猫の体調不良を招く『消化に悪いもの』5選 消化不良を起こした際の症状も紹介
猫にとって消化の悪いもの5選
猫にとって消化が苦手な食材を5つ紹介します。キャットフードの原材料として見かけることで安心して与えられそうな食材も多く、いずれも、身体を大きく害するものではありませんが、与え方や量によっては消化不良になってしまうものになります。与え方については、各項目を確認してください。
そして猫の本来の食性を理解することはとても大切です。
1.乳製品
猫は乳製品に含まれる乳糖を消化する酵素が不足していて、乳糖を分解するのが苦手なため、猫に牛乳を与えてはいけないといわれています。一方で、猫用ミルクやチーズなどの猫用おやつが売られていることに、疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
ペットフードメーカーが猫用に使用している乳製品は、製造過程で十分に乳糖を分解しており、酵素を持たない猫が摂取しても、消化不良を起こさないように設計して作られています。
一方、家庭で消費されている牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品は、猫用に乳糖が分解されていません。そのため、猫が好んで食べてしまうと、おなかを壊す可能性があるのです。
また、含まれる脂質の量が多いことなども消化不良につながる原因として挙げられます。 低脂質のものを選ぶようにすることや、普段与えているものに含まれる脂質の割合を把握しておくことはとても大切です。
2.穀物類
猫は完全な肉食動物であり、胃腸などの消化器官は穀物の消化に適していません。このことから、近年では、グレインフリーなど猫の消化に配慮したフードも販売されています。
キャットフードに使われている穀類は、十分な加熱処理がされているので、ある程度は消化しやすい形にはなっていて通常量を食べる分には問題ありません。
しかし、猫はもともと炭水化物を消化・吸収するための酵素が少ないため、たくさん食べればやはり消化しきれない可能性があります。
キャットフードの穀類は、原材料欄に次のように記載されています。
✔とうもろこし
✔コーンミール
✔小麦粉(パン粉)
✔米(白米・玄米・米ぬかなど)
✔オートミール
✔大麦
この中でも特に小麦はアレルギーの原因となることが多いので、消化不良と同様に気を付けたい食材です。
3.野菜
ネギ類など危険なものを除けば、猫が野菜を食べてしまっても、ほんの少量であれば問題ありません。猫用の療法食にも、ニンジンやホウレンソウなどが使用されているものもあります。
しかし、猫は腸が短く、食物繊維を分解・吸収する能力が限られているので野菜類をうまく消化できない場合もあります。実際、猫草を食べたとき、そのままの長さで排泄されるのを見たことがある人もいるでしょう。
そのため、過剰に野菜を摂取すると、嘔吐の原因になったり、食物繊維によって便秘や下痢など排泄サイクルが狂う原因になったりします。また、野菜類の中には、猫にとって有毒なものもあるため、キャットフードに含まれているもの以外はあえて与えないほうが無難です。
4.豆類
猫が豆類を生のまま食べてしまうととても危険ですが、加熱したものであれば少量なら食べられます。豆類には、タンパク質が含まれ、栄養価のバランスを取るためにキャットフードに使われることもあります。
豆類には、オリゴ糖が含まれていて、腸内の善玉菌のエサとなり腸内環境を整える一方で、たくさん食べてしまうと、腸内で発酵し、ガスが発生します。その結果、腹痛や下痢などを引き起こすことがあります。
豆を含むキャットフードを適量食べることに問題ありませんが、煮豆や納豆など、興味本位でつまみ食いしたものが過剰摂取につながる可能性も考えられますので注意しましょう。
5.過剰な脂質
猫が脂肪分を多く含む食事を過剰に摂取すると、消化不良を起こして下痢や嘔吐などの症状を引き起こす可能性があります。肉食動物にとって、少量の脂肪分なら問題ありませんが、脂肪分が多すぎると、腸内での消化が不完全になってしまうことがあります。
脂肪の消化には膵臓(すいぞう)から分泌される消化酵素が不可欠ですが、高脂肪の食事をすると、膵臓が多くの消化酵素を分泌することで疲労し、分泌が追いつかなくなった結果、消化不良が起こることもあります。
成猫は食事内に15%前後の脂質が必要ですが、子猫用キャットフードや病後回復用の高栄養フードでは、脂質がかなり高めに設計されています。
消化不良を起こしたときの症状
消化不良がわかるのは、一般的には食後数時間〜半日程度で症状が出てきます。食べたものや体調によって異なりますが、見られる症状は次の通りです。
✔嘔吐
✔下痢(軟便)
✔食欲不振
✔腹痛
嘔吐の際は食道や胃の中の内容物が吐き出されることが多いです。摂食後一時間程度で胃に到達し、腸へ移行します。吐物の内容がどのような形状なのかで消化の状態も把握することができます。
下痢や軟便は消化管をある程度通過してから出てくるため、6〜12時間後以降に出ることもあります。消化不良によってガスが溜まり、膨満感や腹痛を起こすと、体を丸めてジッとするようになり体調不良の様子が顕著にあらわれます。
症状が見られたときの対処方法
消化不良が軽度であれば、食事のケアで改善することもあります。軽度かどうかの判断は、「嘔吐や下痢が1〜2回の一時的なもの」で「普段通りの元気がある」ことが重要です。食欲が変わらずあることも判断基準の一つになり得ます。
胃腸への負担を減らすために、食事は普段の半量程度に控えましょう。ただし、絶食が前回の食事から24時間以上続かないようにし、水分はしっかりと与えて脱水を防ぎます。食事を再開するときには、小分けに少量ずつ与えます。お湯でふやかすなど、人肌まであたためると胃腸への負担が軽減できます。
症状が重い、または長引く場合、元気がない、嘔吐や下痢が続く、血便が見られるなどの異常がある場合は、すみやかに動物病院を受診してください。長期間にわたる消化不良は、基礎的な健康状態にまで悪影響を与える可能性があるため、早期治療が重要です。
まとめ
猫には安全だと思っていた食材でも、量や与え方によっては猫の体に負担をかけてしまうこともあります。消化不良は起きやすい病気のひとつですが、原因がわからないと繰り返しやすいので注意が必要です。
市販されているキャットフードには消化しにくい成分も含まれていることもありますが、猫の消化に配慮して加工・調整されており、基本的には消化不良を起こしにくい状態にして販売されています。
また、消化不良の症状は、食材だけでなく、食物アレルギーや急な食事の変更によって起こることがあります。食事による下痢や嘔吐などは個体差もあるので、もし愛猫に異変が見られた場合には、フードや給餌量の見直しや動物病院への相談をおすすめします。
(獣医師監修:葛野莉奈)