【例文あり】わかりやすい介護記録はどう書く?書き方のコツとポイントを徹底解説!
監修者/専門家
伊藤 浩一
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14
介護の現場において、介護記録は必ず書かなければならないものです。
しかし、特に若手な方を中心に「どんなことを書いたらいいの?」「いつも同じような内容になってしまう」と悩むことは多いのではないでしょうか?
実は、介護記録は書き方のポイントを押さえることでうまく書けるようになります。
また昨今では、国が進める介護現場の生産性向上の観点から、「外国人介護職の方の増加」や「介護ロボット・ICT」を活用した業務展開が進んでいます。
そのような現場の変化の中で、介護記録の書き方で注意すべきポイントに変化があったり、記録に定量的視点が用いられるケースが増えると考えられます。
(定量的観点を介護記録に残すことで、データ分析に活用でき科学的介護につなげることが可能となります。)
そのような背景も踏まえながら、介護記録の書き方のポイントについて詳しく解説していきます。
介護記録とは、チーム間で情報を共有するため重要な記録
一般的に介護記録とは、介護サービス事業者が利用者にどのようなサービスをしたのかを記録した介護経過記録のことをいいます。
記録する媒体に決まりはなく、手書きで書き込むものやパソコンやタブレット端末で記入するものなど、さまざまなものがあります。
介護保険法では、介護記録の作成と保存が義務付けられています。そのため、介護職につく者にとって介護記録は大切な仕事です。しかし、「介護記録に何を書けばいいかわからない」と悩んでいる人は多く、特に、新人介護スタッフにとっては、最初に悩む仕事のひとつのようです。
介護記録はその目的を改めて理解することで何を記録しておくべきなのかがわかるようになります。新人のうちは、以下に示す7つの介護記録の目的を知っておくだけでも、格段に介護記録が書きやすくなるでしょう。
介護記録を書く目的とその理由とは?
*介護記録を書く目的*1.提供した介護サービスの実践内容を報告するため
2.利用者の生活の様子や変化を観察し共有するため
3.ケアプランに活用するため
4.介護スタッフ間、チーム間で情報を共有するため
5.統一した介護サービスを提供するため
6.介護スタッフと利用者やその家族との情報交換に活用するため
7.事故時の対応や状況の説明を残し証拠とするため
1.提供した介護サービスの実践内容を報告するため
実際にどのようなサービス内容を提供したのかを記載しておくことで、利用者やその家族、ケアマネジャーなどの他職種への報告がスムーズかつ正確になります。
2.利用者の生活の様子や変化を観察し共有するため
サービスを提供したときに利用者が「どのような様子であったのか」「ケアをした際に、どのような変化があったのか」を記載することで、その後の経過観察や将来的な介護サービスの発展に役立ちます。
特に、体調が大きく変化したときや入院したときには、いつから症状が現れたのかを振り返ることで適切な治療につながることがあります。
また今後の介護記録は「文章」で記録を残す定性的なものだけではなく、介護ロボットやICTを利用して「データ」として残す定量的な記録も求められるでしょう。
目的に応じて、それぞれの記録を活用することで、利用者の様子を確認することができます。
3.ケアプランに活用するため
「ケアプランに記載された目標がどれくらい達成できているか」を介護記録を見て判断し、「新たなケアプランに反映すること」ができます。
4.介護スタッフ間、チーム間で情報を共有するため
介護の現場では、ひとりの利用者に対して多くの介護スタッフが関わるため、情報を共有する必要があります。
自分が実践した介護サービスについて介護記録に記載しておくことで、介護スタッフ間での情報共有がスムーズに行えます。
また、外国人介護スタッフも増えていますので、「外国人にもわかりやすい」「より簡潔な記録」が求められます。
5.統一した介護サービスを提供するため
介護スタッフによって異なる対応をしてしまうと、利用者さんが混乱したり、不安になったり、体調を崩したりする原因となる可能性があります。
介護記録は「介護スタッフがどのような対応をし、どのようなケアを継続してきているのかを理解し、また次にケアを行う介護スタッフに伝えるためのもの」です。
こうした作業を徹底して行うことで統一した介護サービスの提供がおこなえます。
6.介護スタッフと利用者やその家族との情報交換に活用するため
介護記録には、サービス提供時の利用者さんの様子を記載するため、利用者さんやその家族と介護スタッフが情報を交換するときの資料として活用することができます。
そのため、介護スタッフのみではなく、ご家族へも提供される場合があることを意識し、記載する必要があります。
7.事故時に介護スタッフを守る法的な証拠にするため
介護サービスは、口頭での説明に証拠能力がなく、介護記録がない場合、サービス提供の有無や、その内容に疑問を持たれてしまう可能性があります。そのため、介護保険制度では「サービスの提供の記録」が義務化されています。
万が一、サービス提供時に利用者さんがけがをした場合、事故の経過や利用者の状況、介護スタッフの対応などを詳細に残すことで、介護サービス事業者が責任をきちんと果たしているかの証拠とすることができます。
※なお、広い意味で「介護記録」と言う場合には、利用者の基本情報やアセスメント表など、介護サービス全般に関わる記録全てを指します。
様々な人が見るからこそ、押さえておきたい介護記録の書き方のポイント
介護記録は、書いた本人だけでなく他の介護スタッフやケアマネジャーなど、多くの人が目を通す可能性のある文書です。
また、利用者やその家族など、専門職ではない人にも開示されることがあります。そのため、誰が見ても何が書かれているのか、内容がわかるように記載されている必要があります。ここからは、書き方や表現の基本的なポイントをおさえていきましょう。
介護記録の書き方のポイント5選
*書き方の6つの基本ポイント*1.正しく日本語を使おう
2.専門用語や業界用語、施設独自の表現は避けよう
3.支配的・命令的な表現は使わない
4.根拠に基づいた記録をしよう
5.5W1Hで文章を構成する
■1.正しく日本語を使おう
前述したように、介護記録は記録者本人だけでなく関係機関や他の職員なども確認をします。そのため、誤った日本語や文法を使っていると、誤解のある伝わり方になってしまう場合があります。漢字や句読点、文法表現などは適切に使用するようにしましょう。
ひらがなやカタカナが多い文章や句読点が少ない文章は、意味を取り違える可能性があります。また、新人のうちは正しく伝えようとして一文が長くなりがちです。
一文は短く簡潔に。接続詞を使ってつなげる場合は、適切な接続詞を使わなければなりません。
■2.専門用語や業界用語、施設独自の表現は避けよう
介護の現場で当たり前に使っている専門用語や業界用語は、利用者やその家族には意味が通じない言葉です。誰が読んでも意味が把握できる表記を心がけましょう。
また同様に、施設独自の表現は、外部の人には意味が伝わりません。さらに、無意識にしろ、施設内で当たり前に使っている表現が、他者が聞くと差別的な表現に聞こえる、あるいは見下されているような気持ちになるなど、差別・蔑視を含む表現であるケースがあります。
表現においては、気がつかないリスクがあることも注意しておく必要があります。どういった言葉が専門用語や業界用語なのか、施設独自の表現になるのか迷う際には、周りに相談しましょう。
特に、経験年数が長くなるほど、専門用語や業界用語、施設独自表現を意識せず使いがちです。新人や利用者に伝えるつもりで書くと、誰が読んでもわかりやすい表現になります。
■3.支配的・命令的な表現は使わない
利用者さんの様子を書き記すときに気をつけたいのが、「〇〇させた」「〇〇を与える」と言った支配的、命令的な表現です。
このような表現は、利用者の気持ちに沿わない介護スタッフ本位のケアを行っているように感じさせます。利用者さんの家族がこのような介護記録を読んだとしたら、「ここに通わせていて大丈夫かしら?」「不当な扱いを受けているのでは?」と不安になる可能性もあります。
介護記録の目的をよく理解し、何のために書く記録なのか常に意識しておくことが必要です。
■4.根拠に基づいた記録をしよう(+α:ICTを活用し定量的なデータを記録)
評価を行うときには、客観的事実や根拠が必要となります。介護記録は介護計画やケアプランの評価を行う際の参考になる重要な書類です。
そのため、介護記録は根拠に基づいた記録を書くようにしましょう。
特に、健康状態や身体機能に関する記録をする際には、食事量や体温、血圧など具体的なデータを用いたうえでそのときの様子を書いておくとよいでしょう。
そうすることで、誰が見ても状況が正しく伝わる記録として活用できます。
ー【+α:ICTを活用し定量的なデータを記録】
「睡眠の質の確認は、目検と文章でなくてよい」
寝ている利用者にセンサーを用いて睡眠の質をモニターできる介護ロボット(ICT)を活用すると、介護スタッフが部屋に巡回に行かなくても、利用者が寝ているか寝ていないかを確認することができます。
また、睡眠効率(70%以上が良)や入眠時間(20分以内が良)などの標準値と利用者のデータと比較することで、その方の眠りの質がわかります。
眠りの質がわかれば、原因を推測し、共通理解のもと、睡眠ケアを利用者に行うことができます。
睡眠ケアを行えれば、利用者の日中の生活の質を向上させることができ、認知症の症状軽減にも効果的です。
介護スタッフが夜間に巡回し、睡眠の質を目検でチェックし、文章の定性的な介護記録を残すのではなく、介護ロボットを利用することで、定量的なデータの記録を残すことも介護記録の付け方としては重要になります。
■5.5W1Hで文章を構成する
介護記録に限らず、誰かに何かを伝える文章を書く場合、基本になる構成を覚えておくと書きやすくなります。代表的なものが5W1Hです。
5W1Hというのは、「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」を英語で表記したものです。When(いつ)
Where(どこで)
Who(誰が)
What(何を)
Why(なぜ)
How(どのように、どうなったのか)
この5W1Hを意識して書いていくと、内容が充実した介護記録が書けます。
特に、Why(なぜ)の部分は、ケアの根拠になる部分です。
詳細に記録することが必要な部分でもあります。しかし、利用者が認知症の場合や言語障害がある場合には、Why(なぜ)の部分を利用者自身が細かく説明することができません。そこで、介護スタッフは利用者の様子をよく観察して状況を分析し、Why(なぜ)の部分を推測して書きます。
新人のうちは推測がうまくできないこともあります。そのときには、利用者をよく観察したうえで、周りの人に相談をし、一緒にWhy(なぜ)の部分を考えるようにすると、表現の仕方、状態の把握の仕方など、スキルアップにもつながります。
分かりやすい介護記録の例文(食事、排泄、入浴、行事・活動、認知症)
ここからは、場面別の観察ポイントと介護記録の書き方、記録例を見ていきましょう。
食事の際の介護記録の書き方
利用者の食事の様子を観察するときには、外面的ポイントと内面的ポイントの両方を押さえておくと、記録が書きやすくなります。それぞれの具体的な観察ポイントは以下の通りです。
●外面的な観察ポイント
・食器や箸などの使い方
・食べている時の姿、表情
・食べ方、飲み込み
・食べた量、残した量
・入れ歯の使用状況 など
●内面的な観察ポイント
・発熱や脱水などの体調
・便秘やお腹の張り
・かみ合わせや入れ歯があっているかどうか
・その日の運動量、空腹感
・薬の副作用
・不安や悩みや心配ごとの有無
・食事への不満 など
食事時の介護記録では、観察したポイントだけでなく、実際に食べた量や内容も重要です。高齢期においては、食事は健康を大きく左右する要素でもあるため、具体的かつ詳細に記録しておきます。
●食事時の介護記録 例文
1/15 12:20
いつもに比べ、食事が進んでおらず、食べ物を口に含んでいる間も眉間にしわを寄せていた。
声をかけてみると、「入れ歯の調子が悪いようで、硬いものを食べると痛くて食べられない。」と話された。
入れ歯が合わずに痛みが出て、固形物の食べ物がうまく噛めない様子。
本人の了承を得てご飯をおかゆに変えてみると、「これなら食べられる」と完食された。
排泄の際の介護記録の書き方
排泄の介護記録では、「排泄量」や「排泄回数」の記録と、「排泄動作の様子」を記録します。
排泄量や排泄回数は利用者の健康状態を知る重要な情報です。
しかし、排泄リズムは人それぞれ異なります。排泄回数が多すぎるもしくは少なすぎると感じたときには、本人の普段の排泄リズムと照らし合わせて判断するようにしましょう。
排泄動作の様子を観察するときは、利用者への配慮が必要です。
排泄の一連の動作は誰もが人に見られたくないと思うものです。利用者の気持ちを最優先に考え、労りの気持ちを持ったうえでさりげなく必要な部分を観察するようにしましょう。排泄動作の様子で観察しておきたいポイントは次の通りです。
●排泄動作の様子で観察しておきたいポイント
・トイレ内の立ち座りや歩行の状態
・便座に正しく座って排泄できるかどうか
・服や下着の上げ下ろしの様子
・自分で陰部やお尻をきちんと拭けるかどうか
・水を流すことができるか
介護スタッフによる介助を行った場合は、介助の様子やそのときの利用者の表情や言動なども介護記録に書いておきましょう。
●排泄の介護記録 例文
2/5 13:10
昼食後、介護スタッフが声をかけて一緒にトイレに行く。
個室に入ると、麻痺側の右肩を壁にもたれて体を支えながら、右手でゆっくりと自分でズボンを下ろしていた。紙パンツは腰にひっかかりうまく下ろせなかったので、介助すると紙パンツ内に多量の尿失禁が見られた。
紙パンツの重みで自分ではうまく下ろせなかったようである。
入浴の際の介護記録の書き方
入浴は、全身状態の把握や介護の必要度がどれくらいかを知る絶好の機会となります。
そのため、介護記録には全身状態と入浴に関わる一連の動作だけでなく、言動や表情などもしっかりと書き残しておきましょう。
入浴時に観察しておきたいポイントは次の通りです。
●全身状態の観察
・皮膚の状態
・やせ、肥満度
・感染症の有無
・手足の動き
・浴槽に入っている時の呼吸や疲労度
・痛みや苦痛の有無 など
●入浴動作の観察
・姿勢の維持
・衣服の着脱
・自分でどこまで洗えるか
・浴槽に自分で出たり入ったりできるか など
入浴の場面では観察する部分が多いため、細かく観察し深く掘り下げることで充実した内容の介護記録が書けます。 新人のうちは、観察すべきポイントが多すぎて何を書いていいのかわからなくなりがちです。そのときには、利用者の個別目標や気をつけるべきポイントを参考に観察するとよいでしょう。
●入浴の介護記録 例文
1/20 10:30
入浴される。いつもは髪を自分で洗われるが、「今日は肩が痛くて腕が上がらないの。洗っていただけないかしら?」と言われたため、介護スタッフで洗髪を行った。
肩に腫れや赤み、あざなどは見られない。浴槽に入られると、「肩が温まって痛みが和らぐわ」と気持ちよさそうな表情をされていた。
以前より寒い日が続くと肩が痛むと話されており、この数日は特に冷え込んだため痛みが出たと思われる。
行事・活動(レクリエーション)の際の介護記録の書き方
レクリエーションでは、利用者同士の交流が自然と増えるため、表情や言動に注目して観察すると利用者本人だけを見ているときには見られない様子を記録として残すことができます。
また、レクリエーションの内容と反応を合わせて書いておくと、利用者の好みに合わせたレクリエーションが計画できるようになります。
敬老会やクリスマス会のような季節行事では、利用者が普段と違う反応をすることが多くなります。 特に、入所施設でボランティアや近隣の子どもたちが慰問してきた場合には、普段はあまり反応を見せない人でも、涙を流して喜ばれることも少なくありません。
このような記録は、家族が読まれたときにも非常に喜ばれますし、信頼関係を築くことにもつながります。行事や活動で見せる利用者の表情や言動をよく観察しておき、些細なことでも記録に残すようにしましょう。
●行事・活動の介護記録 例文
9/21 11:00
〇〇保育園の園児さん25名が敬老会で慰問に来られた。Aさんは最前列に座り、園児さんの出し物を熱心に見られ、何度もハンカチで涙をぬぐっておられた。園児さんが帰った後は、ご自身のお孫さんの話をたくさんしてくださった。
認知症の人の介護記録の書き方
認知症の人の様子を観察するときには、できないことに目がいきがちです。特に新人のうちは、認知症の人の対応に悩まされることが多く、介護記録もネガティブな視点になることが多いでしょう。
しかし、利用者さんの家族ができないことばかり書かれた介護記録を見たらどう思うでしょうか。介護スタッフや施設に対し、不信感や不安を持つかもしれません。また、他の介護スタッフが読んだ時にも、暗い気持ちになり、ケアに影響する可能性もあるでしょう。
認知症の人の記録を書くときには、利用者さんの立場で考え、小さな変化や効果をポジティブな視点が書くよう心がけましょう。利用者さんがつぶやいた何気ない言葉も記録しておくと、その後のケアのヒントになることもあります。
●認知症の方の介護記録 例文
8/10 10:00
ホールのテレビで高校野球が始まると、突然大きな声で出場校の校歌を歌い始めた。ちょうどBさんの母校の試合が始まったところだったので、昔野球をやっていたことを思い出されたのかもしれない。
介護記録を上手に書くためのコツ
1.介護記録が具体的であれば、その後のケアの質も向上する
介護記録を書く前に、意識しておくべきことがあります。
それは、「良いケアは、良い介護記録から生まれる」ということです。
介護は、情報収集→アセスメント→ケアプラン立案→実行→評価のケアマネジメントサイクルが基本プロセスです。そのスタートである情報が介護記録になります。
そのため、記録が適切(具体的)であれば、その後のプロセスの質も上がりますが、記録が不適切(抽象的)であれば、その後のプロセスは崩れていくこととなります。
質の高い介護を行うためにも、介護記録は具体的に書く必要があるのです。
2.信頼関係の構築が必須
しかし、このようなやり取りは、介護スタッフと利用者さんの関係性が良くなければ生まれてこないものです。ですから、介護スタッフは利用者に安心してもらい、信頼してもらえる関係性を築くことが大切です。
そして、利用者さんと接していくなかで気づいたことは、その場でメモを取るようにしておきましょう。具体的に、ケアを行ったときの利用者さんのちょっとした反応や言動などをメモしておくと、あとから介護記録を書き込む際に記憶を呼び起こしやすくなります。特に新人のうちは、気になったことは何でもメモをする習慣をつけておきましょう。
まとめ:良い介護記録をの残すことがよいケアを生み出す
よい介護記録を書くことは、よいケアに繋がります。
ケアプランやその後の治療にも活用するものとして、身体的な面、行動的な面、症状などについては詳細かつ正確に書くことができるよう努力しましょう。その根底には、利用者を尊重する気持ちが大切です。
利用者の「心の動き」や「そのときの感情」などが想像できる介護記録が「よい介護記録」であるということになります。
普段から利用者に敬意を表したケアを行い、利用者とその家族にとって大切な思い出の記録ともなるような介護記録を書くように心がけましょう。
【専門家のコラム】伊藤先生に聞いた!介護記録への苦手意識を克服するには?
介護業界に長年携わる伊藤先生に、介護記録の書き方をアドバイスいただきました。こちらもあわせてお役立てください。
執筆者/専門家
伊藤 浩一
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14
新人職員向け記録の研修を行う際、私は必ず冒頭にこんな質問をします。
「介護記録が得意な人は手をあげてください!」
結果はみなさんご想像の通り。 「シーーーン」
こんな状況をどう打開するか?そんなヒントをお伝えします。
介護記録が苦手な理由を探ってみましょう!
介護記録がなぜ苦手なのか?
それは多くの場合、書くことが目的になっているからです。
「何か書かなければならない」というプレッシャーが、介護記録にあるのではないでしょうか? そして、「書かなければならない」の前にどんな感情があるかというと「何を書いていいかわからない」という感情ではないでしょうか。
つまり、「何を書いていいのかがわからないのに、介護記録を書かなければならない」ということが苦手=嫌いと感じ、介護記録を書くことに対して苦手意識を持つ要因となっているのです。
※【注意】専門用語を使うと「それっぽく」なるは落とし穴!
「何を書けばよいかわからない」「介護記録は苦手…」「具体的にと言われても…」などといった気持ちが芽生えると、使いたくなってくるのが専門用語です。
具体的には、「徘徊」「嚥下」などの言葉が挙げられます。しかし、よく考えてみてください。介護記録はご家族や、介護業界以外の関係機関の方なども閲覧します。その方々にとって本当にわかりやすい言葉でしょうか。
専門用語を使えば、よい介護記録ができるは間違いです!
ではなぜ、介護記録を書かなければならないのか、ここから考えていきましょう。
Why:なぜ書くのか?を考えてみよう
ー介護記録は、チームケアをする上での大切な情報源
介護の仕事はチームで行います。
そして何のために仕事をしているのかというと、「ご本人の望む暮らしを実現するため」です。
チームは、介護職だけでなく、看護、リハビリ、栄養士等々様々な専門職で構成されています。
「ご本人の望む暮らしを実現するため」にそれぞれの専門性をもってアプローチしていますのでその判断のもととなる情報が必要となります。その情報こそが「介護記録」なんですね。
「ご本人の望む暮らしを実現するため」チームが専門性を発揮するための判断のもととして記録している。そう考えると、介護記録の作成は重要な仕事に感じてきませんか?
でも、書く目的はわかったけど何を書いたらいいかはまだわからない。そんな声が聞こえてきそうですね。 次は介護記録は誰に書くのか?を考えます。
Who:誰に書くのか?を考えてみよう
ー誰が読んでもわかる言葉で書くようにしよう
誰のために介護記録を書くのか。
ピンとくる方はまず、「介護・看護・リハビリ・栄養士…」のように介護の現場に何らかの形で携わっている人たちであると思います。
お互いが専門職だから…そう考えて専門用語を用いると、実は伝わりません。
なぜなら、介護職が看護職の仕事をすべてわかっているわけではありませんし、看護職が栄養士のすべての仕事を把握しているわけでもないからです。
となると、専門用語を用いて書く必要がない、むしろ書くことで伝わりづらくなってしまうことがわかりますよね。
つまり誰が読んでもわかる言葉で書くことが重要です。
ー介護記録で使ってはいけない言葉と、その理由
わかりやすい言葉と伝えましたが、たとえば誰もがわかる「不穏」という言葉。これだけではNGなのです。
なぜなら「不穏=おだやかでない状態」だけではどんな状況かわからないからです。
立ったり座ったり繰り返しているのか?怒っているのか?落ち込んでいるのか?
具体的な状況がわからなければ各専門職も自分が何をアプローチすれば良いか判断ができないでしょう。
What:何を書くのか?を考えてみよう
ご本人の望む暮らしを実現するために介護記録を書くと前段で述べました。
では、そのために知りたいであろう情報とはなんでしょうか?
実は各専門職が「ご本人の望む暮らしを支えるため」それぞれの専門性を活かしたアプローチを記載したシートがありますよね。
それは「ケアプラン」です。
ー何を書くのか?=ケアプランに対する評価や状況を書く
何を書けばよいのかの結論としては、「ケアプランに対する評価や状況」を記載すればよいのです。
例えば、「ケアプランに週末自宅に帰るため自宅で歩行できるよう下肢筋力を向上させる」というプランが立っているとします。
具体的な訓練として、「施設でも自宅のリビングとトイレまでの同距離を歩行器を活用して歩く」だったら、どんな風に歩いていたか?右足の出が悪いとか、途中で疲れてしまって歩けなかったなどを具体的に記載できますよね。
つまり、ケアプランを読めば何を書けばよいか?の答えが書いてあるのです。
新人職員さんにこそ、ケアプランの必要性や書き方を教えましょう
冒頭の質問には続きがあります。
「ではケアプランを読んだことがある人?」
「シーーーン」
新人の職員さんにケアプランは難しいから…と後回しにする事業所、実は多いのではないでしょうか?
しかし、それは間違いです!新人の職員さんにこそケアプランを教えなければなりません。
なぜならケアは介護計画に沿って行われることが大前提ですから。
介護記録が書けない=ケアプラン(根拠=why)を教えていないだけだと私は考えています。
ぜひケアプランの確認から始めることをおすすめします。
最後に:マンガで簡単まとめ♪
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