北海道平取町で発見された化石の正体が明らかに! 東アジア初となる白亜紀の<チョウザメ>化石が報告
北海道といえばサケやカニのイメージが強いですが、化石の産出地としても有名なことを知っていますか。
中でも、蝦夷層群を有する穂別地域とその周辺は、白亜紀の生態系や生物進化を理解する上で重要な地とされています。実際、今年3月にはむかわ町から発見された化石がゾウギンザメ属の新種であることが明らかになりました。
ゾウギンザメ属の新種記載が記憶に新しい中、11月5日に「Cretaceous Research」に掲載された論文では、平取(びらとり)町で採集された化石が、白亜紀では東アジア初となる分類群のものであることが明らかになっています。
北海道は化石の聖地
サケやカニなどで知られる北海道ですが、実は化石の産出地としても有名。今年だけでも、学術的価値の高い化石がいくつか報告されています。
小平町・苫前町・羽幌町の新種アンモナイト化石(Eubostrychoceras perplexum)や、釧路市阿寒町のネオパラドキシアが例として挙げられます。
穂別地域の蝦夷層群
北海道の穂別地域は、「蝦夷層群」と呼ばれる白亜紀の生態系や生物進化を理解する上で重要な地層とされています。
この地層からは、これまでに貴重な化石が多数発見されており、最近だと化石の町としても知られる「むかわ町」から新種のゾウギンザメ属(Callorhinchus orientalis)の化石が報告されました。
さらに、11月5日に「Cretaceous Research」に掲載された論文では、むかわ町の東に隣接する平取(びらとり)町から採集された化石が、とても学術的価値の高い標本であることが判明しています。
平取町で拾われた魚の化石
今回報告された化石は、北海道平取町トウナイ沢から発見された標本で、地層から分離した状態で拾われたようです。
採集者は町内に住む水谷和弘さんで、標本は2015年に「むかわ町穂別博物館」に寄贈されました。当時はまだ正体がわからず、“不明骨”とされていたそうですが、化石調査でむかわ町を訪れた東京都立大学の中島保寿さんにより、魚類であることが明らかにされました。
さらに、むかわ町穂別博物館の西村智弘さんは、より詳しい同定を行うために、2019年に古魚類学の専門家である宮田真也さんに研究の協力を依頼しています。研究グループには放散虫化石の専門家の本山功さん、魚類化石の専門家の籔本美孝さんも加わり、複数の研究機関から成る共同研究へと発展しました。
正体はチョウザメ科の骨
まず、化石の年代を特定するために、泥や砂の隙間に鉱物が入って形成された硬い塊である、コンクリーションから放散虫の抽出が行われました。
これをもとにした年代の推定により、この標本が後期白亜紀のカンパニアン期~マーストリヒチアン期の化石であることが判明しています。さらに、この結果と産出地の地質などの特徴からマーストリヒチアン期の地層から産出したことがわかったのです。
白亜紀では東アジア初の発見
この化石については年代に加え、どのグループの魚なのかも明らかになっています。
形態を観察した結果、薄く扁平な板状の歯を持つこと、斧歯状の形をしていること、表面に顆粒状の装飾がみられること、前方が突出することなどから、チョウザメ科の下鰓蓋骨であることが判明したのです。
さらに、化石の大きさが直径が15センチを超えることから、全長は1.8メートルを超えると推定されています。また、このチョウザメ科化石は白亜紀の地層からは東アジアではじめての発見であると共に、東アジア最古のもとなりました。
この発見はチョウザメ科における進化史について、新たな知見を与えるものとされています。
まだまだすごい化石が見つかるかも?
今回の研究により、平取町から採集された化石がチョウザメ科の化石であることが明らかになりました。このように、過去に採集された化石がその後の研究で同定され、報告されるというケースは少なくありません。
今現在、収蔵されている化石標本についても、今後の研究で正体が判明するかもしれませんね。また、北海道から産出する化石についても今後も目が離せません。
(サカナト編集部)