養殖技術の救世主!大分県の「かぼすブリ」が克服した養殖魚の弱点とは?
大分県の養殖魚「かぼすブリ」を知っていますか?
かぼすがほのかに香る、爽やかな風味が特徴です。
実は、養殖ブリが抱えていた弱点を克服した存在として、近年注目を集めています。克服した弱点とは一体何なのでしょうか。
かぼすの力が引き出す、養殖ブリの進化
大分県の特産品であるかぼすの力によって、養殖ブリの品質と見た目が改善されました。
これまで養殖ブリには、切り身にした際に血合い部分が褐色に変わってしまうという長年の課題がありました。
鮮度には問題がなくても色の変化で見た目の印象を悪くしてしまうため、遠方への出荷や販売時に不利になることがあったのです。
天然のブリでも血合いの変色は見られますが、養殖の場合は特にその傾向が強く現れていました。そこで注目されたのが、かぼすとの組み合わせです。
ブリのエサにかぼすを取り入れることで変色が抑えられ、より鮮やかで美味しそうな切り身が保てるようになりました。
かぼすの成分が養殖ブリの見た目と品質を高め、安心して選べる商品へと進化させたのです。
科学的に裏付けられたかぼすブリの品質向上の理由
かぼすブリが従来の養殖ブリよりも優れた品質をもつのは、科学的な裏付けに基づいた「エサづくりの工夫」があったからです。
大分県農林水産研究指導センターでは、2007年からかぼすの抗酸化作用に注目した研究を進めてきました。
当初はかぼすの果汁をエサに混ぜていましたが、研究の進展により果皮を粉末状にした「果皮パウダー」を使う方が効果的であることが分かりました。
実際に、果皮パウダーをエサに0.5パーセントほど混ぜ30回に分けて与えると、血合い部分の変色を40時間遅らせることができたのです。
つまり、かぼすの抗酸化力は魚の酸化を抑え、血合い部分が鮮やかな状態を保てるようになったのです。こうした研究を重ね、かぼすブリという高品質なブランド魚が生まれました。
「味、香り、見た目」の三拍子がそろった美味しさの魅力
かぼすをエサに加える方法は、見た目の鮮度を長持ちさせるだけではありません。
魚の味や香りにも変化を与えました。
味覚センサーによる分析では、かぼすブリは、旨味やコクが増し、脂がしっかりとのっていながらも、さっぱりとした味わいと評価されています。
さらに、ブリの筋肉からは、かぼすに含まれる爽やかな香り成分「リモネン」が検出されており、魚特有の臭みが抑えられ、ほのかにかぼすの香りが感じられています。
つまり、味・香り・見た目の三拍子がそろった高い品質こそが、かぼすブリが選ばれる理由なのです。
美味しい秘密は、旬に限定した出荷にあり
かぼすブリが特別に美味しい理由は、出荷時期を「最も脂がのる冬季」に限定しているからです。
1年中出荷するのではなく、ブリの味が最も良くなる時期を選んで出荷することで、いつ食べても高い品質を保てます。出荷は10月頃から翌年3月までの半年間です。
また、かぼすブリは1尾ずつ丁寧に育てられ、出荷時にはすぐに締めて海水氷で冷却処理をするため、遠方に届ける場合でも美味しくいただけます。
さらに、生産から出荷までの履歴を追える「トレーサビリティ」体制も整っており、安心して購入できます。
このように、旬の時期に限定した出荷と徹底した品質管理が、かぼすブリの美味しさと信頼を支えているのです。
この冬、かぼすブリの美味しさを味わってみませんか?
かぼすブリは、養殖魚が抱えていた「鮮度」や「臭み」の課題を克服し、味よし、香りよし、見た目よしの三拍子がそろったブランド魚です。
これから旬を迎える季節、新鮮なお刺身や、さっと出汁にくぐらせるブリしゃぶで、上品な脂の旨味と爽やかな風味を楽しんでみませんか。
遠方にお住まいの方でも、通販を利用すれば品質管理の行き届いたかぼすブリをお取り寄せできます。
この冬、大分県が誇るかぼすブリを、ぜひ味わってみてください。
(サカナトライター:河野ナミ)
参考文献
養殖魚のブランド化に果たす行政・漁協の役割-大分県「かぼすブリ」を事例に
大分県漁協(大分県)-かぼすブリの生産・販売体制の構築