけどやっぱり応答はなくて、次は土曜日の午後にまた電話しました」と、いつか元彼が着信を取ってくれることを願いながら、かけ続けたそうです。
「もしもし」
やっとつながったのは、二週間後のことでした。
「あ、もしもし、私だけど」
突然流れてきた元彼の声に、Aさんは「胸が弾むような心地がした」といいます。
「え、◯◯?」
元彼が不審そうな声で返してくるのを、
「そう、私。突然ごめんなさい、どうしても話したくて」
と、勢い込んで話すAさんに対して、
「……」
元彼は黙り込みます。
「もしもし?」
無言になった元彼に不安になってAさんが呼びかけると、
「何の用?」
と、低い声が返ってきました。
「あの、別れたときにちゃんと話せなかったから……」
謝ろう、そう思っていたAさんは、元彼と話せるようになったら考えていた言葉を浮かべます。
ところが、
「ここまでする?」
元彼の返事は、明らかに自分を非難する響きがありました。
「……」
不穏な気配に、今度は自分が黙る側になったAさんに向かって、
「もう本当にそういうところが怖い。
二度とかけてこないで。次に連絡してきたら、警察に通報するから」
元彼は、きっぱりとした口調で言い放ちます。
「この会話は録音しているから、と言われました。
そこまでするんだと、自分が今どう思われているか、一気に目が覚めたようで」
「……」
絶句しているAさんに、
「非常識だよね、本当に怖い」
という元彼の言葉が流れてきて、通話は切られます。
一方的に関わりを持たれる側の恐怖
元彼が本当に通話を録音していたのかどうかは、わかりません。
ですが、それを相手に告げるのは行動を牽制する意識があるからで、元彼にとってAさんはいわば「敵」ともいえる存在になっています。
「警察に通報する」とすぐに口から出ることでも、Aさんがまったく歓迎されていないことが伝わります。
Aさんのどこが「非常識」だったのか、「すべて拒否設定されていると知ってもまだ別の端末から連絡を寄越してくること」「電話をかけ続けるのに留守番電話にメッセージを残さないこと」など、相手が感じる負担やプレッシャーをいっさい無視している点です。
それを「怖い」と表現して繰り返した元彼にこそ、「忘れてもらえない恐怖」があります。
一ヶ月前の別れ話に納得がいっていないのはAさんの事情であり、それを「別の端末を使ってまで」何とかしようとする姿を見れば、その執着の深さにぞっとするのではないでしょうか。
「電話を切られてから、しばらく放心状態でした。
警察に通報するとか録音しているとか、ああ私本当にまずいことをしているんだなって、じわじわと実感が湧いてきて」
留守番電話にメッセージも残さない正体不明の存在が自分だとわかって、元彼はどんな思いがしたか、
「今は、本当に何てことをしたのだろうと、反省しています」
と、Aさんはうなだれます。
極端な言動に走る前に
それからまた一ヶ月が過ぎ、Aさんは
「自分のしたことが苦しくて、また電話して元彼に謝りたいとか、衝動が出てくるときもありました。
でもまた拒否設定されただろうし、次は本当に通報されるかもしれないと思ったら、何もできなくて」
と、身動きの取れない状況をひたすら耐えているといいます。
元彼の気持ちを考えれば落ち込むばかりで、
「ストーカーですよね、私」
Aさんは自分の印象が底に落ちたことも、実感しています。
未練をどうするかはAさんの問題であり、元彼は関係ありません。
「話せば何とかなるはず」と極端なやり方に走っても、それは相手の受け取り方しだいで展開は変化するものであり、Aさんのケースのように最悪ともいえる終わりも当然にあります。
度が過ぎた言動で相手に与える恐怖は、どんな言い訳も通じないのが現実です。
相手に何とかしてもらって成就できる方法ではなく、まずはみずからその気持ちと向き合い、解決していく姿勢が、自分のためといえます。
*
「やり直したい」と思い詰めても、相手が同じ気持ちでなければ当然うまくはいかないですよね。
こんな恐怖を体験する側の気持ちを考える余裕を失えば、結果は相応に悪いものが返ってきます。
自分の言動で身を滅ぼさないためにも、相手を巻き込むのではなくまずみずから気持ちを律していく強さを、しっかりと持ちたいですね。
(mimot.(ミモット)/李丘)