心配のし過ぎは厳禁!手術が必要な腰痛はそれほど多くない理由とは?【専門医がしっかり教える 図解 腰痛の話】
手術方法にこだわり過ぎない
腰痛で来院する患者さんの中で、手術が必要になるのは全体の10%ほどでしょうか。意外と手術を行うケースは少なく、まず保存的治療をして、改善が見られないときに検討します。
腰痛に対して行われる脊椎手術には、切開手術、顕微鏡手術、内視鏡手術があり、治療の目的や病態によって最適な手術方法を選びます。医療機関ごとに対応できる手術方法が異なり、執刀医の得意な方法もあるため、患者さんは手術方法にこだわり過ぎないほうが、「後遺症なく早く治してもらう」ことに繋がるでしょう。
手術を受ける際、心にとめておきたいのはアフターケアです。手術してすぐに完治はまれであり、しばらくは痛みが残ったり、リハビリや投薬が必要なこともあります。そんなとき、遠方の医師では素早く対応してもらえません。頻繁に通院が必要な場合もないとはいえず、近場の専門医を選ぶのが賢明です。さらに、医師選びに関していえば、手術の実績(回数)だけで選ぶのは危険があります。確かに手術数が多ければ、医師も補助する看護師さんも慣れているのは事実でしょう。
しかし、必要以上に手術をすすめてくる可能性も否定できません。手術の実績はあくまで選ぶ目安の1つとしてください。むしろ大事なのは、担当医との相性。お互いの波長が合い、直感で「この人なら大丈夫!」と思えるなら、意外と失敗はないものです。
病態や治療の目的で手術方法は異なる
腰痛の治療で行われる脊椎手術は3種類。それぞれのメリット、デメリットを考慮しつつ、病態や治療目的に適した手術が選択されます。
腰痛の手術の種類
切開手術
何でも不自由なくできますが、手術痕が大きく、体へのダメージも大。「MISt(ミスト)」という新しい術式は技術的に難しく、 熟練した医師が少ないのが現状です。
顯微鏡手術
術野を明るく拡大して立体的に見るので、処置の精度が高くなります。 ただし、手術時間が多少長く、手術痕は内視鏡手術よりわずかに大きくなります。
内視鏡手術 MED-MEL
内視鏡の特徴として、体の奥まで入って標的に近づけます。 手術痕も比較的小さく、体へのダメージは軽くなります。デメリットとして、まれに血腫(けっしゅ/出血した血液が体外へ排出されず、体内の内にたまった状態。)がたまることがあります。
内視鏡手術 FED・旧PED
MEDとの違いは内視鏡がより小さく、奥深い病変にも対応できること。手術痕も最小で、入院も短期間で済みます。止血しにくい、という欠点があります。
出典:『専門医がしっかり教える 図解 腰痛の話』著/吉原潔