なぜ私たちは〈北欧〉に心惹かれるのか?アイスランド発『突然、君がいなくなって』ほか“北欧映画”6選
“北欧の魅力”を存分に味わえる映画6選
カンヌ国際映画祭<ある視点>部門のオープニング作品に選出された、アイスランドの俊英ルーナ・ルーナソン監督の最新作『突然、君がいなくなって』が、6月20日(金)より全国順次公開となる。
北欧映画は近年、アカデミー賞®のみならず世界中の映画祭で評価され注目を集めている。先日行われた第78回カンヌ国際映画祭では、デンマークのヨアキム・トリアー監督の最新作『Sentimental Value(英題)』がワールドプレミア上映され、今年の映画祭最長となる15分間ものスタンディングオベーションが送られ、見事グランプリを受賞したことも記憶に新しい。
その地で暮らす「人」や豊かな「文化」が非常に色濃く反映され、静かな演出と深い感情を味わうことができる北欧映画。寒々しくも静謐な北欧ならではの美しいロケーションの中で、強く生きる人々の姿がリアルに描かれているのが特徴だ。また、幸福度ランキングでは常に北欧の国が上位を占めており、“憧れの国”としても知られている。
ということで今回は、そんな“北欧発の映画”の魅力を存分に味わうことができる映画を6作、厳選してご紹介したい。
『突然、君がいなくなって』(2025年)
※アイスランド・オランダ・クロアチア・フランス合作
ある日突然、最愛のひとを失ったら。その悲しみを誰にも打ち明けられないとしたら――。北欧発の現代(いま)を描いた人間ドラマ。
アイスランド・レイキャビクの美大に通うウナには、大切な恋人ディッディがいる。しかし、二人の関係は秘密だ。彼には遠距離恋愛をしている長年の恋人、クララがいる。ある日、ディッディは「クララに別れを告げに行く」と家を出た後、事故に巻き込まれ帰らぬ人となってしまう。誰にも真実を語ることができないまま、ひとり愛する人を失った悲しみを抱えるウナ。そんなとき、何も知らないクララが現れて――。
行き場のない気持ちに翻弄されるウナの姿、徐々に近づいていく“愛する人を失った”二人の距離を、狂おしいほどの緊張感とかつてない繊細さで映し出す本作。16mmフィルムカメラで写し取る、夏の初めのアイスランドの水平線は美しく輝き、要所要所で登場する魅力あふれる街並みや建造物とともに観る者を魅了する。“喪失からの再生”という普遍的なテーマに触れながら、アイスランドと日本の違いも垣間見ることができるだろう。
『突然、君がいなくなって』は6月20日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
『わたしは最悪。』(2021年)
※ノルウェー・フランス・スウェーデン・デンマーク合作
“理想の未来”と“シビアな現実”の間で揺れながらも、自分に正直に人生を選択していく女性の恋と失敗をリアルに描いた成長の物語――
舞台はノルウェー・オスロ。主人公のユリヤは、学生時代は成績優秀だったが決定的な道が見つからず、人生の方向性をなかなか決められずにいた。恋愛もまた同じく、年上の漫画家アクセルと付き合ってはいるけれど、どこか心が満たされていない。そんなある夜、ユリヤは偶然紛れ込んだパーティで出会った青年アイヴィンと惹かれ合う。新たな恋の勢いに乗って、今度こそ自分の人生をつかもうとするユリヤだったが……。
第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で女優賞を受賞、第94回アカデミー賞®では国際長編映画賞と脚本賞の2部門にノミネートされ、世界の映画祭を席巻。ヨアキム・トリアー監督は前述の通り、最新作「Sentimental Value(英題)」でも第78回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞している。
ロマンティックな夢とヒリヒリする現実、喜びと悲しみの両面を痛烈なほどリアルに描く本作。「あの日、あの時、私もそうだった」と観る者を一瞬で過去の自分へと連れ去り、「あれで良かった」と肯定してくれる、圧倒的“共感”映画でもある。
『コンパートメント No.6』(2021年)
※フィンランド・ロシア・エストニア・ドイツ合作
1990年代を舞台に、最悪の出会いから始まる最愛の旅を世界が絶賛! アキ・カウリスマキ監督を彷彿とさせるフィンランドの新たな才能。
1990年代のモスクワ。留学中のフィンランド人学生ラウラは、恋人と共にロシア北部のムルマンスクへ古代のペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く予定だったが、ドタキャンされてしまい急遽ひとり旅をすることに。そんな彼女が乗り込んだ寝台列車6号コンパートメントにいたのは、粗野なロシア人炭鉱労働者のリョーハ。最悪の出会いから始まるが、長い旅を続ける中でお互いの内面に触れ合った2人は、不器用な優しさや魅力に気づき始め……。
第74回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、グランプリを受賞。長編デビュー作『オリ・マキの人生で最も幸せな日』がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門の作品賞に輝いたフィンランドの新鋭ユホ・クオスマネンが、同国の作家ロサ・リクソムの小説を基に撮りあげた長編第2作。主演は本作でフィンランドのアカデミー賞・ユッシ賞の主演女優賞に輝いたセイディ・ハーラ。リョーハを演じたのは、第97回アカデミー賞®受賞作『ANORA アノーラ』での好演が最近話題となったユーリー・ボリソフ。
携帯もSNSもない1990年代を舞台に、アキ・カウリスマキ監督を思い起こさせるメランコリーとオフビートなユーモア、そして雪をも溶かす純な心が、不器用で孤独な魂を結びつける愛の物語。
『サーミの血』(2016年)
※スウェーデン・デンマーク・ノルウェー合作
家族、故郷を捨ててでも少女が願ったのは、自由に生きることだった――。北欧スウェーデンの知られざる迫害の歴史。監督自らのルーツに迫った渾身の感動作。
1930年代、スウェーデン北部の山間部に居住する少数民族サーミ族は、支配勢力のスウェーデン人によって差別を受けていた。サーミ語を禁じられた寄宿学校に通う14歳のエレ・マリャは、優秀な成績を収め進学を望んでいたが、教師からは認めてもらえない日々を送っていた。ある日、彼女はスウェーデン人のふりをして夏祭りに忍び込み、都会的な少年ニクラスと出会い恋に落ちる。この出会いをきっかけに、今の生活から抜け出したいと思っていたエレはニクラスと生きる選択をし、街を出ていくことに――。
監督のアマンダ・シェーネルはサーミ人の血を引いており、自身のルーツをテーマにした短編映画を手がけた後、同じテーマを扱った本作で長編映画デビューを果たした。主演はノルウェーでトナカイを飼い暮らしているサーミ人のレーネ=セシリア・スパルロク。北欧の少数民族サーミ人の少女が、差別や困難に立ち向かいながら生きる姿を描いたドラマ。
『LAMB/ラム』(2022年)
※アイスランド・スウェーデン・ポーランド合作
禁断が、産まれる――。カンヌ国際映画祭受賞&アカデミー賞アイスランド代表選出した、世界が騒然! そして絶賛した禁断のネイチャー・スリラー。
アイスランドの山間部に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。ある日、羊の出産に立ち会った二人は、“羊ではない何か”が産まれてくるのを目撃。過去に子供を亡くしていた二人は、“アダ”と名を付け我が子のように育てることにする。アダとの生活は幸せだったが、やがて予期せぬ出来事が二人を破滅へと導いていく……。
『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』などの特殊効果を担当したバルディミール・ヨハンソンの長編監督デビュー作。『プロメテウス』『ミレニアム』シリーズのノオミ・ラパスが主人公マリアを演じ、製作総指揮も務めた。アイスランドの作家・詩人として知られ、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の歌劇脚本を手がけたショーンがヨハンソンとともに共同脚本を担当。
話題作を次々と世に送り出す気鋭の製作・配給会社<A24>が北米配給権を獲得し、アカデミー賞®国際長編部門アイスランド代表作品にも選出されるなど批評家からも高い評価を受けた。衝撃的な設定の中にもリアリティを持った世界観を構築し、世界から称賛を浴びた問題作。
『枯れ葉』(2023年)
※フィンランド・ドイツ合作
名匠アキ・カウリスマキ監督が描くまっすぐな愛!! ノスタルジックな風景と多彩な音楽、とぼけたユーモア、あふれ出る映画愛。
ヘルシンキの街で、理不尽な理由で失業したアンサと、酒に溺れながらもどうにか工事現場で働いているホラッパ。ある夜ふたりはカラオケバーで出会い、互いの名前も知らないまま惹かれ合う。しかし、不運な偶然と過酷な現実が、彼らをささやかな幸福から遠ざけてしまう。果たしてふたりは、無事に再会を果たし想いを通じ合わせることができるのか? いくつもの回り道を経て、物語はカウリスマキ流の最高のハッピーエンドにたどりつく。
フィンランドの名匠アキ・カウリスマキが前作、2017 年公開の『希望のかなた』以降、5 年ぶりにメガ ホンをとり、孤独を抱えながら生きる男女が、かけがえのないパートナーを見つけようとする姿を描いたラブストーリー。カウリスマキ監督作『パラダイスの夕暮れ』『真夜中の虹』『マッチ工場の少女』の<労働者3部作>に連なる4作目で、厳しい生活の中でも生きる喜びと誇りを失わずにいる労働者たちの日常をまっすぐに映し出す。
カウリスマキ映画のなかでもかつてないほどまっすぐな愛の物語となった本作は、戦争や暴力がはびこる世の中で、それでもたったひとつの愛を信じつづける恋人たちの姿を通して、今を生きる希望を与えてく れる。
<北欧の気分を満喫したくなったら……>
アイスランド映画『突然、君がいなくなって』×metsä 夏のはじまりキャンペーン
埼玉県飯能市の北欧ライフスタイル体験施設<メッツァビレッジ>では、北欧の伝統行事・夏至祭をモチーフにした「メッツァの夏至祭2025」を、2025年5月24日(土)~6月22日(日)で開催中。同イベントでは『突然、君がいなくなって』とmetsäのコラボキャンペーンも実施。今後のコラボの詳細は、下記特設ページにて要確認。
「メッツァの夏至祭2025」詳細:https://metsa-hanno.com/lp/midsummer2025/
コラボ特設ページ:https://metsa-hanno.com/event/37685/