絹織物のまちを象徴する築100年のレトロ建築に自家製酵母のベーグルカフェ【sino.a Bagel dining】越中の小京都・城端に新しい交流の場
まだまだ厳しい残暑が続きますが、少しずつ秋の気配を感じるようにもなりました。富山県内でも各地で伝統的な祭りが開催され、実りの秋を迎えようとしています。
500年を超える古刹・善徳寺の門前町としてにぎわい、石畳の路地や古い蔵が残るまちなみから“越中の小京都”と呼ばれる富山県西部の南砺市城端では、毎年9月に「城端むぎや祭り」が開催されます。
平家の落人が唄ったとの云われも残る哀調を帯びた民謡と踊りで、まちの情緒がよりいっそう感じられる機会、城端を訪れてみては?
今回はそんな城端のまちめぐりと一緒に楽しみたい、オススメのレトロな風情を感じるカフェを紹介します。
築100年近くの文化財に誕生したカフェ
店があるのは、城端のまちの中心部にある「SHAREじょうはな織館(おりやかた)」の1階。
1928年に建てられたレンガタイル張りの西洋近代建築で、国の有形文化財に登録されています。
養蚕が盛んだった五箇山地域の生糸を使い、上質な絹織物の産地としても栄えた城端町。かつては城端織物組合の事務所や検査場として利用されていた建物です。
織館はそんな城端絹の歴史を象徴するような建物でしたが、2023年に閉館。
一時は取り壊しの危機にありましたが、クラウドファンディングを経て、現在は地域の交流スペースとして再生しています。
本物のレトロ空間… 居心地のいいゆったりカフェ
そんな「SHAREじょうはな織館」の1階に2025年5月にオープンしたのが「sino.a Bagel dining(シノベーグルダイニング)」。
名前の通り、ベーグルをメインにしたカフェです。
店内は高い天井に重厚感のある木の扉や窓の桟、昔ながらの少し歪んだ窓ガラスなど、建物の歴史をそのまま感じさせます。
観葉植物や大きな窓ガラスから差し込むやさしい光はナチュラルで、レトロでありながらどこか現代的な雰囲気も。
今と昔が交差する、不思議と居心地のよさを感じる空間です。
ショーケースにはベーグルやパン、焼き菓子が並びます。
中には地元の堅豆腐や南砺市産の野菜を使った、ここでしか食べられないようなベーグルも。
ベーグルにフレッシュな野菜や自家製ジャムを挟んだサンドイッチも人気です。
テイクアウト窓口も
ベーグルやサンドイッチ、ドリンク類はテイクアウトもOK。
建物の入り口そばに専用の小窓が設えてあるので、事前に電話で注文しておけばスムーズに受け取ることができます。
自家製小麦酵母のふわふわベーグル
選べるサンドイッチのランチセット
サンドイッチは単品でも食べられますが、ランチセットにすると地元野菜で作るデリ(おかず)と、ドリンクまたはスープが付いてきます。
今回は、無添加スモークサーモンと国産クリームチーズのべーグルサンドを。
ほんのりあたたかいベーグルに、塩気とまろやかさのバランスが絶妙で、間違いない組み合わせです。
ベーグルというと「噛み応えがある」とか「硬くて食べづらい…」なんてイメージがあるかもしれませんが、sino.a Bagel diningのベーグルはふんわりと食べやすく、年配のお客さんもおいしそうに味わっていました。
自家製の小麦酵母を使用しているそうで、小麦の豊かな香りがふわっと広がります。小麦粉は国産で、北海道と富山のものを使っているんだとか。
セットのデリも絶品です。
味が濃すぎず、薄すぎず、素材の風味を引き立てる絶妙な塩梅。
この日はじゃがいものコンフィに、きゅうりのアンチョビドレッシングマリネ、ししとうの焼き浸し。そして、少しスパイスの風味を感じる仕上がりナスとミョウガでした。
どれも地元・南砺市で作られた野菜を使ったものです。
ゆったり楽しむスイーツメニューも
自家製のスイーツメニューも充実しています。
店自慢のフレンチトーストは、プレーンと黒糖くるみコーヒーという2種類のベーグルをひと口サイズにして焼き上げています。
ボリュームたっぷりなので2人でシェアして食べるのもオススメです。
食べると…驚くほどもっちもち!! 卵液がしみこんだ部分はふわふわで、でも外側は焼き立てのカリッと食感も残っていて…噛むたびに食感が違ってすごく面白いんです。
自家製のバニラアイスは甘すぎず、そのまま食べてもよし、徐々に溶けていくのをソースのように絡めて食べるのもよし。同じく自家製のベリーソースが甘酸っぱく、全体を引き締めてくれます。
誰でも本屋さんのオーナー!? シェア図書館も併設
店の奥には「シェア図書館」なるスペースが。
みんなが自由に本を持ち寄って作っている本棚で、自由にカフェのテーブルへ持って行ってゆっくりと読むこともできます。
小説から実用書、子供向けの絵本に英語の絵本まで幅広いラインナップ。
本棚のひと区画をレンタルしてオーナーになれば、自分の書店を開くこともできるんだとか!
言われてみれば歴史書ばかり、山に関する本ばかり…と、棚ごとに特色が感じられます。販売している本もあるようなので、みんなで作る小さな図書館“兼”本屋さんという感じ。
自習スペースとしての利用もできます。
“図書館”なので、図書カードを作れば本を借りることもできますよ。
みんなが集まって 新しいことを発信する拠点に
店を営む本元さん夫婦は、以前は富山県内を中心に移動販売のベーグル屋さんをしていました。その後、妻・綾子さんの故郷である城端で、古民家にベーグル屋さんを開店しましたが、間もなく、幼いころから慣れ親しんだ「じょうはな織館」が取り壊しの危機にあるとわかって、いてもたってもいられなかったといいます。
そして、地元企業とともに建物存続のためのクラウドファンディングを開始。あれよあれよという間にこの織館の中でカフェを始めることになったんだそう。
歴史があり、重厚感ある建物だからこそ、最初は入りづらいかもしれない…でも、地域の子どもたちにも親しんでほしいと、店主の本元さん。
「歴史を感じるこの場所にみんなが集まって、何か新しいことを発信して行けたら」(達彦さん)
城端の魅力を伝えて未来に残すため、そして何より、硬くて食べづらい…なんてイメージを持たれがちなベーグルのおいしさを伝えていくため奮闘中です。
レトロな雰囲気漂うカフェで、まちの歴史にも想いを馳せながら、のんびりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
【sino.a Bagel dining】
住所 富山県南砺市城端648-1
営業時間 11:00~18:00(ランチは14:00まで)
定休日 月・火曜