デビュー50周年【THE ALFEE】桜井賢の魅力!個性豊かな3人のボーカリスト
ルックスとキャラクターのギャップがメンバーで一番の桜井賢
口髭にサングラス、一見コワモテに見えるその風貌は、近寄りがたいオーラを放っている。しかし、THE ALFEEの桜井賢は、ライブやテレビ番組に出演した際に、いじられキャラとしてその場を温めるユニークなポジションでも知られている。筆者も先日、初めて御三方のインタビューに参加した際には “ステージやテレビでは気さくな雰囲気だけど、実際はどうなのだろう” と興味津々だった。ところが開口一番、出てきたのはぶっちゃけギャグ、あっという間にその場を和ませてしまうのである。ご本人のルックスとキャラクターのギャップで言えば、メンバーで一番であろう。
桜井賢は1955年1月20日生まれ。埼玉県の秩父出身。明治学院高等学校在学中の1970年に、同級生と結成したのがフォークグループ “コンフィデンス” だった。72年にフォークコンテストに参加した際に坂崎幸之助と出会い、その後コンフィデンスに坂崎、その後高見沢俊彦が加入するため、同グループがTHE ALFEEの母体であり、つまり桜井はTHE ALFEEの創設メンバーとして、ファンの間では認識されている。
アート・ガーファンクルを彷彿とさせる美声の持ち主
桜井の魅力は何といっても類稀なるボーカリストとしての資質にある。サイモン&ガーファンクルのアート・ガーファンクルを彷彿とさせる美声の持ち主で、実際にコンフィデンスもサイモン&ガーファンクルのコピーをしていたという。
コンフィデンス時代に発表した唯一のアルバムが、72年にリリースされたスクリーン・フォーク・アルバム『愛よこんにちは』のタイトル曲でリードボーカルをとっている。音源化されたものでは、これが最初の桜井ボーカルだ。バンド結成時はサイモン&ガーファンクルの他にも、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(以下:CSN&Y)の音楽性にも影響されており、同じく彼らに影響を受けたバンド、ガロが事務所の先輩にあたることもあって、THE ALFEEはガロの弟分的な立ち位置でもあった。
デビューが決まった際、当初は桜井の美声を活かした「危険なリンゴ」がA面になる予定が、レコード会社の判断で高見沢ボーカルの「夏しぐれ」がA面に、「危険なリンゴ」はB面に回され、桜井ボーカルでのデビューは幻となってしまう。ちなみに現在まで桜井はTHE ALFEEではベースを担当しているが、本来はドラマー志望だったという。インタビューでも “デビューしてからベースを覚えたんですよ” と半ば冗談めかして語っていたが、グループの音楽性を広げていくための選択だったようだ。
THE ALFEEの音楽性の核となる部分は、桜井あってのもの
初期はフォーク系の楽曲が多かったTHE ALFEEが、次第に高見沢のハードロックテイストの楽曲が増えていき、ロックバンドへと変貌していったことはご存知の通り。高見沢のエレキギターに坂崎のアコースティックギターが絡むサウンドは、どこにもない個性的なTHE ALFEEならではの音楽性となっていく。だが、実際のところ音楽性の核となる部分は、メンバーの中で一番活動が地味に思える桜井あってのものなのだ。
桜井は高見沢のようにソロ活動もなく、坂崎のように、加藤和彦とユニットを組んだり、フォーク・クルセダーズの再結成に参加したりといった話題性はない。THE ALFEE以外の活動にほとんど興味がないのだろう。しかし、実のところTHE ALFEEの特性である美しい3声ハーモニーは、桜井がアマチュア時代から傾倒しているサイモン&ガーファンクルやCSN&Yのハーモニーを主体とした、フォークロック的な音楽性を日本のポップミュージックに置き換えたものである。
全員がリードボーカルを取れるスタイルもCSN&Y的で、高見沢の書くハードロックの曲調は、桜井の繊細だがクセがなく、力強いハイトーンあってのもの。「暁のパラダイス・ロード」から「メリーアン」「星空のディスタンス」と続く、ブレイク期のリードが桜井だったこともこのバンドには必然だったと振り返って思う。ことに「星空のディスタンス」や、ライブの定番曲でもある「鋼鉄の巨人」は桜井が出せる音域ギリギリに高見沢が曲を作ったそうで、そこは桜井の音域と歌唱力の高さを信頼してのこと。というよりもTHE ALFEEの幅広い音楽性は、桜井ボーカルへの絶大な信頼があってこそ生まれたものなのだ。
安定したベースプレイと素晴らしい歌声を同時進行
さらに、ベーシストでありながらリードボーカルも兼任するという超絶技巧もやってのけている。ベースを弾きながら歌うというのは、弾いているリズムと歌メロが違うわけで、実はかなり難しい。ベースボーカルは、はっぴいえんどの細野晴臣、キャロルの矢沢永吉、Hi-STANDARDの難波章浩、Theピーズの大木温之、MONGOL800のキヨサク、THE BAWDIESのROYなどが知られているが、桜井もまた、安定したベースプレイと素晴らしい歌声を同時進行させている姿に驚かされる。
ベースはバンドの音を下支えするポジションであり、THE ALFEEサウンドの要は桜井にある。同時に、THE ALFEEの音楽的原点に桜井の嗜好したCSN&Yなどのハーモニーの魅力があることを踏まえても、このバンドの核を担っているのは桜井賢なのだ。
そして先日、2024年8月17日、18日に開催されたTHE ALFEEの夏イベ『Wind of Time 50年目の夏祭り』では、なんと「危険なリンゴ」が歌われた。桜井ボーカルによる幻のデビューA面曲が、50年目にして改めてファンの間でも注目を集めることとなったのだ。