広がるインクルーシブ遊具
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今日は公園などにある「遊具」の話題です。
「インクルーシブ遊具」とは
いま全国各地で「インクルーシブ遊具」の設置が広がっています。どんなものなのか、遊具を作っている株式会社コトブキ営業本部 福田英右さんのお話です。
株式会社コトブキ 営業本部 福田英右さん
「インクルーシブ遊具」は障害の有無に関わらず遊べる。大切なのは、障害のある子だけではなくて、障害のない子も一緒に場を共有して遊ぶことができて、社会や仲間と繋がりを持つ場を作る、その場で活かされる遊具と我々は認識しています。2020年から製品をリリースしています。公園ユーザーのお子さまにヒアリング等を行っていく中で、障害のある子が実は公園で遊べていない、公園に期待をしていないことが分かってきました。誰もが遊べる、その遊具を研究・開発したのがきっかけです。私たちの製品でいうと、ここ4年間で400以上の公園や学校などに納入させていただいております。
「インクルーシブ遊具」。例えば、砂場は、車いすの子も遊べるよう、足つきのテーブルの上に砂が盛られているほか、ブランコは、チャイルドシートのような形で体の前の部分もガードされていて、体を支える力が弱い子も楽しめるようになっています。ほかにも人混みや慣れない環境で緊張しやすい子どもが心を落ち着ける小さなスペース「カームダウンスペース」など、さまざまなものがあります。
全国的に広がっていて、公園のほか学校やショッピングモールの遊び場などで導入が進んでいます。広がりの背景について福田さんは「多様性を認める社会になったことが大きい。障害の有無に関わらず、子どもの頃から多様な子どもたちが交流して、お互いに理解を深め合う環境が必要とされ、増えて来ているのではないか」と話していました。
子どもが公園を利用する保護者は
では、お子さんと公園を利用する保護者の方はどう感じているのか、複数のインクルーシブ遊具が導入されている品川区の大井坂下公園を利用していた方に聞いてみました。
・「週3、4くらいで来ています。遊びやすいし、本人がすごい好きですね。いいんじゃないんですかね、変に分けるより、みんなで一緒に遊べた方が。」
・「今日初めて来ました。大田区に住んでるんですけど近いし、いい公園見つけたなと思って、これからも来たいと思います。障害がなくても、子どもも使いやすいですし、転びにくいし、いいなと思います。分からないですからね、これから自分の子どもも、もしかしたら障害を持つこともあるかもしれない、そういったときに楽しめる公園が1個でも多かったらいいなと思いますね。広いのも本当にいいです。下の子が歩くのが遅いので、大きいお兄ちゃんお姉ちゃんがいても、楽しく遊べるからいいなと思います。」
・「バスに乗って来ました。子どもたちも親御さんもいっぱいで、いい雰囲気だなと思って。垣根なくみんなで遊べるのは、そういうところで親同士のコミュニケーションとかもできると思うので、いいことだなと思いますね。」
2022年にリニューアルオープンしたそうで、とても綺麗で、カラフルな公園です。スロープの幅が広くなっていて車いすの子と頂上までのぼれる複合遊具や、寝転んだり保護者と一緒に乗ったりできる皿型のブランコなどがあって、遊具の前には、遊び方の説明が書いた案内板もありました。保護者の方のお話で、子どもの多様性の部分だけではなく「保護者同士の繋がりもできる」という言葉が印象的でした。
「インクルーシブ」を当たり前に
取材したコトブキは1916年、大正5年に誕生した創立100年以上の企業。私たちも耳にする機会が増えた「ユニバーサルデザイン」にも、以前から取り組んできたそうです。昔と比べての変化や、今後目指すところについて再び株式会社コトブキ 営業本部 福田英右さんに伺いました。
株式会社コトブキ 営業本部 福田英右さん
「ユニバーサルデザイン」は、できるだけ多くの人が同じように利用することができるもの、建築のデザインと考えています。西暦2000年前からユニバーサルデザイン遊具というのはあったんですよ。そのときの遊具、車いす利用者に配慮してスロープをつけたとかっていうタイプが多かった一方で、ユニバーサルデザインの遊具、インクルーシブな遊具は、物理的なバリアだけではなくて、多様な過ごし方、遊び方を実現できるように配慮した遊具として、ちょっと進化しながら今に至っています。「インクルーシブ遊具」という言葉が無くなってしまえばいいのかなと思っています。当たり前にインクルーシブであれば、その言葉を使う必要がなくなるので「インクルーシブ遊具」「インクルーシブ公園」が当たり前になること。そのためにどうすればいいか考えながらやっています。
「ユニバーサルデザイン」は、誰にとってもわかりやすい、使いやすいデザインのこと。街中でも広がっていますが、考え方としては、このユニバーサルデザインを活かして、インクルーシブな空間を作っていこうとしているということです。ただ「インクルーシブ遊具」という言葉を無くしたい、当たり前にすることを目指していると話していました。
誰もが遊べるインクルーシブ遊具や公園、ますます増えていきそうです。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:西村志野)