いつまでも自分の足で歩くために!「変形性膝関節症」の原因からセルフケア・受診のポイントまで【医師監修】
年齢を重ねるとともに、膝に違和感や痛みを覚える方は少なくありません。これらの症状は「変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)」と呼ばれる疾患に起因する場合があります。放置すると生活の質が低下し、思うように外出や趣味を楽しめなくなる恐れも。そこで今回は、シニア世代の方に向けて変形性膝関節症の基礎知識から予防法、さらに痛みの対策までをわかりやすく解説します。
【こんな方は要注意!チェックリスト】
朝起きたときや立ち上がるときに、膝がこわばる歩き始めや階段の昇り降りの際に痛みを感じる最近、歩幅が小さくなり、長時間歩くのがおっくうになった膝が腫れたり、熱を持ったりすることがある正座がしづらくなり、関節が伸びにくいと感じる以前に比べ、膝や股関節が曲がってきたように見える
上記のうち1つでも心当たりがあれば、変形性膝関節症のリスクが高まっている可能性があります。早めに対策を講じることで、将来の不安を減らし、日々の生活を快適に送りましょう。
そもそも変形性膝関節症って何?
変形性膝関節症とは、関節を覆っている軟骨が何らかの原因ですり減ってしまい、痛みや変形を引き起こす病気です。関節軟骨(なんこつ)は骨と骨が直接こすれ合わないようにする“クッション”の役割を果たしていますが、加齢や負荷の蓄積などにより摩耗が進むことで、保護機能が低下してしまいます。
軟骨の摩耗
加齢や肥満などで関節にかかる負担が増え、軟骨がすり減りやすくなる。
痛みや腫れ、こわばり
炎症が起きて痛みや腫れを伴い、朝起きたときや長時間座ったあとに動かしにくい。
変形
軟骨のすり減りが進むことで、関節そのものが変形することもある。
変形性膝関節症が最も起こりやすい部位は膝関節で、症状が進むと日常生活に大きな支障をきたし、歩行や立ち上がり、階段の昇降といった動作が難しくなるケースも珍しくありません。次いで股関節、手関節の順に多く発症します。膝、股関節に比べて手指は変形するリスクが高いのも特徴です。
変形性膝関節症の原因とリスク要因
ここでは、変形性膝関節症の主な原因やリスクを押さえましょう。原因を知ることは、予防や進行を抑える上で重要です。
加齢
軟骨は加齢によって弾力性が失われ、擦り減りやすくなる。
姿勢の悪さ
背中が丸い猫背のような姿勢だと、膝や股関節に負担がかかり、O脚を招く。
肥満
体重が増えるほど、膝や股関節にかかる負担が大きくなる。
過度な運動や負荷
長年にわたる激しい運動や肉体労働で、関節への負荷が蓄積する。
外傷(けが)
骨折や靭帯(じんたい)損傷などのけがをした関節は、変形性膝関節症になりやすい。
遺伝的要因
家族性に変形性膝関節症を起こしやすいケースもある。
変形性膝関節症の症状と進行段階
変形性膝関節症は、初期段階では痛みや腫れが軽度で、見過ごされがちです。しかし、進行すると日常生活への大きな支障が出てきます。
初期段階(違和感)
「少し痛い」「立ち上がるときにコキッと音がする」など、軽い違和感を覚えますが、日常生活に大きな支障は出ません。
中期段階(慢性的な痛み)
軟骨の摩耗が進み、関節が腫れたり熱を持ったりすることも。階段の昇り降りや長時間歩行がつらくなります。
後期段階(変形)
関節が変形して歩行が困難になる場合も。痛みのため外出を控えがちになり、筋力や活動量が一気に低下する悪循環に陥りやすくなります。変形性膝関節症は、早期に対策を始めるほど進行を抑えやすいとされています。上記のような症状に心当たりがあれば、早めに専門医に相談することが大切です。
家庭でできる予防とケア
変形性膝関節症を完全に防ぐのは難しい場合もありますが、生活習慣を見直すことでリスクを減らしたり、進行を遅らせたりすることが可能です。
1. 適度な運動と筋力トレーニング
ウォーキングや軽いスクワット(椅子に座った状態からの立ち上がり運動など)を習慣にしましょう。膝や股関節を支える筋肉を鍛えると安定性が増します。
2. 正しい姿勢と歩き方のチェック
歩くときは背筋を伸ばし、ガニ股やO脚にならないよう注意。「かかと→足裏全体→つま先」の順で着地するよう心がけると、関節に余計な負担がかかりにくいです。
3. 体重コントロール
肥満は関節への負担を増すため、バランスのよい食事と適度な運動で体重管理をおこないましょう。
4. 栄養バランスの取れた食事
たんぱく質やビタミンD、カルシウム、コラーゲンなど、関節や骨の維持に役立つ栄養素を意識的に摂取しましょう。魚、肉、大豆製品、乳製品、きのこ類などをバランスよく組み合わせるのがおすすめです。 また、日光を浴びるとビタミンDが生成されるため、朝の散歩もおすすめです。
5. 痛みが強いときは無理をしない
痛みがあるときは、無理に動かさず患部を冷やしたり、湿布やサポーターを活用したりして安静を保つことも大切です。
受診のタイミングと治療~整形外科で相談を
膝に違和感を覚えた時点で、可能な限り早めに整形外科を受診しましょう。症状が軽いうちから受診することで、投薬(消炎鎮痛薬など)やリハビリ(筋力訓練・関節可動域訓練)などの治療を早期に始められ、変形の進行を抑えることにつながります。必要に応じて、関節注射や手術が検討されるケースもありますが、まずは生活習慣の改善やリハビリで症状をコントロールできるようにすることが目標です。
【受診の目安】
■チェックリストに複数当てはまり、日常的に膝に違和感がある
■膝や股関節の腫れがなかなか引かず、生活の中で痛みや熱感が続く
■階段の昇降や歩行が極端にしづらくなってきた
まとめ
変形性膝関節症は「年齢だから仕方ない」と放置しがちな症状ですが、適切な予防策と早めの受診、そして日々のケアを続けることで痛みを和らげ、進行を遅らせることができます。日常生活の中で無理のない範囲で運動を取り入れ、体重をコントロールし、「膝に違和感がある」「O脚になってきた」という場合は、すぐに整形外科を受診することが大切です。いつまでも自分の足でアクティブに暮らすために、ぜひ今日からできることから始めてみましょう。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
監修/鞆 浩康先生(医療法人友広会 整形外科ひろクリニック 医師)
医療法人友広会 整形外科ひろクリニック 院長。日本体育協会公認スポーツドクター、日本医師会認定産業医、日本オリンピック委員会強化スタッフも務める。高知医科大学医学部を卒業後、岸和田徳洲会病院や大阪市立大学附属病院で経験を積む。手技療法に強い関心を持ち、2004年12月24日にオルソグループを設立。「医療と健康を通じて、笑顔と元気を届ける」という理念のもと、「究極の医療グループ」を目指して活動している。