唯一無二の馬券師・弥永明郎『伝授』第9回 よく聞く競馬格言の真偽を伝授
競馬では色々な格言があるけど、根拠のないものも少なくない。これを誰かから聞いて、そうなのかと何も考えずに鵜呑みにするのが一番良くない。
今回はよく言われている格言をいくつか取り上げて、俺なりに意見してみたいと思う。
「厩舎の2頭出しは人気薄を狙え」は偶然に過ぎない
「厩舎の2頭出しは人気薄を狙え」と言われているけど、これは本当にたまたま人気だった方が飛んだ時に、人気薄の方が来たということを言っているだけ。
そもそも厩舎側が、人気馬を来させないようにしようとか、人気薄を台頭させようとか調整できるわけがない。
まず多頭数出しは、調教師によって全く気にせず何頭でも出す人と、絶対やりたくないという人がいる。2頭出しはしたくないという調教師の心理としては、1つのレースで勝利の枠は1つしかないわけだから、複数頭出すのは馬主に失礼と考えるからだ。あとはオーナーサイドが、それでも構わないというかどうかというところもある。
だけど、多頭出ししたくないとは言っても重賞レースなら数は限られている。未勝利戦だって芝はそんなにレース数がないのだから、例えば芝の1600mを使いたいが直近で1レースしかなく、使いたい馬が何頭かいたとしたら使うしかない。
厩舎としてはそういう事情で複数頭出走させるわけだから、たまたま馬券を買う側の人が人気馬から馬券を買い、その馬が負けて同じ厩舎の人気薄の方が馬券に絡んだから、「同じ厩舎の人気薄を狙うべきだった!」とか言い始めて、これが格言のように言われるようになったのだろう。
「雨の日は蹄が大きい馬はダメ」は一理ある
「雨の日は蹄が大きい馬は滑るから良くない」という格言があるが、これは確かに蹄が大きいと滑るというのは否めない。道悪でも色んな種類があるから、雨が降っているから一概に割り引くのではなく、水が浮いて滑る馬場なのかどうかを判断して、これは普通の馬なら滑るような馬場だなと思った時には俺も気にはする。
滑る馬場と判断した場合、まず蹄が寝ているベタ爪の馬は人気馬でも馬券的には外す。爪の大きい馬も滑りやすいので良くない。あと前脚が綺麗に伸びる馬も個人的には買いたくないね。
逆に道悪の時に狙いたいのは、ゴールドシップ産駒の立ち爪で、繋ぎが前は立っていて、後ろの繋ぎは短めで寝ている馬。これは以前、ゴールドシップ産駒の中で道悪が上手い馬がいたんだけど、その馬の爪や繋ぎがそういう形をしていて、それと同じような形の馬がゴールドシップ産駒には結構いて、道悪が上手い馬は総じてその形をしていた。とはいえベタ爪でも道悪を走っている馬がいるから、絶対とは言い切れないところはある。
ゴールドシップ産駒のメイショウタバルは重馬場の毎日杯(GⅢ)を6馬身差で勝利している
「夏は牝馬」「夏は芦毛」に根拠はない
「夏は牝馬」というのは昔から言われている。牡馬は休養に出る馬が多くて、牝馬の方が夏のローカルの平坦な新潟コースを走りやすいとかそういうことなんじゃないだろうか。根拠はないし、俺自身は夏場に牝馬だから買いたいとか、牡馬だから買いたくないとかは一切考えない。
同様に「夏は芦毛を買え」「毛色が黒い馬は良くない」と言う人もいるけど、これは単なる見た目のイメージだと思っている。黒いと暑そうだなぁとか、芦毛は涼しそうだなぁとかね。
だけど、人間にしたって黒人は暑さに強いわけだしアテにならない情報だよ。
芦毛の名馬 クロノジェネシス/ゴールドシップ
結局は競馬新聞に書いてある情報はわずかしかないから、昔から言われている格言とか根拠のないところに流れてしまって、全部それが独り歩きしてしまう。誰も違うって理由も示せないから、そういうものかなと思ってしまう。
絶対的な情報なんてないから色々なファクターを考えて予想を組み立てるしかないけど、何事も信じ過ぎるのは良くない。
それよりはパドックで生のサラブレッドを自分自身の目で見て判断してもらいたい。
弥永 明郎(やなが・あきお)
唯一無二の馬券師。デイリースポーツ「馬サブロー」の美浦取材班・看板記者。グリーンチャンネル中央競馬中継のパドック解説でもお馴染み。狙った穴馬は決して逃さない「競馬界のゴルゴ13」。業界歴は長く、騎手、厩舎関係者、馬主など人脈も幅広い。<!-- .c-authorbox__contents -->