Yahoo! JAPAN

つけそば発祥の老舗『中野大勝軒』で伝統の一杯を。醤油ベースの澄んだ味は毎日食べたくなる!

さんたつ

中野大勝軒_DSC_0265

中野駅南口を出て中野通りを道なりに進んだところにある、つけそばの老舗『中野大勝軒』。来店客の半数近くが注文するスペシャルつけそばは、チャーシューやメンマ、味玉などの具材がたっぷり。醤油ベースの澄んだスープと国産小麦粉を使った太麺が織り成す、昔懐かしい味わいは毎日食べても飽きがこない。化学調味料不使用なのもポイントだ。

中野大勝軒(なかのたいしょうけん)

お昼過ぎでも客足が絶えない、つけそば&ラーメンの老舗

電車やバスといった交通の便がよい中野には、駅の南北に商店街があり、幅広い世帯にとって暮らしやすい地域。マンガやアニメといったサブカルチャーの発信地としても有名だ。そして個性豊かなラーメン店がしのぎを削る、都内で指折りのラーメン激戦区でもある。

『中野マルイ』などがある中野駅の南口から中野通り沿いを進むと『中野大勝軒』が見えてくる。1951年の創業以来、中野の地で営業し続けている、つけそば(つけ麺)とラーメンの老舗だ。平日の昼過ぎにうかがったにもかかわらず、中休みの時刻になるまで客足が途絶えない。

白地に黒い文字と紋様をあしらった、シンプルかつ力強いデザインの看板&のれんが印象的だ。

取材に応じてくれたのは、従業員から“会長”と呼ばれ慕われている2代目店主(経営者)の坂口光男(さかぐちみつお)さん。1978年からこの店で働いてきた大ベテランだ。現在は引退され、2025年7月からは坂口さんの息子さんが3代目店主を務めている。

「私の父親が1951年に最初のお店を中野で出しました。そのときに手伝ってくれていたのが『東池袋大勝軒』の創業者・山岸一雄(やまぎしかずお)さんです。その後、いまの場所へ移転したのが1974年。店内をリニューアルしたのは2023年ですね」

座席はカウンターのみ。壁には著名人のサインや白黒写真、昔のお品書き札が飾られている。

かつて『中野大勝軒』では、麺を茹でる際に一人前ずつ量っていなかった。数人分を多めに茹で、余った麺を集めておいて店員のまかないとして食べた始めたのが、つけそばのルーツと言われている。

こぢんまりとした清潔感のある店内を見渡すと、お客さんの誰もがつけそばを注文していた。いまでこそ、つけ麺は全国各地のラーメン店で提供されている。しかし『中野大勝軒』が提供をはじめたつけそばは、知る人ぞ知るローカルメニューだった。

「昭和30年代から50年代にかけては、つけ麺を出すお店がほとんどなかったようですね。当時はお客さんがお客さんを連れて来て、口コミでつけそばが広まっていきました。ウチのメインがつけそばになったのは、中華そばよりつけそばのほうが売れてきたからです」

スープも残さず飲み干したくなるスペシャルつけそば

今回は、つけそば900円に焼豚(チャーシュー)や竹の子(メンマ)などの具材が付くスペシャルつけそば1350円を注文した。調理してくれたのは、店長の板倉由浩(いたくらよしひろ)さんだ。

オーダーが入ったら、まず麺を計量する。今回は並盛250g。そのほか大盛350g、特盛450gもある。

「基本的にスペシャルつけそばと、焼豚が付く肉入りつけそば(1250円)がよく出ます。あとは味玉と海苔を付けた、のりたまつけそば(1100円)も多いですね」と板倉さん。いずれにしても、お客さんたちの目当てがつけそばなのは間違いない。

醤油ダレに少量のお酢を加えることで、まろやかな味わいに仕上げる。

スープのかえし=醤油ダレにお酢を足したら、麺を茹でていく。麺には国産の小麦粉を使用。坂口さんいわく「でんぷん質が多い、うどん向きの小麦粉」なのだとか。

麺の茹で時間は約7分。アツアツの状態で提供するために、スープの器も一緒に温めておく。

板倉さんは麺を茹でる際にテボ(湯切りザル)を使うが、「坂口会長はこれを使わないで、鍋に5~6人分の麺を入れていっぺんに茹でる」そうだ。坂口さんは「そのほうが麺のストレスがない。人間が温泉に入るのと同じで広いほうがいいんです」と笑う。

茹で上がった麺を冷水でもみ洗いして締めることで、コシのある食感に。

醤油ダレに合わせる透き通ったスープは、化学調味料不使用の和風出汁がポイント。豚ガラ、鶏ガラ、親鶏、サバ節、宗田ガツオ節のほか、香味野菜、シイタケ、昆布といった素材の旨味を引き出している。

温めておいた醤油ダレに和風の出汁を合わせれば、中華そばを思わせる澄んだスープが完成。

玉子(味玉)150円、竹の子250円、焼豚350円など、各種トッピングは単品でも注文可能。とはいえスペシャルつけそばなら、通常のつけそばにこれらの具材を追加するよりもお得だ。

メンマ、チャーシュー、味玉、ネギをトッピングし、最後に海苔を添えれば出来上がり。

さっそく完成したスペシャルつけそばを実食する。スープは昔ながらの醤油ラーメンを彷彿とさせるスッキリとした味わい。豚骨系のパンチや魚介類の風味もありつつ、ほのかなお酢の酸味がサッパリした後味を生む。

スープの器の底まで具材が入ったスペシャルつけそば。メニュー選びに迷ったときは、これで決まり。

もっちりとした弾力感のある麺は、かめばかむほど小麦の香りが感じられる。「麺に味があるから、あっさりスープとのバランスがいい」という坂口さんの言葉どおりだ。

国産小麦粉を使用した太めの麺は、うどんを思わせるモチモチした食感。小麦の風味も楽しめる。

しっとり柔らかい自家製の焼豚は、ほどよく脂がのっており、豚肉の旨味と甘みが口いっぱいに広がる。太めの麺に合わせて短冊切りで提供されている点も見逃せない。

ひと口でも食べられる短冊切りの焼豚。この形状は昔から変わらない。

とろとろ&濃厚な味玉や、太めで食感のよいメンマといったトッピングは、箸休めにちょうどいい名脇役だ。麺を食べ終わったら、スープに和風の出汁が効いた割りスープをIN。食後の余韻に浸りつつ飲み干せば、あまりの満足感に思わずため息が漏れる。

余ったスープには卓上の割りスープを注いで、一滴残らず飲み干したい。

どこか昔懐かしい醤油ベースの味わいは、毎日でも食べたくなるほど飽きがこない。ちなみに濃い味がお好みなら、卓上にある特製醤油タレや酢、ラー油などで調節してもOKだ。

伝統的な味をいまに残すことに価値がある

初代店主である坂口さんのお父さまから、2代目の坂口さん、そして息子さんと3代続く『中野大勝軒』。現在まで続けてくることができた理由を尋ねると、坂口さんは「つけ麺発祥の店という誇りですね」と即答する。

店内に飾られた創業当初の写真を見れば、もともと中華そばがメインだったことがわかる。

「いま『日本つけ麺学会』の活動として、中野区で『つけ麺を世界に』という地域活性化をしているんですよ。中野がつけ麺発祥の地であるという誇りをお客さん、区民の皆さんに共有していただければ、地域活性化の大きな力になると思うんです」

日本つけ麺学会とは2023年に設立された、中野のつけ麺を盛り上げる団体のこと。坂口さんは同団体の名誉会長を務め、中野区長や観光協会などと協力しながら地域振興にも力を入れている。

写真左から店長の板倉由浩さん、2代目店主の坂口光男さん、スタッフの千葉さん。

そんな坂口さんに、いまの思いを聞いてみた。

「伝統的な味を残し続けたいです。たとえ万人に受け入れられなくても、食べてくれる人がいるなら(笑)。かつて売れるものがうまいんだ、という時代があったんですよ。つけ麺の黎明期から平成初期ごろまでは、ウチのような醤油清湯スープが主流でした。やがて時代とともに、とんこつ系の濃い味に若者が慣れ、和洋のジャンルを超えた個性的なつけ麺が台頭してきた。そうなると伝統的な醤油清湯スープの味が、数あるつけ麺の中で一つの個性になる。そういう意味で、昔の味をいまに残すことには価値があるんじゃないかと思っています」

ずっと中野で営業してきたからこそ、常連客は50代、60代の人も多い。子供の頃、親に連れられて来ていた人たちだ。その世代がお子さんを連れて来る。そうして『中野大勝軒』の伝統的な味が、お客さんの舌にも脈々と受け継がれてきた。これまでも、これからも。

中野大勝軒(なかのたいしょうけん)
住所:東京都中野区中野3-33-13/営業時間:10:30~15:00・17:00~20:00/定休日:無(水・日休業の可能性あり。SNS参照)/アクセス:JR中央線・地下鉄東西線中野駅から徒歩3分

取材・文・撮影=上原純

上原 純
ライター
東京都出身。編集プロダクション勤務を経て、2018年からフリーランスに。雑誌やWeb媒体で、グルメやビジネスなどの取材記事を中心に幅広く執筆。カレーとスイーツ全般、とくにチョコレートには目がなく、毎月コストコに通ってお菓子を買い溜めする。ブリティッシュロックやハードロック、ヘヴィメタルなどの音楽が原動力。

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 「ギヴン展 -given exhibition- ENCORE」東京会場(凱旋)フォトレポート|新規エリアや真冬と立夏の10年後の等身大立像などが追加展示! 「ギヴン展」がパワーアップして帰ってきた!

    アニメイトタイムズ
  2. 最上位ブランドは500万円の値も? 石川県が誇る冬の味覚<ズワイガニ>漁が11月6日に解禁

    サカナト
  3. ★明日のラッキー星座は? 12星座占い・運勢ランキング - 4位~12位【2025年10月30日(木)】

    anna(アンナ)
  4. らーめんHANABI

    湘南人
  5. ★明日のラッキー星座は? 12星座占い・運勢ランキング - 1位~3位【2025年10月30日(木)】

    anna(アンナ)
  6. 帰省するぞ!→玄関施錠しようと思ったら...「いまこれ」 超絶望的状況に1.5万人戦慄「ギャーー!!」

    Jタウンネット
  7. アンコール開催でさらにハイパーに!『天野明展 The Characters -Encore! (アンコール)-』で出会える新展示に迫る

    SPICE
  8. 猫が『外に出ようとする』ときの対処法4つ 出すべきではない理由や脱走を防ぐコツまで

    ねこちゃんホンポ
  9. 【記者ノート】「poco a pocoふれんず」山岸代表、生きづらさを抱える若者たちの「居場所」と「働く一歩を」提供し、彼らの社会参加支援に挑む

    にいがた経済新聞
  10. 泉ピン子と佐藤隆太が親子役で共演 声舞劇(せいぶげき)!『終活を始めた途端、55歳の息子が帰ってきました』記者発表会が開催

    SPICE